43 放課後の雑談
「いつも付き合わせて悪いわね、サヤカ。なんだったら、私もそろそろ慣れてきたし、こうして座っている間とかもっと他の事してても平気よ?」
私は今日も、サヤカと一緒に組手のようなものをした後、休憩しつつも魔力操作の練習をしていたが、今言った通り私もだいぶ体内の魔力を感じられるようになってきたので、ここで一緒に座っているよりも、私の事を見ているせいで疎かになっているであろう、自己鍛練の方を優先しても平気だと言うことを伝える。
「ううん、大丈夫。レアとお話しするの、楽しいから。それに、レイナから『レアはすぐに無茶をするから、目を離さないようにしてあげて。』ってお願いされてる。」
「そう?それならお言葉に甘えさせてもらうけど…。というか、レイナってばそんな事を言ってたのね。」
だが、サヤカはフルフルと首を横に揺らすと、このままで良いと言ってくれる。
私はその事に感謝をするが、それはそれとして、彼女の口から気になる話が出てくる。
「もぉ、心配掛けすぎちゃったかしら。私も別に年がら年中無茶している訳じゃないのに…。」
「ん、2人とも凄い頑張っているのは分かる。けれど、ストッパーが居ないと危ないと思う。レイナも人の事は言えない。」
「そうよねぇ。この前来たときもあなたが基礎は教えることないって言ってたし、きっとあの子もそれなりに無茶してるわよね。」
そう、別に今私達が2人で練習しているのは、別に邪魔だから追い払っているとかではなく、本当にサヤカが教えられるのが基礎だけであり、ある程度魔法に触れている人が、わざわざ教わりに来るような物ではないため、自然とこうなっているのだ。
実際、私がこっちの訓練場に来ることが増えたことで、レイナや先輩達が様子を見に来たことがあったが、レイナは既に聞いたことがあること、先輩はこれからの実験に大して影響が無いことを確認すると、わざわざこっちまで来ることは無くなった。
「試験の時、自分の意思で身体強化をしてたし、この前来たときも当たり前のように回路に魔力を通してたものね。…そう言えば、そろそろ試験の結果と言うか、グループも発表される頃かしら。」
「………レアは…」
「ん?」
「レアは…どうしてそんなに頑張ってるの?」
レイナがこちらに来た時を思い出して、少し考え事の方に意識を割かれていると、不意にサヤカが不思議そうな顔で質問をする。
「どうして…か。改めて聞かれると、パッと理由が浮かばないわね。サヤカは?」
「わたしはSクラスに入りたいから。入ってやりたいことがある。」
「そう、ちゃんと目標があるのね。」
「レアは無いの?」
「私はどうだろう。昔は幼馴染みに誉めてもらいたくてって感じだったけど、今はただ、周りの人に負けたくないから頑張ってるだけかもしれないなぁ。」
サヤカの質問に、私は理由を考えてみるが、これだ!と言えるものが見付からない。
なので今度は、私の方からサヤカに頑張る理由を聞いてみる。
「サヤカのやりたいことって、聞いてもいいの?」
「うん、いいよ。わたしがやりたいのは、Sクラスの推薦枠で弟妹をこの学校に入れることだよ。」
「ちょ、ちょっとまって!頭が追い付かないわ!!」
「どうしたの?いきなり大きな声を出して。」
私は、突然の情報につい集中が途切れてしまうが、最早そんなことはどうでも良いくらい今の話は衝撃的だった。
「えっと、色々と聞きたいけども、まずは推薦枠ってどう言うこと?」
「知らないの?Sクラスになると、好きな人を1人この学校に受験させられるんだよ?」
「し、知らなかったわ…。そうよね、これだけ大きい学校だもの。特別枠ぐらいあるわよね。」
なるほど、サヤカに弟妹が居たことも驚きだが、Sクラスに入ることで推薦枠を獲得出来るのであれば、彼女にとってSクラスを目指す大きな理由になるのだろう。
「しかも推薦枠で入ったら、その人は学費が無料。」
「なっ…、それはかなり魅力的ね。」
「わたしはそれを目的にこの学校に来たと言っても過言じゃない。」
「きょうだい想いなのね。と言うか、あんたが一人っ子じゃないなんて意外だわ。」
「ふふん、実はわたしはお姉さん。」
今まで学校での話しかしていなかった事もあり、今日はサヤカについて初めて知ることばかりだった。
彼女の弟妹の事を話す表情からして、きっと姉弟仲も悪くないのだろう。
そして、サヤカによると、Sクラスなら1人、SSクラスなら2人推薦する事が出来るらしいのだが、その推薦された人はクラスに関わらず学費が無料になるらしい。
「そう言えば、レアは無料になることとかも知らなかったのに、なんでこの学校を選んだの?」
「別にそれだけがこの学校の特徴じゃないでしょうに…。」
「わたしにとっては一番大事。」
「姉弟が多いなら確かに大事かも知れないわね。」
このベネウッド学園は、学校としての規模が大きい割には学費が他の学校と大きく変わらず、なんなら寮がお金のかからない分、経済的な面で見ても目指す人は多いだろう。
「でも、私が目指した理由は違うんだよね。」
「お金じゃないの?」
「うん。私は単純に、自分の街で強くなるのに限界を感じたから…かな。」
「限界…?」
「自分の大陸では、こことは違うやり方で魔法を使っていたんだけど、そこでちょっと伸び悩んじゃってね。」
こんなことを言っても、元々大したこと無いだろうと笑われてしまうかも知れなかったが、私はサヤカがそんな事を言う人ではないと思っているので、自然と彼女には理由を素直に話すことができた。
「そうだったんだ。………わたしはレアの助けになれてる?」
「十分過ぎるほどよ。このサヤカ達の使う魔法、私には未知の技術過ぎて何から練習すれば良いのかさっぱりだったんだから。」
「そう…。それなら…良かった。」
「そのうち魔力操作もマスターして、あなたの相手になってあげるから期待して待ってなさいよ。」
「うん、楽しみにしてる。」
理由を聞いてもやはり、彼女は私をバカにすることはなかった。
それどころか、私の何の根拠もない自信を嬉しそうに肯定してくれる。
そしてその後、技術の習得には実戦が1番だと、より一層気合いの入ったサヤカに、私はヘトヘトになるまで付き合わされるのだった。




