17 説明の前に
「武術大会ですか?」
私とレイナは本格的に授業が再開する前日に、先輩に呼ばれて噴水のある広場に来ていた。
「そう、それが始まると忙しくなっちゃうからね。その前に挨拶だけはすませちゃおうと思ってね。」
「挨拶はこの前済ませたと思うけど…。それよりも、その武術大会って言うのは…」
「まあまあ、説明もこの後ちゃんとするから、そんなに慌てないで。今日は先に、この前言ってたぼくの友人達を紹介するよ。」
サク先輩は紹介すると言うが、回りにはそれらしい人影はない。
「あれ?でも私達しかここにいないよ?」
「一応時間は伝えたはずなんだけどね。あ、来た来た。あそこの2人だよ。」
「お待たせー。」
声のする方を向くと、男女のペアがこちらに歩いてくるのが見える。
「おい、サク。お前また違う女侍らせてんのか。」
「さ、サク先輩!?またってどう言うことですか!!」
「あなた、こんな悪い男に引っ掛かっちゃだめよ?」
「引っ掛かってないです!」
そして、彼らが到着した途端一気に騒がしくなる。
「君たち変なこと言って僕の印象を悪くするのはやめてくれよ。」
「別に嘘は言ってないだろー。」
「やっぱりこの人は信用しちゃダメだよレイナ。」
「皆とりあえず落ち着かない?」
最後にサク先輩がそう言うと、ようやく静かになり2人の紹介を始める。
「まずは、こっちのひねくれたやつがスイネグ。」
「おい。」
「次に、こっちの笑顔が素敵なお姉さんがセイラ。」
「あら。」
「は、初めまして。私はレイナです。サク先輩には色々とお世話になってます!!」
「初めまして、アルトレアです。私はまだそんなに関わりはないと思うけど、サク先輩の友人と気が合うだろうとのことらしいので。」
私達も彼らの挨拶に合わせて自己紹介をすると、早速セイラが興味を持ったのかレイナに話しかけている。
「ふーん。貴女がサクの言ってた女の子?聞いたかもしれないけど、貴女の事を自分を越える天才だって誉めてたわよ。そう言えば、初めて会っていきなり部屋に連れ込まれたみたいだけど、変なことはされてない?大丈夫?」
「あ、あの、えっと…。」
セイラに畳み掛けられるように話しかけられて、レイナがアワアワしていると、サク先輩が横から助けに入る。
「セイラ、そんなに1度に聞いても答えられないよ。それに、誓って僕は彼女には何もしていないし、無理やり何かをするつもりはないよ。」
「そうは言っても貴方のことだしねえ。」
私は3人が話しているのを聞いて、前から少し気になっていたことをスイネグ先輩に尋ねてみる。
「あ、あのスイネグ先輩?サク先輩ってやっぱり女癖とか悪いんですか?」
「んー、どうなんだかね。俺はあいつの交遊関係とか興味ないし、セイラの方がそう言うのは詳しいんじゃねーか?あぁそれと、俺のことは別に先輩って呼ばなくていい。」
そう言われ、私は彼をスイネグさんと呼ぶことにする。
「サク先輩から魔法に詳しいって聞いたんですけど、この後見せてもらえるんですかで」
「はぁ?何言ってるんだ、街まで来たのにわざわざ戻るわけ無いだろ。そもそも見せる意味がない。」
「え?あの、それじゃあ今日は何しに…。」
「あいつがしつこいから顔を見せに来ただけだ。」
「てことは、今日は挨拶の為だけに街まで呼ばれたってことですか?」
「そうだよ、それもこんな貴重な休日にね。」
「サク先輩からは友人だって聞いてたんですけど…。」
「お前はさっきから質問してばかりだな。俺があんなやつと仲良いようにみえるか?もう少し自分の頭で考えてから聞いたらどうだ?」
「なっ。」
サク先輩が、気が合いそうだと言っていたのがスイネグさんなのだとしたら、私はこいつと同類に見られているのか。
そう考えると、私は目の前のこいつだけじゃなく、向こうでレイナとセイラ先輩に詰められているサク先輩にも怒りが沸いてくる。
「にしても、あいつが言っていた1年はどっちのことなんだ?どっちも頭悪そうな面してるからわかんねえな。」
「どうやらあなたは先輩として敬う必要は全く無さそうですね。」
「ああ?最初から必要ないって言ったつもりだったが、もしかして、ちゃんと1から10まで説明しなきゃ分かんなかったか?」
「こいつ…。」
私達がそんな風にいがみ合っていると、向こうの話が終わったのかサク先輩達が戻ってくる。
「おや、思ってたよりも仲良くなるのが早かったね。やっぱりぼくの思ってた通り気が合うだろうみたいだね。」
「ふざけないでください!これのどこを見てそう思ったんですか。」
「レ、レアちゃん、先輩に向かってこれなんて言っちゃダメだよぅ。」
どう見ても喧嘩をしてたようにしか見えないだろうに、彼は私達を見てにこやかな笑みを浮かべるばかりだった。
「おい、まさかお前が言ってた1年ってのはこいつじゃないよな?言っとくが俺は馬鹿の面倒を見るほど暇じゃねーぞ?」
「そのまさかなんだけどなぁ。明日からぼくとレイナは別行動になるから、君達には仲良くして貰おうと思ってたのに。」
「「はぁ??」」
「うふふ、アルトレアちゃん。明日から宜しくね♪」
そして、サク先輩の言葉に驚く私達の声と、セイラ先輩の嬉しそうな声が広場に残るのだった。




