41 私は大丈夫
「うう、緊張するね~。」
私達は今日、午前中に筆記のテストを、午後に実技のテストを受けることになっている。
今はお昼も過ぎ、いつものようにそれぞれの場所に別れてテストを受ける準備をしている。
そして私はストレッチをして体を伸ばしているが、隣ではレイナが不安そうに呟いてた。
「緊張するって…、筆記の方はともかく、実技のテストは毎回同じような事をしてるだけじゃない。いい加減あんたも慣れなさいよ。」
「そんなこと言っても~。」
「ほら、あんまり固くなっていると怪我するわよ。あんたもちゃんと体をほぐしときなさい。」
「は~い。」
そんな風に話しながら、私達は試験が始まるのを待っていた。
「それにしても、レイナは治療班に行くから、別にこの試験は気楽に受けられると思ってたけど…。」
「確かに私は12月の課外授業では皆と別行動になっちゃうけど、受ける試験はレアちゃん達と一緒なんだよ?しかも、ちゃんとした数値が出されるのなんて、入学試験の時以来だから、どんな評価が付くのか想像すると…。」
「そうか、何だかんだで私達はアリアス大陸出身だったから、少しおまけされていたものね。それを聞いたら、なんか私も緊張してきちゃったなぁ。」
そう、レイナの言う通り、今までの試験では出身大陸毎に評価の基準を変えられていたのだが、今回の試験ではそう言った救済措置のようなものは無く、現時点での真の実力が計られる事になるのだ。
一年生の間で、この計り方をするのは今回だけらしいが、それには理由があるみたいで、どうやら12月に課外授業があると言うことで、今回の試験結果でチームの分け方を考えるらしい。
そうして、緊張と不安を抱えながらも、私は今出来る全力を出しきりながら、1つずつ試験を終えていく。
「位置について、よーい…」
パァン
スタートの合図が響くと、私とレイナそして他のクラスメートが同時に走り出す。
しかし、私とレイナは他のクラスメートから、私はレイナからも距離を離されてしまう。
「ぐぅ…」
魔法を使う人達は、魔力を体中隅々まで流せるように練習する為、自然と身体強化魔法を使えるようになっている事が多いとスイ先輩に言われてはいたが、実際に経験してみると、その言葉の意味がよく分かる。
「はぁ…はぁ…、レイナ…あんた、また速くなったわね…。」
「ぜぇ…、レアちゃんこそ…。やっぱり魔力操作を教わり始めたって言うのは…、本当だったんだ…。」
「サヤカから聞いたの…?」
始めたばかりでは、以前から継続していた人達に追い付くのには時間がかかると言うことは覚悟していたので、自分でも意外な事に悔しさはあまり感じていなかった。
けれど、私が彼女から教わり始めた事はいったい誰から聞いたのだろうか。
でもまぁ、レイナが知るとしたらば…
「ううん、サク先輩が教えてくれたの。レアちゃんが私の友達から魔法を教わり始めたって。」
「やっぱりサク先輩からよね。」
「ん?やっぱり?」
「何でもないわ。」
思っていた通りサク先輩から聞いていたようだった。
本人にはしばらく会ってない筈なのに、私の状況を知っているのは、一応気にかけてくれていると言うことなのか、若しくは別の理由があるのか。
そんな事を考えても仕方無いかと、私は頭を降って意識を切り替えると、レイナが心配そうな顔でこちらを見ていることに気が付く。
「どうしたの?レイナ。」
「うーんとね、言おうかちょっと迷ったんだけど、…レアちゃん、また無茶したりしないよね?」
「あはは、1学期にあれだけやらかしてたら心配かけちゃうよね。大丈夫よ。前までと違って、今は先輩とかサヤカが見てくれてるから、危ない事にはならないと思うわ。私も焦ってばかりは良くないって学んだしね。だから安心して。」
レイナとは入学した時からの付き合いなので、新しいことをしようとしている私を見て不安な気持ちになるのも分かる。
だから私は、もう以前のように、無茶をしてまで魔法を練習するつもりはないことを伝える。
「うう~、そんなに言うなら分かったけど。本当に無茶しちゃダメだからね!?」
「分かってるわよ。レイナの方こそ課外授業の前にも、文化祭とか色々あるんだからこの時期に倒れるような事しちゃダメよ?」
「うん、魔法の練習も大切だけど、学校の行事もいっぱい楽しもうね!」
「そうね、いっぱい楽しみましょう。」
そうして私達は、お互いに根を詰めすぎないようにと言う事と、この学校でしか得られない経験を大切にしようと言うことを約束して、残りの試験へと挑むのだった。




