44 不自然なとこ
「それで、お前達が不自然に感じた理由を答えられるか?」
一通りの説明が終わると、スイネグ先輩は、彼の知人から送られてきた写真を指差しながら、私達にそう尋ねる。
「うーん、なんだか聞いててモヤモヤする感じはあるんですけど…」
「そうか。俺は一応、これからの暑さに備えて、鎧を軽量化してるとも考えたんだがな」
「まぁ、時期的には考えられなくもないですけど…」
けれど、私は自分の頭の中でそのモヤモヤの正体がハッキリせず、先輩の質問に曖昧な答えを返す。
「でもこの鎧だと、魔物との戦闘で凄い怪我しやすそうだよね」
「そうね。爪とか牙とか、全然防げないわよね、これじゃ」
「だから、こっちでは分からないけど、向こうでは外回りの兵士が、こんな鎧使うような所無かったと思うんだけど」
「それに、いくつもの国でこれに切り替えてるっていうのが…」
それでも、タイガとそうして話すことで、違和感に少しずつ輪郭が浮かび上がってくるのを感じる。
「そう言えば、向こうにいた時ベネウッド大陸には、マジックアーマーって言う、こういう見た目で強い衝撃も防いでくれる鎧があるって聞いたことあるけど…」
「ふむ。確かにそれは実在するが、まだ一般兵に普及されられるほど安価にはなってないはずだな。ましてや複数国家分など…」
と、ここでタイガが、故郷に居た頃の噂話を思い出してそう言うけど、その線は無いだろうと、先輩にバッサリ切り捨てられる。
「じゃあ、この鎧は見た目どうりの防御力なんですね」
「恐らくはな。この写真を送ってきたやつも、最初はマジックアーマーに大量生産の目処がついて、向こうに流れ込んだのかと思ったらしいが…」
どうやら、先輩達は既にその可能性を検討した後だったようだ。
「まぁ、この学園に居てそんな噂を聞いてないからな。十中八九有り得んだろう」
「そうですね。この知識が集まる場所って言われる、ベネウッド学園で聞かないなら」
「へ〜この学校って、そんなに凄いところなんだ」
そして、私が先輩の言葉に同意すると、タイガが驚いた声を上げる。
「へーって。タイガ、知らなかったの?」
「うん。アルトが行ったデッカイ学校って事しか知らないよ」
「あなたは本当に…」
だが、そんな今更な情報で驚いた顔をする幼馴染に、私はついため息を吐いてしまう。
まぁ、それはともかく
「気になるのは、この鎧に切り替わった理由よね」
話が横道にそれてきたので、私はそう写真を見ながら疑問を呟く。
「そうだな。元々この周辺の国が、時期に応じて鎧を変えてると言う話は、聞いたことがなかったから可能性は薄いと思っていたが」
「隣の大陸の国でも、情報を持ってるのはさすがですね…」
色々と知ってる先輩だとは思っていたけど、これは、卒業生からも頼られるのも納得の情報通ぶりだ。
「いや、単に毎年2.4年が校外学習に行く場所に近い国だからな。たまたま少し調べた事があるだけだ」
「なるほどです…」
「それに、他の大陸の国の事だからな。流石に俺も、全部の文化を知ってるわけじゃない」
「それは、そうですね」
と、私が感心していると、ただの偶然だという風に返されてしまう。
実際私も、こっちに来てから知った文化が色々とあったので、それもそうかと頷き返す
「ほら、ここがその場所だ」
そう言って先輩は地図を持ち出すと、私達に見やすいように机に広げて、校外学習の舞台となる場所を教えてくれる。
「けっこう海に近いんですね」
「毎年の事とはいえ、一度に大量の人が動くからな。なるべく周りに迷惑を掛けないようにした結果、こうなったそうだ」
今度の校外学習は、ギルド員に協力してもらう部分はあるが、場所が学園の近くの森で国内で完結する為、学園の判断だけで時期の変更がされている。
けれど、年明けに2.4年が行う校外学習は、Sクラス以上の生徒がアリアス大陸に、それ以外のクラスがユニウス大陸へとそれぞれ向かう為、周辺の国への影響など色々と配慮が必要だそうで、その結果アリアス大陸では、周りに街のない2つの国に挟まれた森で行事が行われるらしい。
「ん?この場所だと…」
その説明を聞くと、途中から会話に参加せず、何かを考えていた様子のタイガが、先輩の指し示す場所を見て、何かに気付いたようにそう呟くのだった。




