30 私だけ?
「そう言えば、今日は私しか付いてきてないですけど、他にも先輩を手伝ってる人って1年生に居るんですか?」
まだ彼の事をよく知らないし、この数日の事を考えると、こうして雑談をする機会なんてそうないだろうと思ったので、私は色々とスイネグさんに聞いてみることにする。
「居るわけ無いだろう。1年どころかお前以外に今助手は居ない。そうじゃなきゃ、わざわざ俺が直接買い物に来るわけ無いだろう。」
「そうなんですか?先生とか、セイラ先輩とか…」
言われてみれば確かに、この人は押し付けられる面倒事は全部押し付けてしまおうとする感じがする。
実際、今こうして今回買わない器具もいちいち説明してくれるのは、次から私だけで買い物に行けるようにするためだろうし。
「お前にはあいつが俺の言うことを理解出来るように思えるのか?」
「うぅ、まだそんなに話したことある訳じゃ無いですけど、なんとなく難しそうに思います…。」
「良く分かってるじゃないか。あいつに頼み事をしたって、どうせ
忘れるだろうからな。」
「確かに…。」
私は心の中でセイラ先輩にごめんなさいと謝るが、その様子が簡単に想像できてしまうのも事実だった。
「それに、教師の中に俺を手伝おうなんて暇人はそうそう居ないからな。」
「暇人…ですか?」
「あぁ。今やっている研究はあくまでも俺の趣味でしかないからな。しかも内容を理解したところで得られる恩恵もたいした事が無い。そんなの誰も手伝おうなんて思わないだろう。」
サク先輩から紹介されて、この人から魔法を教わることになった訳だが、スイネグさんの話を聞いてると、このまま教わり続けて良いのか不安になってくる。
「恩恵が少ないって…、私は魔法と魔術の違いを知れただけでも結構役に立つと思いましたけど。」
「そう思えるって事は、お前も俺と同じ変人側だと言うことだな。」
「なっ!?変人!?」
「まぁ、そうなるようにあいつが仕向けたってのもあるだろうがな。」
いつの間にか私も、スイネグさんの仲間扱いをされていることに不満の顔を向けるが、彼は嘆かわしいとでも言うようにやれやれと首を振ると、恩恵が少ないと言われる理由を説明してくれる。
「まず最初に、この前俺がこの研究を始めた頃には、周りの奴は大体魔法のイメージが固まってしまっていることは覚えてるな?」
「はい。それが何か関係あるんですか?」
「あぁ、大いにな。イメージが固まってるせいで、魔法と魔術と言う区別を知ったところで、両方とも使いこなせるようになるには時間がかかる。それなら今まで通りのやり方で技術を磨いた方が評価に繋がりやすい。」
「なるほど。3年生にもなると、クラスが変わるチャンスはあと一回しか無いですもんね。」
「あぁ、おまけにこの研究は、あくまでも俺の趣味でしかないからな。ここまで堅実に技術を磨いてきた奴らが、効果があるのか分からない、そんな博打めいた方法を選ぶわけがない。」
「習得するのにも時間がかかるとなると、尚更役に立つと思う人は居なさそうですね。」
改めて説明されると、どうして私が彼に紹介されたのかが良くわかってくる。
「つまりは、私はちょうど良い実験台だって事ですよね。」
「あぁ、そうだな。だが安心して良いぞ。この技術を習得したとき、実際に効果を実感出来るのかは俺も気になるから、卒業後も時々顔を出しに来てやる。」
「私から言ったとはいえ、ハッキリと肯定しすぎではっ!?でも、卒業した後も面倒を見てくれるんですね。」
「まぁ、俺が在学中に、期待できるだけの成果が見られたらだがな。」
「ならば私が卒業するまでずっと来てくれる事になりそうですね。」
私がそう言うと、スイネグさんは『どうだかな。』と言って次のお店へ歩き出す。
私は、重い荷物を持って彼に付いていくが、今日の出来事を通じてスイネグさんの事を、ひねくれているかも知れないけれど、思っていたよりも悪い人では無いと感じるのだった。




