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10.幼少期 見習い編3

 翌朝からさっそく仕事が始まった。

 ぼくの仕事はレイルズ商会に人が来たら、まずあいさつをして、奥の人(ハレマ)を呼びに行く事。


 先輩ハレマはぼくが表にいることで奥での作業に集中でき、また表にはぼくがいることで商機を逃さないという構えだ。


 レイルズ商会はお店の前に常に人を置ける程の余裕あったかどうかは疑問だが、最初のぼくが提示した雇用条件が無料だったので、「雇わない方が損だ」ときっと思ってくれたはず。


 しかし、食事付きで住み込みはさせてくれるし塾代も出してくれるという。

 これは予定外だ……逆にすこしばかりアピールし過ぎだっただろうか。

 実力以上の事を期待させてしまったかもしれない。

 役に立つかは分からないが、できる限りはお役に立れるよう頑張らないといけない。


 もちろん、今生は無理はしたくない。

 ブラックにならない範囲で、商人ギルド入りを目指して、程々にがんばるぞ!



 ◇ ◆ ◇



 あれから、あっという間に3ヶ月が過ぎた。

 判定の儀の日の6月から3ヶ月経ったので、今は9月だ。


(ちなみに通っている街塾で教えてもらったのだが、この国? この世界? では、1年は13ヶ月という事が分かった。1ヶ月は25日という事なので、1年は25日×13ヶ月=325日なのだろうか……)


 この3ヶ月でぼくの仕事ぶりもだいぶ成長しましたよ。


 ぼくの最近の1日を紹介します。

 まずは目次から……。



 ~見習いロアンの1日(目次)~


 ・1の鐘(午前6時)起床。


 ・2の鐘(午前7時半)朝ごはん。


 ・3の鐘(午前9時)店開き。


 ・6の鐘(午後1時半)就業時間終了。塾へ。


 ・8の鐘(午後4時半)宿舎に帰宅。


 ・9の鐘(午後6時)夕ご飯&鍛錬。




 こんな感じです。

 では、本編はじまりはじまり……。




 ~見習いロアンのある1日(前編)~



 1の鐘(午前6時)と共に起床。

 前世では朝はとても弱かったのに、この身体はとても目覚めが良い。


 まだ誰も動いていない中、顔を洗って小剣と小楯の鍛練。

 そのまま汗をかいた服を洗って商会と宿舎内側にある中庭に干す。

 身体を水と布で拭き、用意していた替えの服を着る。



 2の鐘(午前7時半)で朝ごはん。


 他の住み込みの従業員といっしょに朝ごはんを食べる。

 朝ご飯はパンと水とチーズ。

 チーズの替わりに果物の場合もある。

 母ロシュのおかゆが美味しい可能性あり!



 3の鐘の少し前からお店の前を掃き始める。

 ぼくは3の鐘がなる前にお店の前に水を撒き、手作りの箒で掃く。

 そうすることで、お店の前の砂ぼこりがかなり抑えられるのだ。



 ぼくがお店の前を掃いていると、まだ開店前だというのに3人連れに声を掛けられる。


「朝早くからご苦労だな」

「ステランさん、ドラガンさん、ファラさん。おはようございます」


 旅商人ステランさんのご一行です。


 旅商人のステランさんは街と村々の流通を支える商人さんの内の1人、という事らしい。

 うちのレイルズ商会から物品を仕入れ、逆に卸しもする。

 護衛を2人付けているが自身も腰に小ぶりの直剣を下げていて、ある程度使えるらしい。

 頭が若干寂しく、恰幅の良い、おおらかな笑顔が話し相手を和ませるいい感じの人だ。


 ステランさん、ドラガンさん、ファラさんはまだ駆け出しとの事だ。

 ステランさん25才(髪の毛薄いけど!)、ドラガンさんとファラさんは15才の新成人。

 ステランさんが25才になった事を機に、それまで所属していた商会から独立してフリーになったらしい。

 そして、冒険者ギルドで仕事を探していたドラガンさんとファラさんのコンビを雇ったいう。


 なんと、ドラガンさんとファラさんは剣術系の先天スキル持ちということだ。

 そんじょそこらの盗賊では相手にもならないらしい。



 3の鐘(午前9時)で店開き。


 ステランさんが来店された事を奥で品出しをしている先輩ハレマに教える。


 ステランさんとハレマが商談をしている間、ぼくが何をしているかというと、護衛のお2人とのおしゃべりというか、情報交換だ。


 護衛の内の1人、ガタイが良いドラガンさん。

 最初は無視されていたけど、今ではステランさんが商談をしている間に結構話せる間柄になった。

 ドラガンさんは『剣盾流(剣と盾を使う流派)』『一本流(剣を一本のみ使う流派) 竜巻下段派』『水盾術』を習得している事を教えてもらっている

 なかなか複雑そうに聞こえるが、要はいろいろ学んで自分流に組み上げるのがスタンダードという事だ。


 もう1人の護衛、カッコいい美人のファラさん。

 髪は赤茶色のボブカットで、なんといっても巨乳だ。

 胸のところが大きく開いているので、少々目のやり場に困る……。


 ファラさんの口ぐせは「剣で私に勝ったら好きにして良い」だ。

 なんでぼくにまで言ってくるんだろう……ぼく、まだ5才なんですけど。

 ファラさんは『剣盾流』『一本流 水面中段派』『水盾術』だ。

 一本流の○○派のところだけ、ドラガンさんと違う。



 この2人の護衛コンビには色々、武術系の情報を教えてもらって重宝している。


「旅の護衛は水盾術と下段か中段の組み合わせが多いね」

「迷宮組は雷上段派が多いね」

「私たちは(武術系の)先天スキル持ちさ」

「私たちは強いよ」

「盗賊には滅多に(武術系の)先天スキル持ちはいない」



 まあ、ほとんどファラさんが口を開いて、ドラガンさんは隣で頷いている役だけど。

 そんなおしゃべりという名の情報交換をお店の前でしているとステランさんが用事を終えて出てきた。

 今日の商談も無事に終わったようだ。



 逆にぼくはふたりに「○○の屋台の肉串が美味しいよ」「○○の屋台のスープは味が落ちたよ」という屋台情報を教えている。



 ステランさんはレイルズ商会から、草鞋、旅道具、食料などの自分達の旅に必要な物と、塩、石鹸、服などの旅先で売る物の両方を仕入れている。

 そして、自分たちはレイルズ商会に近隣の村で仕入れた鉱石や工芸品を卸しているようだ。


 ステランさんから聞いたのだが、野菜や果物などの日持ちがしない商品はあまり扱わないようにしているらしい。

 また、仕入れたとしてもレイルズ商会は買い取らないので、その時は屋台や売店などに直接に卸す様にしているらしい。

 ただし、高級で持ちのいい野菜と果物を仕入れた場合にははレイルズ商会に卸すとのこと。


 仕入れた商品等を3頭のロバ(みたいな生き物)に積み、3人が去っていく。

 ファラさんは結構振り返りながら手を振っているので、こちらも笑顔で振り返した。



 ◇ ◆ ◇



 4の鐘(午前10時半)が鳴って、少ししてまたお客がやってきた。


 ぼくがお店の商品の展示棚を触っているところに、ふらっとやってきたのはモゾー商会の手代のファロスさん。

 モゾー商会ということは、天使ボイスのジョアンとこの人ですね。

 ちなみに、モゾー商会は大商会ということだ。

 天使ボイス君、かなりいい坊っちゃんでした……。



 ファロスさんはちょっと痩せて背の高い(約175センチ程度)白金髪プラチナヘアの男だ。

 少し頬骨が出て三白眼だが、美青年(イケメン)の範疇に入れてもいいだろう。


 おそらく富裕層相手の商売をしているのだろう。

 いつも転売用の農作物、工芸品、鉱石などを仕入れている様子だ。


 実はファロス、ぼくとジョアンの縁でレイルズ商会を利用するようになったのだ。

 会長と番頭は大喜びで、ぼくに買い食いが出来るくらいの現金が支給される事になった。

 うーん、素直に喜んでいいのだろうか。

 ちょっと上手く行きすぎでコワい。



 ファロスさんは何かとぼくに話しかけてくる。


「こっちの鉱石とこっちの鉱石、どっちが値打ちがあると思う」

「キミが子ども用の草鞋の作者って本当かい」

「この工芸品、貴族にどうやって売ったらいいと思う」

「ミカラをキミだったら、どんな付加価値を付けて売るかい」

「うちのジョアンぼっちゃんの事どう思う」


 ぼくは必死に5さいが考えたらしい答えを答える。

 ファラさんとの会話と違って、こっちが情報を抜かれているようなそんな感じがして冷や汗が出る。

 ――冷や汗を流す5さい児ってどうなの……。



 そして、いつもファロスさんは大量に買い付けして、帰っていく。

 もちろん、買い付けられた商品は後でモゾー商会に先輩ハレマ達が届ける。

 レイルズ兄弟はウハウハ言っている。


 ――えっ、現金支給を上げるですって?

 い、いらないっす!

 現金コワイ!



 ◇ ◆ ◇



 5の鐘(正午)と同時に、馬に乗ったお客さんが来た。


 この世界にも馬は存在するようだ。


 ぼくが前世でいうポップを書いていたところ、さっそうと馬から降りたこの人はリュシン商会のロップさんという。

 なにやら、リュシン商会というのはリュシン公爵という貴族家の持ち物らしく、ロップさん自身は貴族ではないけど貴族家の従者という、とても高い地位を持っているらしい。

 ちなみに、この人は会長か番頭がいる時を見計らって来店する。


 ロップさんが来たら、ぼくはまず馬を商会の外壁に備えられた馬つなぎ用のリングに繋ぎ、ロップさんをお店の中の商談スペースまで案内し、会長か番頭を呼び、ロップさんに飲み物を出す。


 そして、会長か番頭が出てくるまでロップさんの話相手になる。



 ロップさんと話すのは、初めはとても緊張しました。

 でも、ロップさんの口調がとても柔らかいので、打ち解けるのは結構早かったですね。

 ロップさんが聞いてくるのは、ノン村の暮らしぶりや、ぼくが塾でどんな勉強をしているのか、といった『庶民の暮らしぶり』に強い興味を持っているようだ。


 今日は会長が居たので、会長がロップさんの相手をしています。

 こっちは会長なのに、明らかに会長がロップさんを立てているので、商会としてかなり向こうの格が上なんだと思います。



 ロップさんが帰り際に「商品をロアンに届けてもらうように頼んだから、今度うちに遊びに来てよ」と言ってきた。

 こんな貧民の子どもが行っても大丈夫な家なんでしょうか?

 ドキドキ。


(後半につづく)





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