27-1幕間 メリッサの休日
「はぁー、せっかくの休日だってのに、どいつもこいつも忙しいねぇー。」
あたしは今、あてもなく1人でぶらぶらと街を歩いていた。
と言うのも
「おーい、今日は天気が良いからまたこの前みたいに、皆で街に遊びに行かねーか?」
「わたしは、今日やることがあるから、遊びたいなら他の人を誘って。」
「やることったって、どうせ素振りとかそんなんだろ?そんなのいつでも出来るじゃねーか。」
と、サヤカを遊びに誘ったのだが
「人に、その素振りを教える予定がある。」
「かぁーっ、2学期が始まったばかりだってのに、随分とやる気のある奴が居るんだな。」
「そう言うことだから、遊びたいならまた今度にして。」
と言う風に素っ気なく断られてしまい
「おいおい、どうせそんなこと言って来週も忙しいとか言うんだろ?」
「基本的な練習を教えたら、しばらく1人で勝手にやって貰うから。」
「筋が良さそうだったらそのまま付きっきりで面倒を見そうだけどな。」
「わたしは他の人の為に、そこまで時間を使う気はない。…なんだったらメリッサも一緒に来る?」
まるでちょうど良い練習相手を見付けたとでも言うように、爛々とした目で此方を見てくるので
「やめとくよ。わざわざ休日に疲れるようなことはしたくないし。」
と言って、さっさと部屋を出たのだった。
「ったく、あのまま付いてったら、絶対今日教える予定の奴なんか無視して、延々と練習試合させてくんだろ。」
あたしは、そうぼやきながらレイナやアルトレアの部屋に行ったのだが、2人とも既に外出してるのか、どちらも声をかけても返事がなかった。
仕方がないので、何か面白いことが無いかと1人街に繰り出し、今に至ると言う訳だ。
「にしても、腹が減ってきたな。」
適当に歩いていたとは言え、気が付いたら街に来てから1.2時間ほど経っており、お昼が近くなっていた。
「飯の為に学校まで戻るのもダリィし、何処か飯屋でも探すか?」
だが、今の時間から空いてるお店を探すのも面倒だ。
「広場の方に行ってみるか。」
だったらせっかくの休日だ。屋台も出ているだろうし、そっちの方に行ってみるのも面白いかもしれない。
あたしはそう思うと、美味しそうな匂いと、喧騒が広がる方へと歩みを進める。
「おっちゃーん、串焼き3本おくれ。」
「あいよ!ちょいと待ちな。…ほら、熱いから気を付けろよ嬢ちゃん。」
「あんがとよ。ほぉ、なかなか旨いじゃねーか。」
「嬉しいこと言ってくれるな。そら、オマケでもう1本付けてやる。今度は1人じゃなくて彼氏と来な!そしたらまたオマケを付けてやるよ。」
「余計なお世話だよジジー。友達には味は旨いが、お節介な店があるって言っとくよ!」
「おう!宣伝ありがとうよ!」
「ぜってーまた来てやるから、そん時はまたオマケ付けろよー。」
あたしは広場に着くと、いくつか屋台を巡って昼食を取っていた。
「ったく、本当に余計なお世話だっての、あのジジー。あそこにレイナが居たら『だ、ダメですよ!せっかくオマケしてくれたのにそんなこと言っちゃ!』とか注意されたのかねぇ。」
先程買った串焼きを食べながら、皆と来た時の事を想像していると
「お、これが噂をすればなんとやらってやつかな。」
偶然にも向こうの方にレイナと年上の男が歩いているのを見掛ける。
「おうおうおう、大人しそうな顔して私服でデートとは、ちゃっかりしてるねぇ。」
相手は恐らく、彼女の話に何回か出てきている、入学前からお世話になっている先輩だろう。
レイナの事をからかうといつも、そんな関係じゃないと、顔を真っ赤にしながら否定していたが、これはもう言い逃れ出来ないだろう。
腹も膨れてきたし、じろじろ見るものでもないなと、あたしは広場を後にするのだが、その先で、またしても面白そうな光景を目にする。
「なんで私が荷物持ちなんですか!なんと言うか、こう言うのって普通逆なんじゃ無いですか?」
「文句があるなら、俺がそれを持つからさっさと帰っても良いぞ。はぁ、半分はお前の講義の為に用意してる物だったんだかなぁ。」
「ぐっ、分かりましたよ!私が荷物持ちをすれば良いんですよね!!」
「いやいや、お前が機材を選んでくれるなら荷物持ちをする必要は無いぞ。」
さっきの仲良さそうなレイナ達を見た後なだけに、人目も気にせずギャーギャーと言い合っている様子を見るのは、なかなかに楽しい物だった。
「いやぁ、アルトレアも隅に置けないねぇ。まさかあたしらに隠れて制服デートしてるとはねぇ。」
実際はどんな関係なのかは知らないが、今日見たことをアルトレアに伝えたら、一体どんな反応をするのか想像するだけでも楽しい。
「あら、そこにいるのはもしかして、Sクラスの天才ちゃんじゃない?」
そんなことを考えていると、いつの間にか背後にたっていた人物に声をかけられる。
「貴女にそう言われても嫌みにしか聞こえませんよ。SSクラスの超天才さん?」
あたしはあたしはそう言うと、声の主を確認するために後ろへ振り返る。
「やっぱりセイラか。こんなところで1人で何してるんだ?」
「あの2人がちゃんと真っ直ぐ帰ってくるか見ていたのよ。貴方の方こそ何をしていたの?」
「あたしは、あそこの片方が友達だからな。面白そうなことしてると思って見てたんだ。」
あたしは、セイラが2人の知り合いだってことに驚くが、向こうもあたしの話しに驚いたようだ。
「あら、あーちゃんはAクラスなのに貴女と接点があったの?」
「あたしも同じクラスだからね。」
「んん、まさか貴女、試験で手を抜いたのかしら?」
「そんなことしたら先生がすぐに気付くだろ。クラスが落ちたのは、あたしが皆の思ってるほど、才能がある訳じゃなかったってだけだよ。」
あの2人とセイラは知り合いのようだし、此処に長居すると面倒な事になりそうだから、あたしはさっさと学校へ戻ることにする。
学校に帰ると、何となくサヤカの約束の相手が気になったので、寮に戻る途中で訓練所を覗いてみる。
「おいおい、これはまた意外な組み合わせだねぇ。」
そこに居た人物を見てあたしは、新しいからかいのネタが増えたとほくそ笑みながら、自分の部屋へと帰るのだった。




