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オフィーリアの夢1
――またいつもの夢だ。
オフィーリアはファゴットを携えて、ひとりステージに立っている。後ろにはグランドピアノがあるが伴奏者はいない。
それでもオフィーリアが身体を動かし、スタートの合図を送ることで演奏が始まる。
観客席にはオフィーリアと同じ銀の髪と銀の瞳を持つ者だけが座って、じっとこちらを見つめている。
パターンは違えど、悪夢には必ずもうひとりの自分が出てくる。そしてそれは殆どが明晰夢だった。
次第に気分が悪くなって額に脂汗が浮かぶ。指がうまく回らない。テンポが乱れ、普段しないようなミスを連発してしまう。まるで金縛りにあったような感覚。
それでも客席からの視線が重圧をかけてくる。わたしはこのまま、もうひとりの自分のために死ぬまでここで演奏を続けなければいけないのだろうか。
オフィーリアは譜面に落としていた目線を客席に向けた。苦しみ、朦朧とする意識の中、必死にファゴットを吹き続ける自分を、自分が何故か羨ましそうに見つめている。