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オルタナ外伝ーアルトレア物語ー  作者: 絃芽こう
1学年 新しい学校生活

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32 これが私の全力です

「どうだ、全力は出せそうか?」


魔素をばら蒔き終わったのか、スイネグさんは機械を止めて振り返り、私にそう尋ねてくる。


「はい。何て言うか…凄い久しぶりに全身に力が漲っているような感じがして、今ならどんな魔術でも発動出来そうです。」

私は、大きく身体を伸ばしながらそう返事をする。


「そうか、それは何よりだ。では早速あの的へ何でもいいから全力で魔術を撃ってくれ。思いっきり頼むぞ。」

「思いっきり…。あの的、もしかしたら壊れちゃうかも知れないですけどいいんですか?」

「あぁ、なんだったら消し炭にしてしまっても構わない。出来るんだったらな。」


スイネグさんは淡々と、しかし何かを期待するような眼で、セイラ先輩は楽しそうな様子でこちらを見ている。


あの的が、魔法によってどの程度耐久力を上げられているのかは分からないが、そんな風に言われたら、加減をする事なんて考えずに、全力で破壊したくなる。


「わかりました。では…」

私はそう言うと的の上に火球を発生させ、それを的に撃ち込む事で破壊しようとしたのだが、せっかくここまで舞台を整えてくれたんだ。

灰も残らないぐらいに燃やし尽くしてしまおうと考え、火球をその場に維持したまま、的の周りを土壁で囲む。


「ほぅ。」

「あら、流石ね。」

それを見て2人が何かを呟くが、私はそれを無視して、火球に雷の性質を加えていく。


火球から、バチッバチッと火花が散り始めたの確認すると、私は「やぁっ!!」と掛け声を上げて手を振り下ろす。

そして、火球からピカッと光が降り注ぐと

『ドゴォーン!!』と雷鳴にも似た音が訓練所中に轟く。


光が収まると、的があった場所には粉々になった土壁と、黒く焼け焦げた跡だけが残っていた。


「なるほどな。これがSクラス相当の実力ということか。」

「うふふ、威力だけで見たらSSクラスでもおかしく無いかもしれないわね。」


私は魔術を撃ち終わると、2人の方へ振り返り

「どうでしたか?これが私の全力です。」

と聞いてみる。

先程の轟音の影響で何を話しているかは聞こえないが、満足そうな表情からするに、どうやら期待に応えることが出来たみたいだ。


「さて、期待していた以上のものが見れたことだし、さっさと退散するか。」

「そうね。あれだけ大きな音を立てたらすぐに人が集まって来ちゃうものね。」

「えっ?えっ?」


私は、2人が近付いてきたので、直接感想を聞こうとしたのだが、私が口を開く前に、先輩達はそんなことを言って、私の背中を押して歩き始める。




「あの…、もしかしてですけど、的を壊しちゃったのってやっぱり不味かったですか?」

空き教室に入り一息ついたところで、私は、2人が急いで練習場を出た理由が分からなかったので、そう尋ねてみる。


「いや、そう言うわけでは無いが、あのままそこにいたら少し面倒事が起きるかも知れなかったからな。」

「そうね~。私もここまで凄いなんて予想していなかったから、ちょっとびっくりしちゃったわ。」

「まぁ、あの痕跡からなら何をしたかなんて分からないだろう。せいぜい強力か魔法を撃って魔法を破壊したぐらいにしか思わないはずだ。」


どうやら2人が心配しているのはその事では無いようで、私も少し安心する。

だが、それならば何故急いであの場を離れたのだろうか。

考えても答えが出ないので、私はしばらく2人の会話を聞いてみることにする。


「お前はあの魔蓄石に普通の量しか魔力を込めてないよな?」

「ええ。貴方の方こそ、こっそり純度の高い魔蓄石を用意した訳じゃないわよね?」

「そんなことしたら実験の結果が狂ってしまうから、やろうとも思わんよ。だが、別の理由で予想とは外れた結果にはなったな。」


やがて、話し合いが終わったのか、スイネグさんはこちらに向き直り

「あれだけの魔術を使ったわけだが、あまり消耗しているようには見えないな。」

と声をかけてくる。


「はい…。あの…、一回しか魔術を使ってないので、久しぶりと言えどそんなには…。」

ここで嘘を付く理由もないので、私はそう素直に答える。

「一応全力で魔術を撃ちましたけども、これって結局、何が目的の実験だったんですか?」


特に説明されることもなく、訓練所で言われるがままに魔術を使ったわけだが、それがスイネグさん的に成功だったのかも分からず、ここに連れてこられたので、いい加減実験の内容を教えてもらいたかった。


そんな私の逸る気持ちを知ってか知らずか、スイネグさんは1本の棒を持ち出し

「あぁ、これからさっきの実験に関する研究内容を説明しようと思うが、その前に、これが何なのか見たことあるか?」

と聞いてくる。


「えっと、何かの木の枝ですか?」

私は、突然の質問に彼の意図を読むことが出来ず、ただそう答えるのだった。

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