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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔ガールズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

異世界にチート転生して成り上がったら日本が来た件について|《短編版》

作者: たろっぺ

小説家になろうで連載させていただいている『異世界にチート転生して成り上がったら日本が来た件について』の短編版です。

よろしくお願いします。




 森の中を駆ける。地面ではなく、背の高い木々を足場にして、ひたすら走る。


『こちら佐竹!対象は未だ前進中!抑えきれません!』

『ラムの支援を要請します!このままじゃ突破されます!』

『携行武器じゃどうにもならねえよ!』


 骨伝導スピーカーから悲鳴じみた声が響いてくる。


『こちら司令部、ラムを送る事は出来ない!』

『そんな!』

『だめだ、もう距離が!』

『安心しろ、フェアリーワンが向かっている』


 木々を抜けて、開けた場所に出る。

 そこでは、巨大な蜥蜴に似た化け物と自衛隊が戦っていた。

 巨大な蜥蜴は全身を深緑色の鱗で覆い、口の端から火の粉を散らしている。

 自衛隊も小銃で顔面にひたすら銃弾を当てているのだが、碌にダメージを与えられていない。


「全員、下がって!」


 声を張り上げながら両者の間に割って入る。背中に何発か当たったが、問題ない。身にまとった魔力の装甲が全て弾いた。


「撃ち方止めぇ!」

「フェアリーワン!?」


 背中から聞こえる声を無視して、腰から引き抜いた剣を構えて巨大蜥蜴、いや『グリーンサラマンダー』を睨みつける。

 奴も一目でこちらを脅威と判断したのか、自衛隊から視線を外してこちらを睨みつける。


「今のうちに負傷者を連れて後退!」


 自衛隊の声を合図として、一気に駆ける。

 一歩目で時速百キロを軽く超え、二歩目でその倍に。グリーンサラマンダーの懐に飛び込んで右の前脚に切りかかる。

 一息に五度、斬撃を浴びせる。ミスリルの剣を魔力で強化した物だ。バターを熱したナイフで切るように鱗を裂いてみせた。

 だが刃渡りが足りない。僅かに骨が見えるが、それだけだ。


「GYEEEEEEEEE――――!」


 グリーンサラマンダーが咆哮と共に暴れる。

 それを跳び退って回避しながら、奴の魔力の流れを観察する。

 負傷した右前脚。それとは別に後ろの両足に魔力が集まる。次の瞬間、巨大な咢を開いたグリーンサラマンダーが突っ込んできた。

 それを跳び上がって回避すると、振り回される尻尾が目の前に来る。こちらが本命だったか。

 しかし、それも回避する。たとえ空中でも、『魔力を足場にすれば』どうという事はない。

 こちらが着地すると同時に、グリーンサラマンダーが振り向きざまに右の前脚を叩きつけてくる。既に傷は再生し、跡すら残っていない。

 そこから始まる連撃の数々。左右の前脚が振るわれる度に地面が爆ぜ、石礫が飛び散る。時折、あえて地面を殴りつけて岩の塊さえ投げてくる。

 それを紙一重で避けていると、喉に魔力が集まるのを感知する。


「GYEEEEEEEEE!」


 巨大な口から、大量の炎が放たれる。火葬場に匹敵する高温だ、直撃すればただでは済まない。

 周囲の木々も使って走りまわる。ウェイト差があり過ぎて正面からの殴り合いは不利だ。

 だが、長期戦もできない。森に火が燃え移ってはたまらない。攻勢に出る。

 木の幹を蹴りつけて斬りかかり、奴の左前脚に傷をつける。

 そのまま反対側の木を蹴りつけて方向転換。次は腹を斬りつける。

 腹、足、頭、足、腹、足、足、腹、頭、腹、次々と斬りつけながら、跳びまわる。


「GYEEEEEEEEE――――ッ!」


 苦悶の声を上げながら、グリーンサラマンダーは周囲の木々を尻尾で薙ぎ払った。こちらがそれを使って加速と方向転換をしていたからだろう。


 だが、その瞬間隙が出来た。


 低い姿勢で尻尾の横薙ぎをやり過ごし、両足に魔力を集中。一気に爆発させる。

 人間砲弾となって得た加速に、全身が軋むが無視する。

 そのまま体ごと回転させて奴の顔面を削ぐ。鱗と肉片が散らばり、グリーンサラマンダーが絶叫を上げた。

 だが、それでも奴は龍種であり、おそらくここ一帯の主でもあったのだろう。痛みに動きを止めることなく、空中に身を投げ出したこちらに狙いを定め、ブレスを吐こうとする。

 今が好機と思ったのだろう。先ほどまでより集まる魔力が多い。

 だが、好機なのはこちらとて同じこと。この位置なら『射線上』に何もない。


「『魔剣・解放』」


 両手で握る剣に、魔力を大量に流し込む。

 紫色に光り輝く魔剣が、奴の目を潰す。暴れだしそうな刀身を力づくで抑えつけ、振りかぶる。


「『龍光一閃』《カラミティ》!」


 振りぬいた剣の軌跡に沿って、溜め込まれた魔力が一息に解放される。

 魔力の斬撃、否、砲撃がグリーンサラマンダーのブレスをかき消して、頭どころか上半身を飲み込み地面にぶつかって暴風を起こし大地を削る。

 光の奔流が収まった頃には、周囲の木々がへし折れ、直径五十メートル近いクレーターとグリーンサラマンダーの下半身だけが残った。

 地面にゆったりと着地して、骨伝導スピーカーに呼びかける。


「こちらフェアリーワン、対象の撃破を確認しました」

『了解。周囲の警戒を頼む』

「了解」


 どうでもいいけど、フェアリーワンってコードネームは勘弁してほしい。なんだよ妖精って。


 異世界転生して十五年。まさかこんな事になろうとは。


*    *     *


 二〇二一年九月、日本が異世界に転移した、……らしい。

 何の脈絡もない転移によって、日本は混乱の渦に叩き込まれた。

 まず海流の変化により、海に近い大きな河川は氾濫、あるいは逆流する事により周辺地域が大きな被害を受けた。

 その上衛星との通信が途絶。世界各国との連絡も取れない。何が起きているのかもわからず、とにかく被災現場への支援が行われる事となった。

 それからすぐに日本は国際チャンネルを開いた状態の自衛隊機を飛ばして、周辺の状況を確認しようとしたのだ。

 自衛隊機から持ち帰られた映像は、彼らの予想とはかけ離れた物だった。

 本来ユーラシア大陸がある方向には何もなく、逆に海が広がっているはずの太平洋側に謎の大陸が存在していた。

 しかも、その大陸側の映像には中世と思しき街並みが広がっており、都市部を撮影しても発電施設一つ見つからなかった。

 更に奥の方の映像を撮りに行ったところ、とんでもない生物に襲われたのだ。


 そう、ドラゴンである。


 自衛隊機はすぐさま引き返し難を逃れたが、その映像は国会に衝撃を与えた。

 未曾有の事態に誰もが混乱し、的外れな予想を言い合う中、一人の議員が口にした。


『異世界に転移してしまった?』


 普段なら一笑に付される言葉だが、今回ばかりは誰も否定できなかった。

 その段階で国内は国外との通信が一切できない事にパニックとなっており、特に投資関係は大打撃を受けていた。

 転移から一週間が過ぎて、ようやく政府は謎の大陸にいる国家らしき存在へと自衛隊の船を出した。それまでも通信を試みるなどしていたのだが、全て徒労に終わっている。


 異世界側は突然現れた鋼鉄の船に当然警戒し、帆船によって捕縛を試みた。

 自衛隊側も船が見えた段階でモールス信号や手旗信号などで話せないか試みたが、当然伝わらない。


 ここでとんでもないすれ違いが起きてしまう。


 自衛隊の船を臨検しようとした異世界側の船、帝国軍と言葉が通じないために諍いが発生し、自衛官三名が切り殺され、正当防衛として自衛隊の攻撃で帝国兵二十三名が死傷した。

 自衛隊の船はすぐさま撤退。帝国側も追いかけたが、性能差で背中を追う事すらできなかった。

 それでも自衛隊が来た方向はわかる。帝国軍は港に着くなり早馬を送り、この事態を報告した。

 一方自衛隊側もすぐさま報告を行ったのだが、この最悪のファーストコンタクトに野党とマスコミが反応。自衛隊の責任として国会は荒れに荒れたし、情報は錯綜した。

 日本側が対応に困っている間に帝国は海軍を動かし、偵察として船を数隻送り込んできた。

 海上保安庁の巡視艇がその船を止めようとしたが、接近した段階で大砲を撃たれた。そのうちの一発が直撃し巡視艇はこのままでは危険と判断。応援を要請して数隻がかりで帝国の船を抑えようとした。

 帝国側は焦りに焦り、砲弾を撃ちまくった。焦ったのは海保側もだった。正当防衛射撃により帝国船を撃沈。多数の死者を帝国側に出しながらも乗組員の捕縛に成功した。

 これに国会はまた荒れたが、帝国兵との会話により未知の国家、大陸、世界なのだと確信する事になった。

 ただし、言語の違いと対応の遅さにより、確認が取れたのは一カ月後。

 その一カ月で国内は食料をはじめ多くの問題が山積みになっていた。

 特に困ったのが外国人の扱いである。

 彼らは観光客がほとんどで、最初はホテルなどに泊まっていても金が尽きる。政府へと支援を求めたが、日本側も十分な対応ができず、各国大使館からの突き上げをくらっていた。

 そんなこんなで混乱しながらも、外交官を帝国に送るべきとなったのだが、今度は別の問題が出た。


 未知のウイルスを心配する声だ。


 知らない世界、知らない大陸に行くのだ。どんな病気があるか分からない。そもそも見た目が同じなだけで、異世界人と日本人で同じ構造なのかもはっきりしていない。

 まず大陸に行くならそちらを調べるべきだと意見を言っている間に。帝国が攻め込んできた。


 三百隻を超える艦隊で日本の領海に侵入。当然自衛隊も出撃してのにらみ合いになった。

 日本側はあくまで話し合いでの解決を求めたが、帝国側が拒否。戦闘が始まった。

 結果は当然日本側の圧倒的勝利。だが、帝国側の一隻が、偶然にも自衛隊の包囲を外れてしまったのだ。

 その一隻は北海道に上陸すると、港町を襲撃。市民への虐殺と凌辱をし、食料を奪って逃走しようとした。

 通報にあった海上保安庁が帝国兵を捕縛したが、日本中にその一件は知れ渡った。

 国内で反帝国の空気が流れる中、日本政府は頭を抱えた。


 このままでは日本国内の食料も燃料も尽きる。


 元々日本は外国からの輸入に頼っていた場面が多い。こうなる事は分かっていたのだが、食料の配給制等の行動に移すことは出来なかった。

 国内でも問題だらけなのに国外にも問題がある。とにかく帝国と話をつけるべきだとなったが、どうしたものかと迷った。

 そこで、帝国の隣にある国へと使者を送り、仲介を頼むことにしたのだ。


*    *      *


 と、ここまでが自分が聞いた話だ。


 自分が関わったのはここから。自衛隊の船が帝国のお隣さん、王国に向かっていたところ、一つの影を見つけた。

 そう、空を飛んで自衛隊の船に直進していた自分である。

 自衛隊の戦闘機が大陸の上を飛んでいたのを目撃してから、もしやと思って情報を集めていたのだ。そしたら、日の丸を掲げた船が帝国とやりやったという噂が流れてきたのだ。

 居ても立っても居られなくて、海沿いに行ってみたら、調度自衛隊の船が見えたのだ。

 それからはもう魔法を使って船に近づいて、


「こんにちは!日本人です!」


 と叫んでいた。

 向こうもかなり驚いたようだが、意外に動きは早く五分ほどで防護服を着た自衛官が出てきた。

 それから自衛隊に自己紹介をする事になったのだが、


「転生者です。気づいたらこの世界に転生していました」

「なんて?」


 となっていたところに、王国側の船がやってきたのだ。

 ここで自衛隊は困った。王国と帝国で言葉が全然違ったのである。


「えっと、通訳をお願いできないかな?」

「いいですよ?」


 という感じで自分が通訳に立った。

 これに驚いたのは王国側である。


「ま、魔獣狩り!?なんでこんな所に!?」


 そう、実は自分、転生した時のチートで魔獣を倒しまくったり要人を警護したり、はたまた他国との戦争で暴れたり色々やって冒険者としてかなり成り上がっていたのだ。それこそ高位貴族とも話せるぐらい。

 とりあえず久々に日本語で喋れた事でテンションが上がりに上がっていた。なんせもしかしたら前世の家族に会えるかもしれないからだ。

 そんなわけでコネをフル活用して自衛隊に『ワタシ、日本人ヨ。オヤクニタテルヨ。ダカラ家族二合ワセテネ』と媚びを売りまくった。


 そのかいもあって、王国と日本との会合は割とスムーズにいったのだった。

 だが、またここで問題が。先ほど他国との戦争で暴れたといったが、それは王国対帝国だったのだ。つまり、王国も帝国と仲が悪い。

 というわけで帝国と日本の仲介とか無理である。

 そうこうしているうちにまた日本と帝国で戦闘が勃発。それにこっそり横やりを入れたりしながら様子を見ていたら、日本が今大変な事になっているのを知った。

 これ両親大丈夫かな?となり、今までの借りを返せという事で日本に上陸。色々検査された後家族と対面した。

 まあ、泣いた。両親も自分も大いに泣いて、そして喜んだ。

 その後も両親と文通しつつ、日本から相談を受けた。


『食料の輸出とかできない?』


 その要求量に対し、王国は即答で、


『無理に決まってんだろ』


 となった。 

 王国は豊かな国なのだが、技術力も人口も桁違いである。日本が求める量の輸出など出来るはずもない。

 じゃあどうするとなった時、日本から『上空から撮影した時、未開の地?みたいなとこあったんだけど、開拓して自分の土地にしていい?』っと打診があったのだ。

 それに対し、王国、まさかの『OK』。というのも、その未開の地、おもっくそ魔獣が出てきて王国への被害がヤバい所だからだ。

 だけど王国もただで開拓させる気はなく、自分に色々日本の情報を求めてきたり、日本は日本で銃弾の一発も余裕ないしこっちの事なんもわからないから『手伝って?お給料だすから』と言ってきたりと、多忙な日々を送る事になった。

 まあ、王国は好きだし、日本にも愛着がありますから頑張りますか。


「え、新しい国と国交が?どういう事?」


 ちょっと仕事を投げ出したいときもあります。





読んでいただきありがとうございます。

連載版の方では主人公の転生者が転生した所から始まります。成り上がる過程も書いているので、日本が出てくるまで長いです。それでもよろしければ、ご覧になって頂けると幸いです。


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