20 嫉妬だなんて…
「スイネグさん、まだ来てないですね…。」
「スイが遅いのはいつもの事だから気にしないでちょうだい。それよりも今日は来てくれてありがとうね、あーちゃん。」
私は、放課後になると昨日約束した通りに空き教室へ来たのだが、そこにはセイラ先輩しか居なかった。
それは別に良いのだが、なんか先輩の私への呼び方が変わっているのは気のせいだろうか。
「せっかくサクと仲良くなってきたところなのに、私達が相手でごめんなさいね?」
「あ、あの…、私は別にあの人に恋愛感情とか無いですから、勘違いしないでくださいね。」
「あらそうなの?教えられることがほとんど無いのに、毎日のように来てくれるって聞いたけど。」
私が毎日行くのは教わるのもあるが、別の理由と言うか、そちらの方が目的なのにサク先輩から変な風に伝わってそうだったので、私は早めに修正しなきゃと考える。
「違います。私はレイナが心配で来てるだけです。レイナ1人だとあの人に変なことされても気付かなそうで。」
「確かに彼の事だから絶対にそう言うことがないとは言いきれないわね。」
「やっぱり…」
「でも、私はあの子よりも貴女の方が心配だわ。」
「えっ?」
彼と関係値が深そうなセイラ先輩からもそう言われるなんて、やはり彼は女ったらしなんだと思っていると、彼女から予想外な言葉を掛けられる。
「私が心配…ですか?」
「うん、貴女って素直じゃ無いでしょ?」
「そんなことっ!…無いとは言いませんけど…。」
「サクも多分貴女の性格を分かってて私に面倒を見るようにお願いしたのよね。」
彼女に悪気は無いのだろうが、言い方がまるで、子ども扱いをされているように感じてしまう。
「本当はね、貴女の事も連れていっても問題は無かったのよね。」
「そうなんですか!?」
しかし、告げられた事実にそんな感情は吹き飛んでしまう。
「それならば何で…」
「連れていってくれなかったって?」
「はい…」
「そうね、言っちゃえば貴女がレイナに嫉妬しないようにかしら。」
「嫉妬だなんて…」
私は、他の人の視点でそんなにサク先輩を気にしているように見えるのか少し考えてしまうが、セイラ先輩はそう言う意味で言ったわけでは無いようだ。
「私が言ってるのは恋愛方面じゃないわよ?」
「だったら、どういう意味で…」
「魔法の才能。」
いきなり核心を突く言葉に私は思わずハッとする。
「私はサクみたいに優しくないし、貴女もはっきり言って貰った方が嬉しいでしょ?」
「はい…。」
そして、セイラ先輩の先程までとは打って変わったような表情に、彼女が今まではこの話をするために敢えて軽い雰囲気を出していたことを悟る。
「嫉妬…しているように見えましたか?」
「見えた、と言うよりも、自分より下のクラスだった子があれだけ誉められているのに、貴女にはそう言った言葉を全く掛けてこないのがムカつくのよね?そして、実力を発揮できない自分にも。」
昨日会ったばかりなのに、ここまで私のことを理解しているのは、流石は先輩と言うことなのだろうか。
「きっと私、サク先輩から同じ事言われても、それが理由なら納得出来なくて無理やり着いていったかも知れません…。」
「落ち込まなくて良いのよ。貴女が一緒に行っても得るものが無さそうなのは本当だし。」
「そんなにハッキリ言わなくても良いじゃないですか…。」
私はセイラ先輩の包み隠さない物言いに更に気分が落ち込んでしまう。
「やっぱり私って自分で思っているよりも才能が無いんでしょうか…。」
「そんな風に考えないで。人にはそれぞれの才能があって、あの子の先生にはサクが、貴女には私たちの方が向いているって言うだけなんだから。この間に色々と学んで、あーちゃんだって凄いんだぞって所を見せてやりましょ?」
セイラ先輩にそう言われると、なんだか入学してからモヤモヤとしていた心がずっと軽くなった気がする。
こういう所も流石は先輩なんだなと私は少し尊敬する。
「成長した姿を見せ付ければ、きっと一緒に練習してたって言う彼もメロメロよ?」
「あいつはそんなんじゃ無いですってば!!」
だが、彼女の何でも色恋沙汰に結び付けようとする所は、いくら先輩と言えども感心出来なかった。




