女教師編
登場人物:
カーゾック・エモナイツ(16):語り部・家族には萌えない
シン・ゾークエロイス(16):友人・義理の家族フェチ
トモエ・オットー(16):クラスメート・金髪ロール・高位貴族・実弟ガチ勢・東方かぶれ
俺の友人シン・ゾークエロイスが、4階の窓から飛び降り、怪我をしてから数日が経った。
落とされたとか自殺の強要とかでは無い。
こいつは自らの意志でそんなバカな事を敢行したのだ。
義理の姉妹や母に囲まれて暮らしたいと言う、阿呆としか思えないような願望を持っていたこの男は、ある日授業が始まるや否や「お義理で教師をやってるような担任」と言うシチュエーションに踊らされ、即座にその教師へ結婚の申し入れを行った。
当然のように教師からフラれ、告白失敗とみるや、フラレ男は恥ずかしかったのか突如発狂して窓から飛び出し、着地をシクッて保健室に担ぎ込まれたと言うわけだ。
何の変哲も無い国語の授業でそうなったおかげで、俺達の教室には投げ専門の幽霊が現れ窓から生徒を放り投げると言う怪談が発生したし(クラスの連中はこんなバカな奴と付き合いがあると言い出しづらかったんだろう)、先生はどう言う授業をしてるんだと学年主任から叱られ、国語で怪我なら運動や護身術の授業では死人が出るのでは無いかと同僚・後輩から恐れられ、減俸一ヶ月を食らった。
泣きっ面に蜂、行き遅れにフラレ男。
ただでさえ婚約者も彼氏もいないのに給料まで削られる。
教室に入ってきて告白を断っただけなのに。
当たり屋みたいな事件だ。
なお、シンの家族から多額の口止め料が渡されているので、収支はトントンだろうか。
いや、変な逸話ができて結婚が遠のくだろうから一方的な損だな。かわいそうに。
どうせなら慰謝料代わりにお見合いでもセッティングしてもらえば良かったのに、と言ったら、ロッカーからいかにも使い込まれた巨大なトゥーハンデッド・ソードをニコニコしながら持ちだしてきたので、慌てて逃げるハメになった。
「しかしウチの先生はそんなにモテないのか?」
昼飯時の食堂で、元凶が失礼な事を言い始めた。
なんでコイツがピンピンしているのかと言えば、単純に保健の先生がスゴ腕のヒーラーだったからだが、そうでなかった場合にコイツがどうなったのかは興味が尽きない。
生命力だけはありそうだから死にはしないと思うのだ。
「巨乳に巨尻とか切れ長の目とか、モテる要素はあると思うが、いかにも荒事専門ですって感じだし――家の切り盛りとかできるのか? 年もだいぶイッてるしな」
「教師って響きはエロいと思うんだが」
「エロければ結婚できるのかよ? 先生のエロさでダメなら、結婚できた女はみーんなその上を行くドエロってわけだ。天国じゃん」
「お前の義母さんもエロいんだろ? やっぱりエロだよ。結婚相手に求められるのバッ」
好き勝手な事を言っていたシンが、背後から首に衝撃を受けてスープを吹き出す。汚ぇな。
ただでさえメニューの少ないランチなのに、スープをムダにされた事を、シンは怒――れるはずも無かった。
やったのはウチのクラスの女王こと、トモエ・オットー嬢だ。
真っ白でなよやかな手は手刀の形で固められている。言動を改めなければ即座に二撃目を加えようというハラだろう。
たとえクラスメートでも躊躇しない、暴力を使い慣れている姿が恐ろしい。
俺は殴られても平気なように、ちまちまとカレーをすくって食べる。
「沢山の学生が集まる場で、担任を貶めるのは感心いたしませんわね」
この娘、階級で見ると三位上の家(貴族のトップは二位だ。上に王族がいるから)の跡取りなんだから、俺達みたいな木っ端――俺の家は世襲ギリギリの七位下――は放っときゃ良いのに。マジメか。
金髪ロールで東方風の名前や文化を摂取しているって点ではただの道楽貴族にしか見えないのに。
そんな事を考えていると、その涼しげな視線がきろりとこちらをねめつけた。読心能力者じゃあるまいし、勘弁してくれ。
「カーゾック君は顔で心情がバレバレですのよ」
ひっ。
◆
「こうなったらキャット先生には一刻も早く結婚して頂かなくては」
俺達のテーブルの向かいに腰かけたトモエ嬢は夢想家みたいな事を言い始めた。
革命はいつもインテリが始めるが、夢みたいな目標を持ってやるから、いつも過激なことしかやらない。
「それができてたら婚期逃してないと思うんスけど……」
もうちょっとオブラートに包もうか。
もしこの会話がどこかに流出していて、教師がでっかい剣を持って闇討ちしてきたら78パーセントくらいの確率で死ねる。
俺はそれが恐ろしくて口にしなかったものの、シンの言う事には同意する。
割と助かりそうな数字だが、そのうち20はコイツを生贄に差し出すことを前提にしているので、直接狙われたら死ぬ確率は98パーセントだ。まず生き残れない。
そもそも78で死ぬと言う数字は、感覚だと生き残れそうでも、よく考えると50ですら二つに一つは死ぬのだから、まったく安心できる数字ではない。
「先生は充分魅力的だと私は思っているのですが、不思議な物ですわね」
そこはさっき話していた通りなので、答えておく。
「まあ、好みのタイプとかもあるでしょうし」
「あまり男性に好かれないタイプなのでしょうか」
「好きな人は好きでしょうけど、平民に好かれそうな感じっつーか。なあ?」
シンに話をふると、同感だ、とでも言う風に頷いた。
「あのざっくばらんな体育会系って感じの嫁が欲しいって貴族は少ないでしょうねえ」
「文系ならよろしいんですの?」
「武力を強調してる家とかならワンチャンあるかなとも思いますけど、それでも最低限の優しさが欲しいというか」
「お淑やかと言う感じでは無いですね」
トモエ嬢も「失礼だが同意する」と言う体で、そう言って苦笑している。
キャット・スピンスターって名前は可愛いのに、実物は可愛げが無いと言うのは不思議なもんだ。
俺の食っているカレーに通じるモノがある。
実際はウマイのに、見た目は茶色いドロドロなのだ。
つまりウチの担任は対外的に茶色いドロドロと同レベル。
まあ実食すればカツカレーくらいの美味しさはあるかもしれないけれども、残念な事に学食のカツカレーは微妙だ。
カツとカレーで微妙になる要素などあるワケが無いと自分でも思うし、外見で言えばごく普通のカツとカレーなのだが、不思議とまずい。
400エンのカレーに50エンを追加するだけでカツがつくと言うお得感溢れるメニューなのに、一度注文した奴は絶対にリピートしないと言うのも凄い。
肉は薄いし脂身ばっかりだし、ころもがそもそも厚すぎる。それをカバーするためか調理している人間のアイディアか知らんが、そのころもにいらん隠し味まで加えているというのだから救えない。
カレーなのにすくえないと言うのは致命的ではないか。
そんなカツを追加するくらいなら、普通のカレーの方がウマイに決まっている。
最低でも茶色いドロドロを美味しくする存在であって欲しい。
別に担任をディスってる訳では無く、カレーの話だ。一応。
「せめて保険の先生くらいの優しさが欲しいっつーか」
「レウィ先生か。でもあの人も独身じゃなかったか?」
「結婚してた事はあるらしい。バツイチだな。今は悠々自適な一人暮らしってこった」
「詳しいな」
「世話になった時に世間話の延長で聞いたんだよ」
バカなマネをして怪我をした所からの縁か。
治療のついでによくそんなプライベートに踏み込んだ会話ができたな。
怖い物知らずすぎる。
「ではキャット先生が保険の先生だったらどうでしょう」
「体育会系の保健の先生か――なんか微妙だなあ。ギャップで落とすって感じスか」
「保険の先生と言う要素を足しただけではダメなんです? レウィ先生との違いがあるのかしらね」
「まあ、レウィ先生はエロいですから」
保健医がエロい学校があるんだ。
こんなに嬉しい事は無い。
「でも、あなた方はキャット先生に対しても、普段からエロいエロいと言っているのを聞きますけど」
「ウチの先生がエロいのと保健の先生がエロいのは別ですよ」
世の中には性癖と言う物がある。
同じエロと言う言葉でも、何にエロを感じるかは割と複雑だ。
仮にも令嬢相手にこの会話はどうかと思うが、相手が振ってきた話題だから仕方が無い。決して俺達の所為では無い。
「保健の先生だから結婚できた訳でも無いのですね」
「どうでしょうね。個人的には保健室に美人女医ってだけでそそるとは思いますが」
俺の所感を答えると、横のバカが反論してきた。
「俺は断然文系だね。いかにも深窓の令嬢ってイメージがあるだろ」
「そうかあ? カタブツって感じの方が強いよ。この学校の司書なんて愛想のカケラもねえぞ」
「そのカタブツが自分にだけでろでろだったらそれはそれで最高だろうが、やっぱおとなしいお嬢様の方が司書! って感じじゃねえかな。図書室での情事に興味がある」
「本棚の陰でこっそりとかか。俺も好きだが、それは教師関係ねえな?」
窓辺で日差しを浴びながら本のページとかめくってるようなイメージだろうか。
どうもコイツは発想が貧困でいけない。
肉と言えば丸焼きくらいの貧困さで、もっと色々な調理法もあるぜと忠言を与えたい(面倒なのでしない)くらいだ。
「文句がありそうだな。なら数学教師とかは」
「イメージで言うとビシッとしたスーツで髪をアップにまとめててって印象だが」
個人的にはメガネでスケベだと嬉しい。
俺にも世間体と言う物はあるので口には出せないが。
「錬金術の教師は」
「白衣にボサボサの髪、ぐるぐるメガネにケツデカ」
「じゃあ宣教師とかは」
「修道服脱いだら巨乳でスケベ下着にガーター」
「発想が貧困だねお前は」
お……俺はキレた。
「うがあああ! うがあああ!」
「何だコイツ突然発狂したぞ!」
「お静かに」
「ぐげっーー!!」
首に衝撃を受けた俺は自分でもそれは無いなと思う声をあげた。
ぐうとうげが混ざっている。
どうでも良いけど首に手刀を落としたところで気絶したりはしないので、トモエ嬢がやっている事は純粋に相手を殺そうとしているか、苦痛を与える事を目的とした行為だ。
強い。シンはこんな苦痛と戦っていたのか。
彼女の夫となる人間はこの暴力に耐えられるのだろうか? ご愁傷さまとしか言い様がない。
俺は首を揉みほぐしながら抗弁した。
「あのな、お前の方が余程貧困だよ。今どきお前の考えてるような令嬢は存在しないんだよ。目の前の令嬢を見ろよ。俺達二人を簡単に制圧できるようなお方だぞ。昨今の女性は強いから、きっとこんなのが増えるぞ」
「やめろ! やめろ! 俺はそんなのイヤだ!」
駄々っ子みたいな現実逃避を始めてしまった。
「こんなので申し訳ないですが、将来的には強い女性も求められるようになると。そう言う事でしょうかね」
トモエ嬢の、氷で作られた刃のような台詞に俺は一瞬だけ涅槃を想像したが、「そう言うことでしょうね。きっとモテます」と言葉を返すとその殺気は霧散した。
が、シンは話を止めてくれない。
「でも新人でおどおどした女教師が減りそうでヤダ」
何言ってっだこいつ。
「お前の好みってそう言う――」
「脅迫とかしたら体差し出してくれそうで良くない?」
言うこと聞かねえとサツにバラすぞ
や――やめてください、なんでもしますから!
ゲヘヘヘ それじゃあまずはパンティーをはかずに一日を過ごして貰おうか
そんな――生徒達にバレたら
バレちまったら? 見せつけてやれよ! お前の心意気をよお!
心意気――
パンティーなんざ必要ねえ!
みたいな奴だろうか?
想像があいまいなせいで、なんかノリが変だけど。
「良くないだろ。逮捕されても知らんぞ」
「そこは調教モノに発展すると言うことで良くなくなくない?」
「何語だよ? かわいそうは抜けねえ、と言うかそれ以上に現実味が無い。エロ本の見過ぎ」
「処女をいちから仕込むというロマンが――」
「処女って痛そうだし可哀想だからあんま好きじゃねえよ。気持ち良くなってくれた方がエロいわ。と言うかそれなら究極、教師じゃなくても良いじゃないかよ」
恐ろしく阿呆っぽい会話をしているような気がして仕方ないのだが、言葉を止めれば勢いで主張を通される。
俺は別に大人しい教師とか、気弱な教師とかにエロスを感じる事が無いので、負けたくなかった。
むしろ大人の社会人の魅力と言うことで、積極的な方が嬉しいくらいだ。
「大体さ、処女ってのは食材で言えば調理もなんもしてない素材みたいなもんだろうよ」
したり顔でそう言ってやると、トモエ嬢が反論してきた。
「東方にはライスに調理もしてない生の魚を乗せて食べる料理があるのですけど」
「だとしてもですよ、教師には普通、経験豊かに調理された大人を見る物でしょう。若い子ならともかくね、古い食材を生で食べたいと思えますかね。4、50過ぎのおネエさまが新人です、ウフフ、未経験ですけど優しくしてくださいね、とか言ってきたらキレますよ俺は」
「食材の話でしょう? 私の家には死んだ父の兄上がよく訪ねてくるのですけど、ダンディで素敵だと思いますわ」
「そう言うのは乾物と同じですよ。熟成することによって、味わいに深みが出る。それに比べて、ただ古いだけの食材は食あたりの危険性がありますぜ」
もう自分でもメシの話をしているのか性癖の話をしているのか分からなくなってきた。
一旦整理しよう。
教師――大人の女を期待しているので経験豊富でエロいと嬉しい。
処女――めんどい。
処女の教師――大人だけど未熟で未経験なのでエロくも無いしめんどい。
「つまりシンの言うような女は俺の趣味じゃない」
「バッカ、エロい処女だっているぞ。存在自体がエロい、みたいな」
確かにいる事はいるだろうが、少なくとも俺はお目にかかった事が無い。
「どこにいんだよ」
「それこそウチの担任じゃねえ?」
「あの人処女だったのか? どこ情報だよ」
「保険医の」
「マジかよお前サイテーだな」
「俺ぇ?」
シンは心底不思議そうに首をかしげる。
ムカツク仕草だ。
「トモエ嬢も言ってやってくださいよ、サイテーだって」
「二人とも最低な会話だと思いますけど」
「ごもっとも」
鋭い。それはまるでナイフのような。
シンはシンで、
「こいつは一本とられたな」
などとヘラヘラしている。
俺もヘラヘラしながらカレーをすくおうとすると、突然そのカレーが目の前から消えた。
否、カレーが消えたのでは無い。
俺の体が真横に吹っ飛んだのだ。視界が凄い勢いで流れたのと、アバラが軋みをあげているのがその証拠だ。
倒れ込んだ俺が何者の仕業かを確認――するまでもないわな。
そりゃ、先生がやったに決まってる。
「――てめえらなあ、こんな場所で人が処女だのなんだのと」
「いやあ先生、今日も美人っすねぇ」
「うるせえ! てめえら今から終業まで戦闘訓練だクソガキ。実戦形式でな」
終業までだから、居残り女教師と生徒シチュにならないところが絶妙にイヤだ。
放課後の学び舎に二人きりで教室とか用具室とか準備室なら、もうちょい歓迎できるのだが。
「午後の授業は」
「自習だよ。お前ら二人以外は。そう決めたんだ」
断固たるケツイを感じる。いや――
「二人?」
俺の隣ではシンが悶絶しているが、トモエ嬢の姿は無い。
どこへ消えたのかと探してみると、テーブルの下で気配を殺している。
それが令嬢のやる事かよ!
「トモエ嬢! 助けて! 先生が結婚できない理由は分かりましたかトモエ嬢! 話を広げたトモエ嬢!」
恥も外聞も無い道連れだが知ったことでは無い。
それが男のやる事かよ! と言う声がそこら辺の奴から聞こえるが、彼女を巻き込むだけで負担を二等分から三等分にできるのだ。
実行しない手は無い。
「トモエ・オットーも共犯か」
視線を受けたトモエ嬢がテーブルの下からやれやれと言った風情で姿を表す。
強キャラのムーブですわ。
「いやですわ先生。わたくし、先生が結婚できないのが不思議だと常々思っておりまして」
「ほう。お前、私とやる気か?」
ぎしり、と空気が歪み、さすがのトモエ嬢も冷や汗を流している。
「いえね、よろしかったら我がオットー家でめぼしい男性を紹介して差し上げられないかと」
かーっ! これだから偉い人は! 権力とか人材とかが余ってる人は!
俺はと言えば紹介できる男などいない。
隣で悶絶している男は先日フラれたばかりだ。
「お――」
「お?」
「俺と結婚するというのは」
「てめえ! 自分を差し出しても助かるつもりか!」
「フラれた奴は黙ってろ! ねえ先生! 意外と尽くすタイプですよ俺は!」
何も了承をもらえるなどと自惚れちゃいない。
要はこの場を切り抜けられれば何でも良いのだ。
怒りを通り越して呆れまでいけばベスト――
「ゾークエロイスよりはマシだが――こいつも性格に難があるのがなぁ――うーん、惜しい、か?」
「ちょっと考えないでくださいよ。しかも結局フラれてるし、そっちのがダメージでけぇです」
「言葉が変だぞお前。私を落としたければ働かずに遊んで暮らせる程度の財産くらいは持ってこい」
「俗物すぎやしませんか。容姿は?」
「もうある程度までは許容範囲だよな。禿げててもデブでも構わねえし。不潔なのはイヤだけどよ」
「外見に関しては意外と切羽詰まった答えっすね」
じゃあなぜシンはフラれたのだろうか?
「なんとなく好みじゃ無ぇんだ」
これはキツい。
シンプルであるが故にキツい。
外見とか性格云々ではなく、なんとなくと来た。
感性の領域だ。
これは生理的にダメだと言われたも同然。
「う、ううう……」
どっかの作家独特のうめきみたいな声でシンが落ち込んでいる。
そりゃそうだ。
だが、おかげでお仕置きも有耶無耶にできそうだ。
「ま、フラれちまった以上は仕方ないっすね。それじゃ次の授業の準備がありますんで、へへへ、あっしはこれにて――」
「まあ待てよ」
肩にみしりと音を立て、先生の指がめり込んだ。力強すぎ。
「結婚相手は良いとして、私の名誉を傷つけた分はどうやって払う気だ?」
「名誉を傷つけたお詫びに結婚を申し込もうと――」
「罪は愛で購えるのか? それとこれとは別問題だよな」
この先生脳筋っぽいけど冷静!
「やだやだ! 長時間の実戦訓練なんてやだああああ!!」
「乙女みてえな悲鳴あげやがって。オットー、手伝え。コイツを拘束すればてめえはお咎め無しだ」
「おまかせください」
「当然男も紹介してもらう。それとこれとは別だからな」
「――おまかせください」
しかもちょっと欲張り!
◆
後日、トモエ嬢に聞いてみた。
「先生に紹介した男は上手く行ったんですか」
「一度デートをしてみる事になったのですけど」
ワーオ。
「で、どうなりました」
「先生が焼肉店でディナーでもとお誘いしたところ、男性はベジタリアンだったそうで」
――わーお。
初デートの食事で焼肉を提案する先生も凄い。
「さすがに生活習慣が違いすぎるのはちょっと、と」
「――そらま、そうですわな」
性癖や外見以外でも、妥協できない事は色々あるらしい。
俺も気をつけよう。(他人事)
「ちなみに、その男性を紹介したのばわざとですか?」
「もちろん。合わないだろうと言う人を選びました。このわたくしに一瞬でも恐怖を与えた報復はいたしませんと。成立しても祝福するつもりではいましたけれども」
「こわい」
マジなのかジョークなのか分からない。
俺も気をつけよう。(恐怖)
エロ教師
なんと夢のある単語だろうか