19 明日からは
「明日からは武術大会の準備が始まるからね、ぼくの助手として着いてきてもらうつもりだよ。」
「さっきも言ってましたけど、武術大会ってなんですか。私は一緒に行けないんですか?」
私は、その武術大会とやらにレイナだけを連れていく理由を知りたくて、サク先輩に尋ねる。
「ああ、そうだった。言うのを忘れていたんだけど、武術大会は基本的に1年生は参加も見学も駄目だからさ、今日聞いた内容はあまり他の人に話さないでね。」
「見学も駄目なんですか?」
「上級生達が余計な影響を与える可能性があるからね。」
「でも、レイナは連れていくんですよね?」
「連れていくと言っても、彼女にも試合は見せないよ。」
「それじゃあ何のために…。」
「ぼくは当日救護班として動く予定なんだけど、レイナにはその手伝いをしてもらいたくてね。まぁ、彼女には試合を観せても大丈夫だとは思うけども。」
先輩が何故レイナを連れていけると判断したのか分からないので、私も一緒に行けないのか聞いてみる。
「レイナが大丈夫ならば、私も連れていってもらえないんですか。」
「うーん、ほとんど救護所に居ることになるから、一緒に来ても君が得られるものは無いだろうし、好奇心で勝手に試合を観に行かないとは言い切れないからねぇ。」
「うぐっ、それは…。」
自分でも、救護所でじっとしていられるとは思えないので言い返すことが出来ない。
そして、その間に今度はレイナがサク先輩に質問をする。
「どうして私は試合を観ても大丈夫なんですか?」
「レイナは、ぼくが教える前から既に自分の力の使い方をイメージ出来ていたからね。他の人が使う魔法を観て、寧ろ自力をブラッシュアップさせる事に繋がると思っているよ。」
サク先輩の答えに私は不満を漏らす。
「私は観ても成長出来ないって事ですか?」
「君に限らず1年生が、だね。あーちゃんはアリアス大陸出身だから、今はこちらの大陸でのやり方に慣れていこうと試行錯誤しているところだろう?そんな状態で上級生の試合を観たら魔法のイメージが変に上書きされかねない。」
「イメージ?」
「そうだ。今の段階でも既に君のお友達やぼくの魔法を観たことで、今までとは魔法の使い方を変えようとしているだろう?」
「それでは駄目なんですか?」
「駄目と言う訳では無いんだが、魔素と魔力の違いを理解した方が危険も少なくなると思うんだ。」
もう何を言っても、サク先輩の気持ちを変えることは出来ないことを悟ると、私は、諦めて彼の決定を受け入れるしかない。
「とにかく、そう言うわけで他の1年生と同じく、武術大会に来るのは諦めてほしい。その代わり…」
「私達と一緒にお勉強ね♪」
「そんなに不満そうな顔をしないでくれよ。本来なら武術大会があることすら知らされないんだから。」
どうやら、感情が思っていたよりも表情に出ていたようで、私は先輩2人から子どものようにあやされる。
「さて、武術大会について説明していくよ。」
私の機嫌が直ってきた頃合いでサク先輩がそう言う。
「武術大会は全部で5日間、2~4年生がそれぞれのクラス毎に別れて競技をしたり、個人で試合をしたりするのよ。」
「それを団体で2日間、個人で2日間、あいだの1日にちょっとした審査会の日程で行われる。」
「ほわぁ~、けっこう長いんだね~。」
「君たちも運動会みたいなのはやったことがあると思うんだけど、それを物凄く大きくした大会だって思ってくれればいいよ。」
「競技とか試合はわかったけど、審査会は何をするんですか?」
「何をするかって聞かれると難しいけど、大体はお題に沿って魔法を使ったり、幾つかの教室で研究の成果を発表したりするのかな。」
「生徒がお祭りの屋台みたいなのも出しているから、お友達と一緒に回るのも楽しいわよ。」
「サク先輩は試合に出たりしたの?」
私も少し気になったことを、レイナが質問する。
「ぼくはあまりそう言うのは得意じゃないからね。試合は見学だけして、あとは会場のあちこちを見て回っていたかな。」
「サクはデートばかりしてたわよ。すれ違う度に違う女の子と歩いてたんだから。」
「センパイ…?」
無難な答えで逃れようとしたサク先輩だったが、セイラ先輩の暴露によってレイナが不機嫌になり、サク先輩を問い詰め始める。
そして、私はわざわざレイナを宥める必要もないと思い、セイラ先輩に明日の集合場所と時間を聞いて寮に帰るのだった。




