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オルタナ外伝ーアルトレア物語ー  作者: 絃芽こう
1学年 新しい学校生活

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35 勘違い

「さて、あんな事までして、わざわざアリアス大陸の環境を再現した理由だったか。」


少し寄り道をしてしまったが、スイネグさんはそう言ってようやく、先程の実験で何を検証したのか説明を始める。


「まず1つは、そちらの大陸では杖を使わずに、体外で魔力をコントロールする術を持っている人が多いと言うのが、本当か確認するためだな。」

「……少なくとも、私が居た地域では使っている人は見たことないですね。」

「そのようだな。それに、今まで聞いたことが無いと言うことは、お前の友人も知らないのだろうな。」


「私の街がそんなに大きい場所ではないので、なんとも言えないですけど、レイナ以外の友人からも聞いたことが無いですね。」

「そう言えば私この前、メリッサちゃんに久しぶりに会ったわよ。あの子と友達なんですって?」

「ほぅ、姿を見ないからてっきり転校でもしたのかと思っていたな。」


スイネグさんからの質問に答えていると、セイラ先輩の言葉で意外な繋がりを知る。


「あの子見た目が結構変わっていたから、貴方じゃ気付けないでしょうね。」

「まぁ、元々そんなに関わりは無いからな。それで、お前の友人はサクに付いてる女とメリッサだけか?」

「あと1人、ユニウス大陸出身の子が居ますけど…。」


世間は狭いとは良く言うが、ここまで来ると、まさかサヤカも2人の知り合いなんじゃないかと思えてくるが、スイネグさんが軽く考え込む以外の反応が無いのを見るに、流石にそれは無いようだ。


「ふむ、成る程な。ユニウス大陸ではそもそも魔法を使えるやつが少ないし、杖の存在を今日まで知らなかったのも納得だな。」

「本当に貴方が求めてたような存在ね。サクがわざわざ私達に声をかけた理由も分かる気がするわ。」

「そう言えば、私を選んだ理由はこの大陸のやり方に染まってないからって事でしたもんね。」


2人の会話を聞いて、私は自分がスイネグさんの助手として選ばれた理由を、軽い気持ちで確認しようとしたのだが、彼は大きく頷くと

「あぁ、そうだな。あいつから聞いたときは驚いたが、まさかAクラスに居て魔法を全く使えないどころか、魔術すら満足に使えない奴が実在するとは思わなかったぞ。」

と衝撃的な事を言う。


「えっ…?」

「ちょっとちょっと、スイってば、言い方が悪すぎるわよ?それじゃあーちゃんが勘違いしちゃうじゃない。」

「なんだ?別に間違ったことは言ってないだろう?」


こちらに来てから、思うように魔術が使えていないのは自覚していたが、それが理由で紹介されていたと言うのは、予想していなかった。


しかもセイラ先輩は、スイネグさんの事を諌めるが、彼の言うこと自体を強く否定はしていない事で、改めて先輩達が私の事をどう認識しているのかを理解してしまう。


「そ、そうだったんですね。今回の実験で期待以上の結果を出せて良かったです。」

私はそう言って気丈に振る舞おうとするが、動揺を完全に隠すことは出来ず、

少し声が震えてしまう。


だが、先輩達はそれに気付くことはなく、そのまま説明を続ける。


「そうだな。以前、俺の魔力を使ったときには、成功とも失敗とも言えない結果に終わったが、2人のお陰で、今回は素晴らしい成果を納めることが出来た。もう一度聞くが、セイラは普通に魔力を込め、アルトレアはこちらに来る前と同じ感覚で魔術を使えたのか?」

「えぇ。私は何も変わったことはしてないつもりよ。」

「はい。びっくりするぐらい普段と同じ感覚でした。」


そして、私達に質問を投げ掛けてくるので、セイラ先輩が答えた後、私もなんとか気を取り直して答える。


「そうか。今回アリアス大陸の環境を再現出来たことで、また1つ俺が魔術についての俺の考えが正しいことを証明出来た。2人には感謝する。」

「あらやだ、スイったら。研究の事になると急に素直なんだから。」

「あ、あのっ、これからもまた今日みたいな実験はするんですかっ?」


スイネグさんは、実験について嬉しそうに話しているが、私は彼からの感謝の言葉を聞いても、素直に喜ぶ事が出来なかった。


次の実験では、もっと良いところを見せて、先輩達からの認識を変えてやろうと思い、私はそう言う。


「いや、この後は実験をするつもりは無いから、これまで通りセイラに面倒を見てもらえ。」

「な、何故ですか!?」

「今回の実験で、試したいことは試せたからな。しばらくまた、ここの環境に慣れるようにしててくれ。」


しかし、その願いは届かず、スイネグさんからその機会は訪れないことを伝えられる。


「あぁ、一応俺の魔力で同じ実験をするかも知れないが、俺の魔力では、正直対してここの環境と変わりは無いだろうから、あまり期待はしないでくれ。」

「大丈夫よ!あーちゃんってば、こんなに魔術が上手なんだから、次の実験の時にはもっと凄いことが出来るようになってるわ!!」

「はぁ…。お前に言われてもなぁ。」

「あ、ありがとうございます…。」


セイラ先輩の言葉に、スイネグさんは溜め息を吐く。

褒められた事に対してお礼を言うが、私も彼と同じ気持ちだ。


だってこの先輩は、いつも『凄い凄い!その調子よ!』とか、『慌てないで、深呼吸、深呼吸!』とか言うばかりで直接的に何かをアドバイスしたことがないのだ。

この人がどんなことを出来るのかを知らないせいもあり、どの基準で判断されてるのかも分からず、何を言われても素直に喜べない。


おまけに、さっきの2人の会話で、先輩達からの評価を知ってしまい、全ての言葉がお世辞に聞こえて来る。

サク先輩も、私の魔術が下手だから彼らに紹介した訳で、才能を認められているレイナとの差を感じてしまう。


こうなると、悪い方向へと考えることは最早止められず、私がすぐにはSクラスに行けないと言うのも、遠回しにお前には才能が無いと言われているようにも思える。


結局その後、スイネグさんが私の魔術が自分の予想を越えていたこと、その実験結果から予測出来ることを話してくれたが、どれも大した慰めにはならず、憂鬱な気持ちのまま1日が過ぎるのだった。

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