36 知り合い?
「なーんかお前ら最近付き合い悪くねーか?」
それは、武術大会があと数日という所まで迫って来た日の事だ。
いつものメンバーでお昼を食べていると、唐突にメリッサがそんなことを口に出す。
「別にそんなこと無いとは思うけど。一体どうしたの?」
「わ、私は武術大会の事でちょっと忙しくて…。」
「武術大会?なにそれ。」
「名前の通り、個人戦とか団体戦で強さを競う大会だな。」
「へー、面白そう。」
レイナがそう言い訳を口にすると、2人とも興味ありげにその話に食い付く。
「全然開催するって話を聞かなかったが、高等部でもやってるんだな。」
「1年生は参加出来ないらしいからね。興味を持たれないように情報を制限してるんじゃない?」
「ほーん、じゃあなんでレイナは忙しくなるんだ?」
私がレイナの言葉に補足すると、当然の疑問をメリッサから投げ掛けられる。
「あ、あの…えっと…、救護班として先輩に付いていくから、それで…」
「わたしも付いていけば、大会見れる?」
「見学もダメだって言われたし、見れないんじゃない?レイナも救護のテントに居るだけらしいし。」
次々と畳み掛けるように繰り出される質問に、レイナは段々とあたふたとしていくので、私も分かる部分は彼女の代わりに答えてあげる。
「中等部の時は、見学禁止なんて事はなかったけど、高等部では、何で1年は見に行くのも駄目なんだ?」
「うーん、中等部ではどういう大会だったのか分からないけど、私は、この時期に魔法を見せるのはあまり良くないからだって聞いたわよ。」
「はぁ~、成る程ねぇ。確かに中等部の大会では魔法を使ってなかったな。」
メリッサうんうんと1度は納得したかのように頷くが
「それはそうとしてっ!お前ら揃いも揃って平日どころか休日まで遊びに誘っても断るじゃねぇか!」
そう言って机に拳をバンッと振り下ろす。
これまでの付き合いから、別に本気で怒っている訳では無いのは分かっているが、今日の彼女はいつも以上に興奮しているように見える。
「最近は休日でも用事がある日が多かったからね。」
「わ、私も同じかなっ。」
「はぁ~ん。その割には、男とデートする時間はあるんだな。」
「み、見てたの!?って違う!!あれは、あの…、大会の準備に必要な物を買いにいってただけで…、別にデートとかじゃ…」
どうやらこの前の休日、レイナやメリッサも街に来ていたみたいで、屋台に寄ったとき偶然サク先輩と歩いている所を見たらしい。
もう、それを聞いただけで、2人がどんな風に歩いていたとか、メリッサがそんな2人を見て何を考えるかなんて容易く想像出来る。
そう思って話を聞いていると
「おい、他人事みたいな面してるけどアルトレア、お前も同罪だぞ?」
と、突然こちらにも矛先を向けてきたので
「はぁ?」
と思わず強めの口調で返してしまう。
「レイナは分かるけど、何で私も同罪なのよ。」
「はぁ~やれやれ。あたしはあの日、お前が年上の男とギャーギャーワーワー喚いて痴話喧嘩をしながら街を歩いてるのも見てるんだ。心当たりが無いとは言わせないぜ?」
「んー、機材を買いに行った日の事かしら。残念だけど、あの人と出掛けたのはあの一回だけで、別にあんたが想像してるような関係じゃないわよ。」
メリッサは、この前の休日でレイナだけじゃなく私の事も見かけていたようだ。
だが、ここで私はふとあることが気になったので、話題を逸らすついでにその事を尋ねてみる。
「私があの日一緒に居たのは、スイネグって人なんだけど、知り合いじゃないの?まぁ、あの人もそんなに覚えているって感じじゃ無かったけど。」
「あー、あの人だったのか。成る程なぁ。…あたしについてなんか聞かれた事とかあるか?」
下手に言い訳をするよりも、彼の事を知っているなら名前を出した方が、誤解を解きやすいと思ったが、その目論見は当たったようで、メリッサはそれ以上追及する事はなかったが、今度は反対に私の方が質問をされる。
「特には聞かれなかったわよ。」
「そっか。まーそうだよな。それなら別に良いんだ。」
「逆にあんたはあの人達について何か知ってることは無いの?」
「あん?そんなこと聞いてどうすんだ?」
私達は普段、取り留めもない会話をしていて、先輩達の事が話題に出ることが少ないのでせっかくならばと、この機会に最近の悩みを打ち明けてみる。
「私今、あの人達から色々と教えてもらうって事になってるんだけど、突然紹介されたからどういう人なのか良く分かってなくて、ちょっと不安なのよね。」
「あー、まー、そうだな。あの人らは、良くも悪くも自分の世界に住んでるからな。」
「そうなのよね。だから、このまま言うことを聞いてて良いのかなって思って。」
「うーん、あたしがアドバイス出来るとしたら何だろうな。あの人らの言うことに付いていけないと思ったら離れれば良いんじゃないか?」
「今のところはこのまま教わり続けてても良いって事なのかしらね。」
メリッサの言葉からは、ある程度彼らの事を理解していると言うのが伝わって来る。
そうなると、彼女も魔法と魔術の違いについて聞いたことあるのかとか、セイラ先輩が面倒を見ると言いながら、隣で応援しているだけなのは何時もの事なのかとか、色々と聞きたいことはあったのだが
「まぁ、付いていけるならの話だけどな。」
「そう言えば、この前練習場で人が集まっている日があったけど、もしかしてあの2人が関係してたりするの?」
「その話、わたしも少し気になる。」
と、メリッサが何かを呟いたかと思った後には、あっという間に別の話題に移ってしまったので、それを聞くことは出来なかった。




