01 最悪な目覚め
目を覚ますと、そこは私の部屋だった。
「はぁ、最悪。まさか倒れちゃうなんて」
そう呟いて、倒れた原因を思い返す。
この世界は、空気中や体内の魔素と呼ばれるものを利用して、魔法を使うことが出来るのだが、空気中に含まれる魔素の量は、大陸によって異なるらしい。
そのせいか、私の大陸に居たときと比べて、うまく魔法を使えないように感じる。
だから今日は、この大陸出身の友達に聞いた魔法の使い方を試そうとしたのだが、思っていた以上に上手くいかず、何回も失敗しているうちに体力を消耗し、立ち上がった時にふらつきを感じたので、これ以上はまずいと思い、急いで部屋に戻ることにしたのだ。
今思えば、わざわざ寮まで戻らずに、保健室に行ったり先生に声を掛ければ良かったのだろうが、既に倒れてしまった後なので今さら後悔しても遅いだろう。
そんなことよりも、私は廊下で倒れたはずなのに、今、自分のベッドに横たわっていると言うことは、リュウレンが誰かを呼んできてくれたのだろうか。
「うーん。もう少しで何かコツを掴めそうだったんだけどなぁ」
私が最後の頃に感じた感覚を思い出しながら呟くと
「なーにがもう少しだ。ぶっ倒れるまで魔力を使うとか、やっぱりバカなんだな」
そう横から突然話しかけられ、誰も居ないと思っていた私はびっくりして
「ひゃっ」
と、声をあげてしまった。
「な、なんであんたが部屋にいるのよ」
何故か横に座っているリュウレンに聞くと
「お前が起きるのを待ってたからに決まってるだろ」
と、言われてしまう。
「っ…。」
私は、他にもいくつか質問をしようとしたのだが、体を起き上がらせたとたん眩暈を感じて、再び布団に倒れてしまう。
「あー、今お前魔力回路の流れが狂ってるから、無理して起き上がらない方がいいぞ」
リュウレンはそう言うと、私の手を握り、指を絡めてきた。
「ちょっと!いきなり何をっ、くっ…」
そして、その手を振り払う前に、体に魔力を流し込まれる。
「少し荒療治だけど、俺の魔力を回路に流して無理やり流れを正常化させたぞ」
「はぁっ…、はぁっ…」
そんな風に言われたが、私は血流とは別の何かが体を流れる感覚に襲われており、なかなか返事を返すことが出来ない。
「まぁ、どうせそうなるとは思ってたけど。とりあえずこれ以上は居てもあんまり意味なさそうだから、自分の部屋に戻るぞ」
と言いながらリュウレンが立ち上がるので、私はせめてこれだけはと思って
「まって、どうしてあんたが私を助けたの?」
と聞くと
「俺は体が弱いからな。倒れたときに助けて貰えるように恩を売っておこうと思ってな」
と言われる。
「意味がわからない…」
そう呟いてまた私は意識を失った。