プロローグ
世の中には、犬猿の仲と言うことわざがあるらしいが、私とリュウレンの関係を表すにはぴったりな言葉だろう。
と言うのも
「そんなところで寝てると風邪引くぞ?」
と、床で倒れている私に、平然とした声で呼び掛けてくるのだから、こいつが私の事を心配する気持ちが欠片もないと言うのが伝わってくるだろう。
こいつとは、この学校に来てから初めて会った筈なのだが、何故か初対面の時から、私はこいつに嫌われており、此方から関係を改善するつもりもないので、そのまま数ヶ月が経った。
「うるさい…分かっているからどっか行け」
今の私は、普段慣れないことをしたせいで消耗しており、あと少しで学校の寮にある自分の部屋にたどり着くと言うところで力尽き、今に至ると言うわけだ。
それにしても、最初に通り掛かったのがこいつだと言うのは運がない。
こいつは一声掛けた後何かをするわけでもなく、顎に手を当てて私の事を見下ろし続けているのだから、その思うのも当然だろう。
「そこで立っているだけなら、せめて私の視界から消えるか、誰か人を呼んできて欲しいんだけど」
このまま床に寝ているわけにはいかないのは分かっているのだが、身体に力が入らなく指一本動かせないので、私はリュウレンを下から睨み付けながらそう言う。
「少し静かに。今ここで、お前に恩を売っておくことの、メリットとデメリットを考えてるから黙ってろ」
しかし、リュウレンからはそんな風に返されてしまう。
元々、理由もなく突っ掛かって来るので、リュウレンの事は嫌いだったが、この出来事で私は更にこいつの事が嫌いになる。
だが、私はもう、言い返す気力も無くなってきたので、無言のまま目を閉じるのだった。