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オルタナ外伝ーアルトレア物語ー  作者: 絃芽こう
1学年 新しい学校生活

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42 お互い様

「サヤカ、今日も付き合ってくれてありがとね。」


試験を終えて数日後、私はサヤカと練習場に来ていた。


「ん、レアのお願いなら別にいい。わたしも練習になる。」

「そう言ってもらえると気が楽だわ。それじゃあ、早速始めよっか。」

「うん、まずはレアがどこまでスムーズに出来るようになったかを見てあげる。」


そう言うと、サヤカは私が集中するのを邪魔しないように少し離れる。

それを確認すると、私は「よしっ!」と意気込み、その場に立って目を瞑り、体の中心に力を込め始める。


するとすぐに胸の下辺り、鳩尾の部分に熱を感じ始める。

前に教えてもらった時、サヤカはこの辺りに魔力が固まっていると言っていたが、恐らく彼女の魔力は、スイ先輩の言う第1段階の変質状態になっているのだろう。


「ふぅー…」

私は息を吐き出すと、その熱、つまりは魔力を、ゆっくりと全身へ巡らせていく。

そうすることで、徐々に自分の五感が鋭くなっていくのと同時に、今すぐにでも体を動かしたくなるような、ムズムズといった感覚が広がっていくのを感じる。


最初の頃こそは、この感覚に耐えきれず、集中が途切れそうになる度にサヤカから『レア…』と、注意の声が飛んでいたが、今日はそれをしっかりと抑えられてるようで、サヤカも静かなままだ。


「もう動いていいよ。」


私が魔力を全身に通せたと思ったのと、ぴったりのタイミングでサヤカからそう言われる。


「うん、少し時間はかかってるけど、1から始めてこれなら十分。後は慣れてくれば自然にその状態を継続出来るようになる。」

「私もサヤカみたいに見れるようになってきたから分かるけど、あなたの魔力の流れって本当に綺麗よね。とてもそれが無意識にやっているなんて信じられないわ。」


どうしてなのか分からないが、魔力を回路へ通すことで他の人の魔力も見えるようになるのだが、体内の魔力を扱い始めた私はともかく、他の人と比べてもサヤカの魔力操作の技術は、段違いに優れているように見える。


「これぐらい普通。あまり誉められると、照れる…。」

「あんたの努力の結果なんだから素直に受け取りなさい。とりあえずこの後はどうするの?」

「ん、今日は少し余裕がありそうだから、その状態で運動してみる。」

「分かったわ。」


そんな会話をして私は、魔力を全身へ流しながら、サヤカの指示通りに動いていくのだった。





「はぁ…はぁ…。そろそろ限界かも…。少し…休憩したいわ…。」

「うん、端っこの方で座ろう。魔力もきついなら、流すの止めても良いよ。」

「そうね…、大変だけど、流したままで休憩するわ。」

「分かった。」


しばらくそうして練習をしていたが、普段と比べると、大して動いた訳では無いのに、やはり慣れないことをしているせいか、体力の消耗は激しくあっという間に限界が訪れる。

ひとまず私達は、他に練習している人の邪魔にならないように移動する。


「レア、わたしは皆みたいな事は出来ないのに、本当にわたしから魔法を教わってよかったの?」

そして、休憩しながらお互いの最近の状況を話していると、不意にサヤカがそんなことを聞いてくる。


「どうしたの?急に。」

「ううん。魔法を教わるんだったら、わたしよりもメリッサの方が属性魔法とかも使えるし…」

「あー、確かにそうかもしれないわね。でもまぁ、私は自分の大陸とは違う魔法の事を全然知らなかったから、基礎が完璧なあなたから教われて良かったと思ってるわ。」


実際スイ先輩も、ユニウス大陸の人から教わるのならば、魔力操作や身体強化がメインになるだろうから、魔術を使うときの感覚への影響は薄く、魔法を本格的に覚えていく下地としてはちょうど良いだろうと言っていた。


「………レアは優しいね。」

「なっ、何よ突然。」


会話の途中でも、魔力が途切れないように集中しているため、返事が多少遅れたりしながらも、サヤカとのんびり話をしていると、なんの脈絡も無くそんな事を言う。

元々こう言うことで冗談をあまり言うようなタイプだとは思っていないが、彼女がこちらを見る表情で、それが本心から出たものなのが伝わってくる。


「なんとなくそう思った…だけ。」

「そう?」

「理由があるなら、最初に会った頃からわたしが魔法を使えないことを馬鹿にしなかった…から?」

「なんで疑問系なのよ。まぁ、それを言ったらサヤカも私の事をバカにしないで居てくれるし、お互い様なんじゃない?」


「そう…お互い様?」

「うん、お互い様。」

「ふふっ、ちょっと嬉しい。」

「私もよ。……ねぇ、サヤカが良いなら、またこうやってお話ししない?」

「いいよ。………課外授業、グループ一緒だといいね。」

「ん?何か言った?」

「何も言ってない。そろそろ練習を再開しよう。」


サヤカが最後に、何かを呟いたような気がしたが、さっさと立ち上がってすたすたと歩き始めるので、私も置いてかれないように、急いで練習場の真ん中へと戻るのだった。

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