08 海水浴へのお誘い
「海水浴?アタシも行ったこと無いけど、そもそもあんた達泳げんの?」
次の日教室にはいると、早速レイナがメリッサ達に試験が終わったら、海水浴に皆で行きたいという話をしているのが聞こえてくる。
「わたしは海で遊んだことは何回もある」
「授業で水に浸かるぐらいはしたことあるけれども…。あ、おはようレアちゃん」
レイナがこちらに気付き挨拶をしてきたので、私も挨拶を返して会話に加わる。
「おはようレイナ。昨日の話をしているの?」
「うん。それでメリッサちゃんから聞かれたんだけど、レアちゃんも海で泳いだことなんて無いよね」
「そうね、私たちのところは海で遊ぶって発想自体が無かったからね」
「泳げないと海に行っても楽しくないかな?」
先輩から簡単に聞いただけで、実際にどのようなことをするのかちゃんとは知らないのだろう、レイナが不安そうにサヤカに尋ねている。
「別に泳げなくても海で遊ぶのは楽しい」
「サヤカは何回も海に行ってるんだっけ。泳げなくてもってことは、それ以外にも何か出来るの?」
「うん。海に入らなくても砂浜で遊んだり色々出来る」
珍しくサヤカか饒舌なので、私達も海で出来ることは何があるのかを質問していると
「海に行く前にプールで泳ぐ練習でもする?」
と、提案される。
学校で練習が出来ると言うことで、私達は放課後メリッサに案内されてプールへ向かっていた。
「うわぁ、本当に学校のプールって、放課後開けてもらえるんだね。メリッサちゃんがその事を知っていて良かったよ」
「アタシは中等部の時もこの学校に通ってたからな。放課後に施設を借りられるのは聞いてたんだ」
「まさか今日いきなり借りに行くとは思わなかったけどね」
私達が話しながらプールサイドへ向かっていると、更衣室の前を通りすぎる時、サヤカが不思議そうな顔をする。
「皆、服着替えないの?」
私は一度寮に戻ったときに、防水加工された服に着替えていたので他の人はどうするのか聞いてみる。
「私はもう着替えてきてるからこのまま行けるけど、皆はこれから着替える感じ?」
「アタシももう濡れても大丈夫な服にしてきてるぜ」
「私ももう着替えてきてるからこのまま行っても平気だよ」
「むぅ…」
どうらやら2人も私と同じで防水服に着替えてたみたいだが、サヤカはこれから着替えるつもりだったらしく、1人納得いかなそうな顔をしていた。
「あれ、着替えなくていいの?」
「いい、わたしは離れて見てるから」
結局誰も更衣室に入らずプールまで向かうのだが、サヤカはふてくされたように少し後ろを歩いていた。
プールサイドへ着くと、私達は簡単にストレッチをして水の中に入る準備を整える。
「さて、じゃあアタシが泳ぎを教えるってことでいいんだな」
「うん。私達は今まで泳いだことが無いから出来れば簡単な事から教えてほしいな」
「そうね。私も人前で無様な姿は晒したくないし、よろしくお願いするわ」
「まず、水に顔をつける。のはさすがに出来るだろうから、水の中で目を開けてみろ」
ざぷん
「次は水に入ったときに鼻から手を離せ」
「えぇっ?そんなの無理だよぅ」
「それが無理なら泳ぐことなんか出来ねーぞ」
私達は、彼女が出来ないことを無理にやらせることは無いことを知っているので、出される課題に文句を言いつつも一つ一つやりとげていく。
「ぷはぁっ。思っていたよりも水の中って楽しいんだね!!」
「そうだろう。もう少し慣れてきたら泳ぎの練習を始められそうだな」
水の中でする遊びを楽しみ、すっかり興奮しているレイナの言葉にメリッサは嬉しそうに頷く。
私はこちらの大陸の常識などを知らないので、メリダやサヤカのように、彼女達にとって当たり前だったり簡単な事でも、馬鹿にせず教えてくれる存在はありがたかった。
普段口が悪かったりする彼女だが、なんだかんだこう言うところは優しいのだ。
しばらくの間、私達はメリッサに教えられて少しずつプールに慣れていく。
そして、サヤカはその様子をプールサイドに立ったまま眺めているのだった。