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オルタナ外伝ーアルトレア物語ー  作者: 絃芽こう
1学年 新しい学校生活

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31 実験

「そう言えばセイラ先輩って、よく私の所に来てくれますけど、武術大会が近いのに練習は大丈夫なんですか?」


ある日私は彼女にそう尋ねた。

私は今、放課後は魔術の練習、休日は魔法の勉強をしているのだが、平日に魔術の練習をしていると、ほとんど必ずと言って良いほど彼女が様子を見に来てくれる。


スイネグさんは自分の事で忙しいのかあまり来ることはないのに、セイラ先輩が私の所に来て、魔法を使ったことが無いのでふと疑問に思ったのだ。


「あっ、もしかしてセイラ先輩も見学とか、救護班なんですか?」

「うふふ、私は個人戦と団体戦両方出る予定よ?」

「えっ?武術大会って、団体戦もあるんですか?と言うか、それなら尚更練習してなくて良いんですか?いつもここで私の練習を見ているだけですよね?」


私は新しい情報に驚きつつも、自分のせいでセイラ先輩がやりたいことが出来てないんじゃないかと不安になる。


「心配しなくても大丈夫よ~。あーちゃんの魔術を見てるだけでも、十分楽しいんだから♪」

「えっと、あの……楽しい…ですか?」

「そいつを心配するだけ無駄だろう。」

「スイネグさん!?」


そうしてセイラ先輩と話していると、いつの間に来たのかスイネグさんから声をかけられる。


「あら、珍しいわね。この前の休日と言い、あなたが大会前に研究室に籠ってないなんて。」

「俺だって興味のあることがあれば外に出るさ。…なんだ、その顔は。」

「だって…、お二人とも忙しい時期のはずなのに…」


まだどんなことをするのかはぼんやりとしか聞いてないが、武術大会が一大イベントだと言うことは私でも分かる。

それなのにこうして、私の様子を見に来てくれる2人には感謝しかない。


「私は分かってて引き受けているんだから気にしなくて良いのよ。」

「俺は研究がはかどるから問題ない」

「あら、また何か面白いことでも思い付いたのかしら?」

「研究?」


私が改めて2人にお礼を伝えようとすると、スイネグさんから気になる言葉が聞こえた。


「あぁ。今回はこれを使おうと思っているが、どういうものか覚えているか?」

「えっと、確かそれは…、鉱石を粉砕する機械と、魔素を吸収したり拡散出来る機械でしたっけ?」

「そうだ。ちゃんと覚えてて偉いぞ」

「そんなの見れば分かるじゃないの。どうして私の時とそんなに態度が違うのよ。」


スイネグさんの質問に答えると、彼は満足気に頷くが、それに対してセイラ先輩が抗議している。

だが、彼はそれを無視して話を続ける。


「今からこの2つを使って実験をする。あっちの的がある方へ移動だ。」

「これを使ってですか?」

「こんな扇風機みたいなもので何が出来るのかしら?」

「それは向こうに行ってから説明する。黙って付いてこい。」

「はーい。」

私達はそう言うと、彼に付いて訓練所を移動する。




「さぁ、付いたわよ。早く教えてちょうだい!いったい何をするの?」

「そうだな、今回の実験の内容を簡単に説明すると、アルトレア、お前の全力を見せてもらう。」

「全力……?あの…、私ここでは上手く魔術を使えないんですけど…。」


移動した先で、ワクワクした表情でセイラ先輩尋ねると、早速スイネグさんがこれからやる実験について話し始めるのだが、この前の講義で環境が違うと魔術の使い方も変わるという話をされたばかりなのに、その事を忘れてしまっているのだろうか。


「あぁ、分かっているさ。だからこそこれを用意したんだろう。」

「私にはこれをどう使えば魔術が使えるようになるのか分からないんですけど…。」

「今から準備するから、一旦そこで見ててくれ。おい、セイラ!」

「は~い。呼んだかしら?」


スイネグさんはそう言うとセイラ先輩を呼んで、懐から取り出した黒い石を『これにお前の魔力を込めてくれ。』と彼女に渡す。


「その石ってどういうものなんですか?」

「これは魔蓄石と言って、魔力を込めるとその力を溜め込んで置ける石だ。」

「あーちゃんがこの街に来て、普通に使っている照明とか、物を温める機械とかにも使われているものなのよ。」

「そうなんですか…初めて見ました…。」


そう話しているうちに、段々魔力が溜まってきたのか、真っ黒だった石が透明に近い色になってくる。


「はい、これぐらいで良いかしら?それにしても面白いことを考えるわね。」

「あぁ、ありがとう。どうやら何をしようとしてるか分かったようだな。」

「えぇ、どんなものが見れるのか楽しみだわ。」

「もしかして、今からやろうとしているのって…」


スイネグさんが魔蓄石を受け取り、粉砕機にセットしたところで、私も彼が何をしようとしているのか理解する。


「あぁ、これらを使って擬似的にアリアス大陸と似たような環境を作り出す。」

「そ、そんな事が出来るんですか?」

「セイラの魔力を使っているし、少しの間だけならな。」

「なっ!?だとしたら、この機械ってこんなところにあって良いものなんですか?」


私がこの数ヶ月の悩みを、一瞬で解決させるような機械に驚いていると、スイネグさんはフッと馬鹿にしたような笑みでこちらを見て

『お前は本当にこれがそんな大それたものに見えるか?』

と聞いてくる。


「当たり前じゃないですか!?だって、これがあれば、何処でも魔術を使えるようになるって事ですよね?」

「まぁ、そう言う意見が出てくるのも分からんではないが。」

「あーちゃんからすると、とっても便利そうに見えるわよね~。」


この機械があれば、魔物退治や街の防衛にも役立てられるかもしれないと考え、私が興奮を抑えられずにいるというのに、2人は冷静なままで子どもを見るような目でこちらを見てくる。


「な、なんですか?その目は。」

「何処から説明するのが良いやら…。まず、こちらの大陸では魔術を使える奴が少ない。それなのに、わざわざ魔力を無駄遣いしてまでその辺に魔素をばら蒔く理由が無い。」

「そ、それならばアリアス大陸とか、魔術を使う人が多い所でなら…」


スイネグさんの説明に、納得出来ずに私がそう反論すると

「アリアス大陸は元から魔素が豊富にあるわけだが、魔蓄石を1つ2つ砕いたところで影響があると思うか?」

と返されてしまう。


言われてみれば確かに、どちらの大陸でもこの機械を使う意味があるように思えない。


「理解したらさっさと実験を始めるぞ。」

そして、これ以上私から反論が出ないのを確かめると、そう言ってスイネグさんは粉砕機を起動するのだった。

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