39 武術大会・救護班
「うぅ、緊張します~。」
今日はいよいよ武術大会当日。私はサク先輩や他の人達と救護テントに居た。
サク先輩から、『これまでとやることは変わらないから、落ち着いて対応していけば良いよ。』とは言われたけど、やっぱり当日と言うだけあってか、昨日までとは少し違うピリピリとした空気を感じてしまう。
「まぁ、ここまで規模の大きい大会なんて、経験したこと無いだろうからね。交代の時間になったら、一緒に歩いて案内してあげるから、まずはそれまで頑張ろうか。」
「い、一緒に!それって…う、ううん。はい!頑張ります!!」
先輩と一緒にお祭りの案内なんて、それはそれで緊張してしまうが、先輩とのそんな約束で、気持ちがほっとしてしまうなんて、私は自分で思っている以上に単純な人間なのかもしれない。
そして、幾らか緊張が解けて周りを見る余裕が出てきたからか、私は自分が思っていたよりも、1年生がいっぱい試合を観に来ていることに気が付く。
「なんか、予想していたよりも結構沢山1年生も来ているんですね。」
「そうだね。SクラスとかSSクラスの子が多くはあるけど、他のクラスの子達も居るみたいだね。」
「私、一年生って私みたいに先輩に呼ばれた人ぐらいしか来ないと思っていたんですけど、そう言うわけでも無いんですね。」
「うん、まぁSクラス、SSクラスは興味のある子達が多いだろうし、君のお友達にはぼく達が駄目だと言ったけど、実際のところ、そんなに絶対観に来ては行けないと言う感じでもないんだ。」
「えっ?それならどうしてレアちゃんは…?」
「言ってしまえば、ぼく達の我が儘かな。」
「そんな…。」
確かに、周りに少しだけとは言え1年生の
姿が見えるのだから、先輩の言うことは嘘ではないのだろう。
でも、だからこそ私は、レアちゃんがどれだけ武術大会を観に来たかったかを知っているから、そんな理由でレアちゃんが諦めさせられたのが信じられなかった。
「あぁ、でも、勘違いしないでね。我が儘と言っても、別に意地悪でそうした訳じゃない。」
「ちゃんと理由があるんですね。」
「うん、もちろん。と言っても、彼女の為になるかまでは分からないけどね。」
「どんな理由なのかちゃんと教えて下さい!!」
いくらサク先輩と言えども、くだらない理由だったら絶対に許さないと、私はレアちゃんの残念そうな表情を思い出しながら、怒りの声をあげる。
「そうだねぇ、どんな風に伝えれば君は納得するだろうか。まず、ぼくはあーちゃんを見てくれている2人の事を、とっても信頼しているんだ。」
「私も、私に色々と教えてくれるサク先輩の事は信頼しているつもりです…。でも、レアちゃんに対しては、少し投げやりな感じもします…。」
「うん、そう感じるかもしれないね。」
サク先輩に、前々から思っていたことを打ち明けつつ、私は静かに先輩の話を聞く。
「あーちゃんには、スイの研究を手伝ってもらっている訳なんだけど、あーちゃんの成長度合いとか、実験の成功率によっては、彼女の努力がこの学校の間には実らない可能性もある。」
「そんな…。」
「でも、ぼくはそんなことにはならないと思っているよ。」
サク先輩が言う可能性の話に、私はショックを受けるけど、サク先輩はそんな私の気持ちを払拭するように、明るい声で話を続ける。
「実際ね、昨日彼女はスイの所に大会を見学したいって相談しに来たようだけど、どうやら彼女の友人から魔力操作について教わり始めたらしいよ。大変だと言うことは伝えてあるようだけど、彼女は、1年生の内から魔法と魔術、両方の技術を磨くことにしたみたいだね。」
「レアちゃん…。」
サク先輩の言う友人とはきっと、メリッサちゃんかサヤカちゃんのどちらかだろうと思いつつ私は、いつの間にかそんなことをしているレアちゃんに驚く。
「見学の許可は出なかったけども、あーちゃんもそこで止まらずに成長してるんだ。レイナもお友達の心配ばかりしていると、どんどん置いてかれちゃうかも知れないよ?」
「うぅ…、確かにそうかも。私も頑張らなきゃ。」
「レイナも風系統の魔法と魔術をどっちも練習していて大変なんだから、頑張りすぎもダメだからね?」
「はい…気を付けます。」
レアちゃんの話を聞いて、反対に私の方が皆に置いてかれちゃうかもなんて不安になるけど、サク先輩から焦りすぎないようにと釘を刺される。
一つ一つ積み重ねていく事の大切さを、私が無茶をする度にサク先輩から教わっていたから、私は、まずは救護班の仮メンバーとして、この大会を乗りきれるように頑張ろうと、決意を新たにするのだった。




