44 もうすぐ…
「もうすぐ月末になるけど、文化祭っていったいどう言うことをするのかしら。」
今私達は、何時ものように4人でお喋りをしながら昼食をとっているのだが、開催日が近付いてきてることもあり、私の街では馴染みのない文化祭と言うものについて話していた。
「サク先輩はちょっとしたお祭りみたいなものだって言ってたよ。」
「お祭り…。収穫祭みたいなことをするの?」
「なんだお前ら。まさか誰も文化祭を知らないのか?」
「収穫祭なら私の所でもやってたけど、文化祭は聞いたこと無いわね。」
私が文化祭の内容について質問すると、意外な事にレイナ、サヤカにとっても馴染みの無いものだったようで、メリッサがそれを聞いて驚く声をあげる。
「マジかよ。この時期になると、学校を開放して色々と出し物をやるのが当たり前だと思ってたけど、他の大陸では違うのか?」
「なんでわざわざ学校でやるの?お祭りなら、普通に中央広場とか人が集まる所の方が良くないかしら?」
「そっちはそっちで別に祭りをやってるだろ。」
「ん?どう言うこと?」
私達は経験が無いせいか、メリッサの言葉に首を傾げていたが、彼女の説明によると、文化祭と言うのは、学生達が主体となって学校を盛り上げるイベントらしい。
「つまり、武術大会の時みたいな事を、私達が考えてやるってこと?」
「まぁ、どういうテーマでやるかは、大体は上級生が決めるから、あたしら1年は適当にお祭り騒ぎを楽しみゃいいのさ。」
「ふーん。この時期にそう言うことが出来るのって、やっぱり環境の違いなのかしらね。」
メリッサの説明を聞いて、レイナが分かったような分かってないようなといった感じに聞き返す。
「きっとそう。わたしの所は、もう少ししたら冬の備えが始まるから、こんな無駄なことをしている暇無い。」
「無駄なことって、サヤカ…。でも、私の所も正直似たような感じよね。」
「そう言えばこの街って、建物も頑丈だし、魔物とかも全然見かけないよね。」
「あたしにとっちゃ、見かけない方が普通なんだがなぁ。」
そんな風に、それぞれの国の違いで話が逸れたりしつつも、話題が文化祭の話へと戻ってくる。
「上級生がテーマを決めるとは言ったが、大体の年は武術大会とお前らの言う収穫祭が混ざったような感じになるぜ。」
「へー、なるほどね。なんとなく文化祭がどう言うものか分かったわ。屋台とか行ったこと無いし、武術大会も結局観れてはいないから少し楽しみだわ。」
「えっ?」
私は文化祭のイメージが、未知のものから少しは馴染みのあるものへ変わったことで、当日への期待が膨らんでいたが、私の言葉を聞いて、何故かレイナがびっくりしている。
「ん?何か変なこと言った?」
「ううん。えっとね…」
「言いにくいの?」
「そんなことは…無いんだけど…。」
レイナの反応で、私は何かおかしな事を言ってしまったのかと思って聞き返してみるが、彼女は言葉を濁すばかりでなかなか答えようとしない。
どうせ大したこと無い話だろうと考え、私は別に無理に言う必要は無いと伝えようとしたが
「あのね…えっと、サク先輩が『君のお友達は、スイとは毎週デートに行くのに、最近僕とはお話ししてくれないね。』って言ってて、その…屋台に行ったことがないの、意外だな…って…。」
「なっ!?…デっ!?…」
私がそれを言う前に、レイナが話し始める。
この前の事があってから、確かに最近サク先輩を避けている部分が無いわけではないが、その理由がサク先輩に不信感があるからなんて、この場ではとても言いにくい。
と言うか、それよりもスイ先輩との誤解を解かなければと思うが、咄嗟に何を言えば良いのか分からず、今度は私の方が言葉に詰まってしまう。
勿論スイ先輩とはそんな関係じゃないのだが、何と返事をするか考えている間に、『ほぉ~う?』と面白い話を聞いたぞとでも言わんばかりに、メリッサがこちらをニヤニヤと見つめている。
「休日に練習場来れないのって、デートしてたからなの?」
「ち、違うわよ!!確かに毎週街には行ってるけども、それは実験に使うものを教えて貰う為に必要なだけで…」
「そーかそーか、必要な事かー。」
「ねぇ、信じてないでしょ!?本当に違うんだから、勘違いしないでよね!?」
しかし、焦っている間にも話が進んでいくので、考えを纏める間も無く言い訳のような言葉しか出てこない。
「も、元々休日の練習は控え目にって言われてたし、そもそも助手なんだからお手伝いで行くのぐらい普通でしょ!?」
「まーまー、落ち着けって。言いたいことは分かったからさ。」
「ご、ごめんねレアちゃん。私が変な言い方をしたから。」
そうやって騒いでいると『キンコーン』と鐘の音が鳴り、いつの間にかお昼休みが終わりの時間が来ていた。
「お、そろそろ次の授業の用意しないとな。まぁ、初めての文化祭なんだ。皆楽しめよ。」
鐘の音を聞いて、私達も急いでお弁当を片付けていると、最後にそう言ってメリッサは一声掛けると、さっさと席を立って行ってしまう。
「もう、本当にあいつは…。」
「メリッサちゃんもからかっているだけで、本気でそうだとは思ってないから大丈夫だよレアちゃん。」
「だといいんだけどね。」
メリッサの言動に、私が溜め息を吐いてると、レイナが気遣いの言葉を掛けてくれる。
「あ、あと、サク先輩がレアちゃんに『ぼくが教えてあげられることが少なくてごめんね。スイの説明で分からないことがあったらいつでも聞きに来ていいよ。』って言ってたよ。」
「うーん、分かったわ。なら、今のところは大丈夫って言うことと、先輩達を紹介してくれたことは感謝してるって伝えておいてくれるかしら。」
「うん!それじゃあ私も行くね。」
そして、サク先輩からの伝言を伝えると、彼女もその場から去っていく。
「…レア」
「どうしたの?」
「わたしも屋台行ったこと無い。文化祭一緒に見に行こう?」
「…う、うん。良いわよ。」
その後どうやら、まだ言いたいことが残っていたようで、私とレイナの会話が終わるとサヤカが話し掛けてくるが、授業の時間が迫っているせいか、自分の言いたいことを言うと、彼女もすぐにその場から去っていく。
果たして私の返事は彼女に届いたのか。
何故だか話してる途中で彼女の耳がほんのり赤みを帯びていったようにも見えたが、そんな事を考えながら、私も授業の用意をするためにその場を後にするのだった。




