24 魔法?奇術?
「では続けるが…、魔素と魔力それぞれで同じ魔法を使うときの大きな違いを言ってみろ。」
スイネグさんの講義が再開すると、早速質問が飛んでくるが、これは何回か聞かされた話なので、そこまで考えずに答えられる。
「えっと、空気中の魔素を使って発動させるのと、体の中にある魔素を使って発動する…です。」
「その通りだ。では次に、魔素と魔力、それぞれを使ったときのメリットは分かるか?」
「メリットですか…。うーん…」
けれども次の質問は、これまで漠然と魔法を使ってきた私には答えるのが難しい。
「まぁ、最初からアリアス大陸で使っていた奴には、空気中の魔素で魔法を発動するのが当たり前で、あまりメリットだと言う風には捉えてないだろうな。」
「どう言うことでしょう。」
「この、空気中の魔素をつかう、あぁめんどくさいっ!」
スイネグさんは、途中までは教師の様に淡々と説明を続けていたのだが、段々とイライラしてきたのか突然大声をあげ始める。
「な、何ですかっ、いきなり。」
「今までは、誰かに魔素について細かく説明することなんてそうそう無かったから、今更ながら魔力じゃない方で魔法を使うときの言い方が面倒だと言うことに気が付いたんだ。」
「私はとっくに気が付いていたわよ。」
「お前が馬鹿だから理解に時間が掛かってると思っていたが、どうやら此方の説明の仕方にも問題があったようだな。」
私は今のままでも何とか理解出来そうなので、そんなに気にすることではないと思ったが、スイネグさんは納得がいかないのかウンウン唸っている。
「空気中の魔素を使った魔法…このままでは長すぎるな。だからと言って魔素を利用した魔法では魔力も魔素を使って発動していると言う意味では同じになるし…。」
「今まで魔素と魔力で言い分けてたんじゃ無いんですか?」
「俺の中では別物と言う意識が出来ていたが、初めてこれを知った者にとって区別が付きにくいことに気が付いたんだ。」
「本当に今更ね。」
そうして先輩達は、完全に講義の内容から逸れて、新しく空気中の魔素を使い発動する魔法の呼び方を考え始める
私としてはこんなことで時間を取られたくないと思うのだが、説明してる途中でまたスイネグさんが爆発してしまう可能性を考えると、迂闊に口を挟むことが出来ない。
「魔素魔法と魔力魔法なんてどうかしら。」
「却下だ。結局使い方の違いが分かりやすくなってない。」
「魔法と魔力はどうですか?」
「それこそ論外だろう。もはや何の違いを説明したかったのか分からなくなっている。」
私達はこうして意見を出し合うが、結局良い案が出ることはなく、徒に時間だけが過ぎていく。
「これって結局、私達だけが理解出来ても意味ないのよね?」
「あぁ、これから説明するに当たって、言い易くそして簡潔に、それでいて誰が聞いてもどちらの魔法を指しているのかがすぐに分かるような呼び名を考える。」
「もう単純に外の魔法、中の魔法で良いんじゃないかしら?」
「それでは魔素と魔力が違う事を理解している者にしか伝わらないし、結局その違いを説明しなければならないだろう。」
私はまだ説明すら受けてないのに、そんなに都合良く、パッと呼び方なんて決められる筈もないし、このまま今日は講義は終了かもなんて思ってしまうが、セイラ先輩が何かを思い付いたようだ。
「ねぇ、一旦魔力を使う方を魔法って決めちゃって、もう1つの方の使い方の呼び方を考えるのはどうかしら?」
「成る程、悪くない案だ。だが、その場合もう1つの方は完全に新しい呼び方をすることにならないか?」
「私的にはいつも使っている方法の呼び方が変わるわけだから、混乱しちゃいそうな気もするけど…。」
私はもうこの頃には、何でも良いからさっさと決めてほしいと思っていたが、それを口に出すことはしない。
しばらくして、セイラ先輩は魔法の使い方から何か着想を得たようだった。
「うーん、アリアス大陸の子達の魔法を見て思ったのだけど、あれって少しマジックみたいじゃないかしら?」
「マジック?どうしてそう思う。」
「だって、どっちも何もないところから物を出したり、魔法発動させたりするじゃない。」
「魔法は魔素を使っているし、マジックには種がある。どちらも無から何かを産み出しているわけではない。だがまぁ、マジックか…。確か他の地域では奇術とも言ってたな。」
私は2人の会話を聞いて、何となく思い付いたことを呟く。
「魔法と奇術で合わせて魔術…とか…」
すると、それが聞こえていたらしいスイネグさんが此方を見る。
「なんだ、今のをもう一度言ってみろ。」
「えっと…、あの…魔法で行う奇術みたいなものなので魔術、なんて言うのはどうですかって…。」
「成る程、魔術か。分かりやすくて良い呼び名だな。他に良い案も無いことだ、それで決定で良いだろう。よし、これからは魔力を使う物を魔法、空気中の魔素を使う物を魔術と呼び分ける事にする。」
「なっ、ほ、本当にそれで良いんですか?」
「私も異論は無いわ~。魔法と魔術、分かりやすくて良いわね。」
そんなに深く考えた名前では無いのだが、反対が出なかったことで皆の意見が纏まり、漸く止まっていた講義を再開する事が出来るのだった。




