素直な彼女は、間違わない!!
推理要素? ベガスにバカンスに行ってるよ。
現在、連載中の小説を完結まで書き上げ、予約投稿終了待ち。
次回作を書き始める前の、肩慣らし的なものです。
自称・何処にでも居る、全てにおいて凡人の域を出ない、平凡な大学生である俺。
世間では、どんな難事件も解決する名探偵と呼ばれ、過大評価を受けている。
「思い悩む横顔も素敵だ!! 好きだ!!!」
人よりも優れているところ、勝っているところは、異常なまでにトラブルに巻き込まれる才能、不運のようなものが有ることだけだ。
昔から、探す羽目になった猫や迷子、落とし物を見事に、相棒と共に探し当てたせいだ。
「私を無視するクールな所も好きだ!! 愛してる!!!」
その世間からの過大な評価は、全てが俺の相棒に向けられるべきものなのだが、俺に集中してしまったせいで、今では名探偵として呼ばれてしまっている。
今だって、大学の講義中に毒殺された学友を殺した犯人を捜す羽目になっている……。
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春も半ばを過ぎ、初夏が見え始めた昨今。
熱くなってきたことで大学の講義中に、頻繁に水分補給をする学生が珍しくなくなった頃に、一人の女学生が講義中に意識を失った。
救急隊に搬送され、騒然とする中、講義は中止とされて解散しようとした矢先に舞い込む発言。
「何故、教授は平然としているのですか? 何故、警察の方に手錠を掛けられて連れて行かれないのですか? 殺人犯なのに……」
講義を受けていた学生達に軽い事情聴取と、女学生の間近に居た数人の学生達、教授を正式な調書作成のために連れて行こうとした警察の方に発せられた良く通る大声。
「何を根拠に、そのような侮辱を!!? 非常に心外だ!! 誰だね!? 名前と学年と学部を答えなさい!!!」
「経済学部1年。夏野・彼方です! 根拠は……分かりません! 私が、そう思ったからです!!!」
突然の告発を受け、怒り心頭の教授に正直に素性を答える俺の幼馴染のカナタ。
そして、正直に根拠も、証拠も無しの発言だと答える。
「そのように軽々に発言する学生など! 退学処分に! 最低でも私の単位は取れないと思いなさい!!!」
至極真っ当な思考回路で、カナタを叱責するが聞き捨てならない。
「教授。カナタは間違いません。カナタが、そう言うなら、犯人は貴方だ。俺が、それを証明します!」
「おおお!! 私の為に、なんて素敵なんだ!! 大好きだ!!!」
戯言を聞き流しながら証拠を、根拠を、推理をするために思考の海に埋没する。
名探偵としての俺の名声のおかげで、周囲の学生達も、警察の方々ですら協力的で、今か今かと俺の推理が終わるのを待つ程だ。
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「彼女が悪いんだ……。私には、妻と子が居るのに……。子供が、出来た、産みたいと……」
俺の推理により、観念した犯人の独白が続くが、興味が無い。
”虫の知らせ”、”バタフライ・エフェクト”という言葉を知っているだろうか。
地球の裏側に居る蝶の羽ばたきが、その裏側では竜巻になるといった影響が出るかもしれない可能性の理論”バタフライ・エフェクト”。
理由は分からないが、なぜだか予感や予兆を感じて、その通りのことが起きる現象の名称”虫の知らせ”
かの有名な数学者”アインシュタイン”の逸話を、御存じだろうか。
ある数式の答えだけが思い付き、その途中の解法を後から考えたことが有るそうだ。
「流石は! 私の生涯の伴侶だ!! 今回も実にスマートな推理! 惚れ直したぞ!!!」
子供の頃から、カナタの答えを証明するだけの毎日。
素直で、純粋で、本能的なカナタは、本人でも気づいていない周囲の状況、証拠などから無意識に正解を導き出す。
生活の中で見かける猫達の行動から、迷子になった子供の性格や特徴から、落とし主の性格や普段の行動なんかから思いつく。
今回の事件も、被害者が運ばれるまでは生きていたのに、教授のことを殺人犯と言ったのも、そうだ。
推理小説や漫画で、あらかじめ犯人だけ分かっている状態と同じだ。
どんな難解なトリックだろうと、アリバイだろうと、カナタが思ったのなら、そこに証拠は、根拠は有るのだ。
通常では、非常に失礼で傲慢なことだが、答えから解法すれば誰でも解けるはずなのだ。
それが出来ない推理物は、”推理”とは言えない。
読者に最低限の情報も与えずに、推理パートで新情報を出してくるようなものだ。
今日も、カナタの正しさを証明する……。
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カナタと警察で調書を終え、夕焼けに染まる道を歩く。
「ありがとう。私の為に、ありがとう」
たまに見せる、しおらしい様子にドキリとしつつ、またマスコミだの世間が五月蝿くなるなと思うと帰る足が重くなる。
素直で、純粋で、善意と正義の塊のようなカナタのフォローを、努力をし続けてきた。
「やはり! 私の目に狂いは無かった!! 結婚しよう!!!」
この最大級の間違いを、間違いではないことを証明するために精進し続ける……。
トリックなんか思いつきもしないので、間違っても連載をすることは有りません。