02 不調?好調?
「ん…。また寝ちゃってたか」
再び私が目を覚ましたときは、すっかり日が暮れてしまっていた。
「あいつ、私が寝ている間に変なことしてないわよね」
そう言いながら私は、ベッドから起き上がり服装に乱れが無いことを確認する。
(それにしても、どうしてリュウレンはわざわざ自分で私を部屋まで運んだんだろう…)
正直、昨日までのやり取りを考えると、あの状態で私の事を無視して自分の部屋に帰ったとしても何の違和感も抱かなかっただろう。
今までずっと嫌いあってた相手なだけに、ただの親切心で自分の事を助けたとはとても思えない。下心をもって助けたとしても、今ここにあいつの姿が無いのは不自然に感じる。
「はぁ、本当に訳が分からない。入学式であんなことを言っておいて今さら仲良くしようとしてるとか?」
自分で呟いて、さすがにそれは無いと、私は、これ以上は考えても無駄だと思考を切り替えることにした。
「そう言えば、先生を呼んだわけじゃないのなら、あいつはどうやってこの部屋に入ったんだろう」
と言いながら辺りを見回すと、テーブルの上に、首にかけていたはずの鍵が置いてあるのが目に入る。
(なんであんなところに鍵があるんだろう。って、あいつしかいないか。意識の無い女の胸元を弄るなんて、やっぱり下心で助けたのかしら)
なんてことを考えながら、とりあえずお腹が空いているので何か食べようとしたのだが、体が汗でベタベタして気持ち悪いので、先にお風呂場へ向かうことにした。
「ひゃっ」
私は、まずは汗を流そうとシャワーを浴びることにしたのだが、体にお湯が触れた瞬間の感覚にびっくりして声を出してしまった。
「な、なにこれ?いつもと温度が違う?と言うか、こんなにお湯が出る音大きかったっけ?」
起きたばかりで調整がちゃんと出来てなかったのかと思い、お湯の温度や出る量の部分を見てみるが、そこは普段と変わらない。
「もしかして感覚がいつもより鋭くなってる?よく考えたら、灯りが付いてないのになんで鍵がテーブルにあるのが分かったんだろう」
私は、どうしてこうなったのか分からないが、鋭くなった五感の刺激に耐えながら、なんとかお風呂を済ませて部屋に戻った。
「ご飯、どうしよう。とりあえず簡単なものでも作ろうかな」
部屋に戻ると、私はそんなことを呟いて台所へと向かう。
そして、冷蔵庫を開けると明らかに作り置きだと分かるものが幾つか入っていた。
「いったい誰がこんなものを。って、あいつしかいないか。てか、料理作れたんだ…」
(体調が良いのか悪いのか分からないから、ここまでしてくれるのは正直助かるけど、本当に、あいつがこんなことをする理由が分からない)
私は、今日倒れてから起きたこと、今の自分の体の感覚の事を考えながら、嫌いな相手が作ったものだとしても、食べ物には罪はないと考え、とりあえず作り置きされていたご飯を食べることにした。