38 魔力操作?
「それで、レアは何を教えて欲しいの?
メリッサがわたし達にぐちぐちと文句を言った日から数日後、レアとわたしは一緒に訓練所に来ていた。
わたしは別に、魔法が使える訳じゃ無いのに、一体何を聞かれるのだろうか。
やっぱり、リュウレンみたいに、剣術を教えて欲しいとかだろうか。
なんて思っていると、レアが辺りをキョロキョロと見回し
「そう言えば、他の人は待たなくて大丈夫なの?メリッサがこの前、誰かの事を教えてるって言ってた気がするけど。」
と聞いてくる。
「教えてはいるけど、休日以外は素振りしかさせてないから、今日はどこか別のところにいると思う。」
「そうなんだ。素振りって事は、魔法を教わってる訳じゃ無いのね。」
「うん。まだわたしと模擬戦をやるには実力不足。」
「そっか…。それじゃあ、平日はあんた1人なの?」
わたしの返事を聞くと、レアが少し残念そうにする。
それを見てわたしは、せっかく2人に剣術を教えるなら、始めた時期が近ければ、自然と競い合って、どんどんとレベルアップをしてくれるんじゃないかと思い、レアに提案してみる。
「うん。でも、レアが良いなら、2人で模擬戦とかしながら一緒に練習する?」
「うーん、ちょっと相手が誰なのかは気になるけど、私が今回教わりたいのって、剣術じゃないのよね。」
「え?でも、それ以外でわたしがレアに教えられることってある?」
メリッサはなかなか試合をしてくれないし、結構良い案だと思ったんだけど、どうやらレアは剣術を教わりに来たんじゃ無いみたいだ。
「魔力操作を教わりたかったんだけと、サヤカならユニウス大陸出身だし、教わるなら貴女からが一番良いかなって思って。」
「魔力操作?」
「えっと、魔力回路にどんな風に魔力を通してるのかなって。私、魔術しか使ってこなかったから、そう言うの全然分からなくて…。」
「うーん、どうしよう。レアの言ってることが難しい。」
レアが剣術じゃなくて、魔法に関するなにかを教わりたいのは分かったけど、わたしが知らないだけなのか、レアが間違っているのか、何を求められているのかが理解出来ない。
そんな様子を見て、レアは何かに気付いたようで、『あぁ、そう言えば魔術って言っても伝わるわけ無いよね。回路とかも、ユニウス大陸では使わない用語なのかな。』となにかを呟いた。
「ごめん、レア…。力になれなくて。」
「ち、違うのっ!サヤカは悪くないよ。私の伝え方が下手で…。えっと…、なんか体の中で、ぐわぁ~って何かの力を動かす方法を教えて欲しいんだけど、分かるかな?」
「ぐわぁ~?体の中?」
さっきよりは分かりやすくはなったけど、まだちょっと何を聞かれているのか分からない。
けど、体の中の力で動かす力について、心当たりがあるとすれば「瞑想するときに少し熱く感じるあの変なのかな。」とわたしが思い浮かんだことを呟くと、レアが『それよっ!!その力について教わりたいの!!』と、大きな声で反応する。
「よ、よろしく…。出来れば痛くしないでね?」
「優しく出来るか分からないけど、努力はする。レアは深呼吸して、受け入れる準備を整えて。」
わたしは今、言われるがままにレアの体に触れていた。
なんでも、魔力を回路?と言うものに通してほしいみたいで、そうすることで、自分で魔力を操作するコツを掴みたいらしい。
「わたしがいつも、瞑想しているときみたいにすれば良いの?」
「うん…多分だけど…。」
「それじゃあ、いくよ…。」
「んっ…。」
わたしが魔力を流し始めると、レアは体をビクッと震わせる。
「どお?大丈夫そう?」
「ん…、うん…。少し…変な感じが…するけど…、思ってたより痛く…ないかも…。」
「それならこのまま動かしていくよ。」
「うん…。んっ……ふぅ…。」
「ほんとに平気?レア。」
「ん…、大丈夫だから…続けて。」
その後も何回か声をかけるけど、レアは更に体をビクビクッと震わせ、苦しそうな呼吸を繰り返しながらも、わたしに続けるように促す。
「今、右手から少しずつ体の真ん中に移動しているのは分かる?」
「んっ…うん…。分かるよ…。暖かいのが、ゆっくり…。血の流れとは違うものを感じる…。」
「そうだね。右手から右腕…そこから心臓の少し下…お腹の辺り…。」
「あっ…」
そうやって自分でしているように魔力を動かしていくけど、わたしはここで少し違和感を覚え、魔力の動きを止める。
「…?」
「…ど…どうしたの…?」
「ううん、大丈夫。見付けたから。」
「な、何を…んっ…」
「わたしと違って、あまり纏まっている感じがしないけど、ここに魔力の塊があるの分かる?」
「う…ん…。それに…」
レアによると、わたしが魔力の源だと思っている部分には、何かしらの理由があって、魔力の集まり具合が違うらしい。
「それなら、ここからはレアにも頑張ってもらう。」
「わかっ…た…。」
「魔力がどう言うものか感じれたと思うから、まずはこの塊に意識を集中してみて。」
「こう…かな…?」
「うん、良い調子。」
レアが自分の魔力を少しずつ動かせるようになると、わたしは、集中が途切れないように気を付けながら、ゆっくりと右足、左足、もう一度魔力の塊のところに戻って左手、そうして全身へと魔力を巡らせられるように誘導する。
「うん、良し。力を抜いて。」
「…っはぁ、はぁ…」
「どうだった?これがレアの教わりたいことで合っていた?」
「うん。はぁ…、少し疲れたけど、サヤカのおかげで、魔力を明確に感じ取れるようになったわ。」
しばらくして、レアの集中が途切れてきたと思ったところで、わたしは魔力の循環を止めさせる。
最初に魔術とか回路の話をされたときは、一体どうなるかと思ったけど、レアの表情を見る限り、今日のこの魔力操作?を練習して満足出来たようだ。
「それなら良かった。」
「本当にありがとうね。サヤカ。」
「ううん。わたしで力になれることならまた何でも言って。」
「それなら…また今日みたいに魔力を動かすのを手伝ってくれる?」
「うん。平日だったらわたしはここに居るだろうから、いつでも来て。でも今日はわたしも少し疲れた。」
「そうね、今日はもう練習は終わりにして、また今度お願いしに来るわ。」
そう言ってわたし達は、いつもよりも早い時間に練習を切り上げ、それぞれの寮へ帰るのだった。




