26 魔法のメリット
魔術に関しては自分で使っている事もあって、すんなり理解出来ることが多かったが、魔法は自分だけで習得しようとして失敗しているので、この機会に分からないことはとにかく全部聞こうと考えた。
「自分に合わせて、ですか?」
「あぁ、そうだ。先程魔術は、環境の魔素に応じて使い方を変えると言ったことは覚えてるな?」
「はい。」
「これは、魔法を使う際のメリットの話にもなるんだが、魔法は体内の魔素を使う。」
「確か、魔力…でしたよね。」
「そうだ。魔力は外部からの影響を受けない為、ユニウス大陸でも、なんなら魔素がほとんど存在しないと言われているニューホーン大陸ですら、魔法を使用することが可能だ。」
「しっかり鍛える事が出来れば、何処でも自分のベストパフォーマンスが出せると言うことですよね…。」
私は、1つ目からとんでもないメリットを聞かされ、是が非でも魔力を扱えるようになりたいと思った。
「環境に左右されないなら、魔術じゃなくて魔法を先に鍛えた方が効率的なんじゃないかな…。」
何処でも同じように使えるなら、その方が便利そうなのもあって、思わず呟いてしまったが、
「そこだけ聞くと魔術よりも魔法の方が良いって思っちゃうわよね。」
「言っとくが、魔術をこの大陸でもちゃんと使えるようになるまで、魔法の使い方は教えないぞ。」
と、先輩達に発言を咎められてしまう。
「今はまだ、どちらもメリット側の話しかしていないから、魔法を使う際のデメリットが分かりにくいんだろう。」
「そう…ですね。ちゃんとその話もしてもらえるんですよね?」
「当然だ。だが、まずは基礎知識を付けて貰わないと伝わらないだろうから、一旦このまま説明を続けるぞ。」
「はい、お願いします。」
ちゃんと教えて貰えるならばと、私はここでは質問をせずに話が始まるのを待つ。
「では、次だが。アルトレア、お前は魔術を使う時に詠唱はしてるか?」
「詠唱ですか?うーん…水よ!みたいなのはしたことあると思います。」
「それは掛け声だな。ふむ、その感じならやはり、魔法は知識を付けるまでは使用を禁止しても良いかもしれんな。」
「えっ、」
あまりにも淡々と告げられる突然の宣告に、私は動揺を隠せない。
だが、すぐに理由を説明してくれると思い、黙ってスイネグさんの方を見る。
「アリアス大陸ではオゾンタイプの魔素が多いので、思いどおりの魔法が発動しやすかっただろう。」
「はい。」
「だが、ここでは魔素の質が落ちている分、命令が通りにくく、魔法を発動させるのにイメージが重要になってくる。そして、ある魔法を統一のものとして、イメージさせやすくしたものが詠唱だ。」
この話で私は、1年生が魔法に関して様々な制限がかけられているかを理解する。
「イメージが重要…だから先生達も、魔法を私達に教えるような事をあまりしないんですね。」
「そうだな、1年ではまだ自分の適性も多いから、変に知識が入ると固定観念に囚われてしまう。例えば、魔法には6つの属性しかない、見たいにな。」
「成る程…。私が大会を見せてもらえないのも、まだ自分の魔法に対してのイメージが確立出来てないからなんですね。」
サク先輩が私の事を2人に任せたのは、きっとこの説明を聞かなければ、私が納得しないのを分かっていたからなのだろう。
「どうだかな。俺はあいつじゃないからな。何を考えているかは、本人に直接聞いてくれ。」
「別に今更気にしないですけど…。」
「影響されやすいうちは、下手に強烈な魔法を見てしまうと、それしか使えなくなることもあるからな。しばらくの間は、知識を詰め込んだ後、魔法や魔術のイメージを確立してもらう。」
「分かりました。」
スイネグさんがそう言ってくれたおかげで、私は、サク先輩がレイナだけを連れていった理由、そして今、成長するために必要な課題をはっきりと理解することができた。
だからこそイメージを確立させるには、まずは魔法の事をもっとちゃんと知らなければならないと、これ迄以上に真剣に、スイネグさんの話を頭に入れていく。
「さて、次だ。魔素には種類があると言ったが、それ空気中だけじゃなく体内の魔素に関しても同じだ。だがそれは、個人差という訳じゃないが、魔術に使用する魔素よりも少し複雑になっている。」
「種類が3種類以上に分かれると言うことですか?」
私は、複雑化すると言われてもあの種類からどのように増えるのか分からないので、スイネグさんに質問する。
「いや、基本的にはあの3種類から変わらない。違いがあるとすれば、魔素の質が外からの影響を受けにくいので、魔素の割合が個人で変わってくると言うことだろうか。」
「魔力の使い方を教わる時は、なるべく近い割合の人が良いのですか?」
彼の話からすると、レイナは、サク先輩と似たような魔力を持っていて、彼からその使い方を学べたので、此方に来てから急激に力を伸ばせたのだろう。
「理論的にはそうなるな。」
「それならば、私もレイナみたいに似たような魔力の持ち主を見付ければ、力を伸ばしやすくなりますか?」
「残念ながら、あの2人の場合は特別だ。お前が魔力の質が近いものから魔法を教わったとして、あそこまで急激に伸びることは無いだろう。」
私が何回も魔力の扱いに失敗したのは、魔素の特性を把握しきれてなかったからかと思ったが、それ以外にも理由があるらしい。
「これは、俺もまだ調べきれてないんだが、中には何かしらのきっかけを得て、魔力の質が変わるやつがいる。」
「えっと、それは訓練とかで調整したとかではなくてですか?」
「そうだな、聞いた話にはなるんだが、魔力が変質した後は、これ迄以上に魔法が思う通りに発動出来るようになったと言う奴が多い。」
「つまりは、オゾンタイプの魔素が体内に増えたと言うことでしょうか?」
私が最後の言葉を締め括ると、彼は満足そうに頷く。
「あぁ、そうだな。そしてそういう奴らは…」
そして、スイネグさんは、そう話しながら此方に歩いて来る
「大体この辺に力を感じるようになるらしい。」
なんて思っていたら、いきなり私の胸の下、鳩尾辺りに触れてきたのだった。




