1.古代から中世へ
A.D.=紀元後
B.C.=紀元前
c=世紀
の意味で今後も使用します。
なお、今後A.D.を付けずに表記したc(世紀)の記号も紀元後を意味しますのでご注意ください。
そもそも中世とは、いつからいつまでを指すのでしょうか。
この質問に答えるのは、非常に難しいのです。
中世という言葉を明確に定義するならば、「古代と近代の間」ということです。
近代の話はまた別の機会にするとして、今回は古代の話を軽くおさらいし、中世の話のための伏線としておきましょう。
ヨーロッパの古代と言えば、ローマ。伝説ではB.C.8cから存在し、共和政から帝政を経て、最大領土はヨーロッパのほぼ全域にわたった国です。
イタリアのローマを首都とし(のちにコンスタンティノープル=現在のインスタンブルへ遷都)、地中海全域を支配していました。
A.D.4c、テオドシウス帝の没後東西に分裂し、476年にはゲルマン人(原住地はバルト海沿岸地域ですが、B.C.1cには南に勢力を伸ばしてローマと接していました)の侵入により西ローマ帝国が滅亡。
東ローマ帝国はコンスタンティノープルを首都として、ビザンツ帝国と呼ばれました。ローマは西ローマ帝国の首都ですから、「東ローマ帝国」と国名に「ローマ」を入れるのはおかしい、と思った研究者がいたのでしょう。コンスタンティノープルの中心にかつて存在した都市、ビュザンティオンから名前を借りてビザンツ帝国と名付けました。この国は、のち1453年にトルコ人のオスマン帝国に滅ぼされるまで生きながらえます。
一方の西ローマ帝国は、大量のゲルマン人の侵入により、跡形もなくゲルマン人の国になってしまいました。
(ゲルマン人の国になったと言っても、ゲルマン人が支配していたというだけで、住んでいた人のほとんどはローマ時代からいた人たちでしたので誤解しないでください。これはのちにすこし重要になってくる事実です。)
西ヨーロッパには多数のゲルマン系諸部族が入り乱れ、多くの国を建国しましたが、そのほとんどは短命に終わりました。(ゲルマン人国家の話はまた別の節でします。)
「古代」は西ローマ帝国の滅亡で終焉し、「中世」はゲルマン人の大移動によって始まった。
ちょっと語弊があるかもしれませんが、だいたいこんな認識を持ってもらえば大丈夫だと思います。
今後の章構成は以下を予定しています。
変更する場合もあります。
序章
はじめに
第1章 中世のはじまり
1.古代から中世へ
2.ゲルマン人の大移動
3.キリスト教の成立と発展
4.フランク王国
第2章 中世社会の様子
1.奴隷制・自由民社会の崩壊と第2次民族移動
2.封建制のしくみ
3.荘園制のしくみ
第3章 西ヨーロッパ世界の膨張
1.イギリスとフランス
2.神聖ローマ帝国の成立
3.ローマ=カトリック教会の発展と叙任権闘争
4.東ヨーロッパ世界と十字軍
第4章 中世社会の発展と変質
1.都市の成立
2.商業の発展
3.分裂するイタリア
4.封建社会の衰退
第5章 中世の終焉
1.百年戦争
2.ばら戦争
3.ドイツの分裂とハプスブルク家の台頭
4.北欧とイベリア半島
5.スラブ民族の動向
6.ビザンツ帝国の滅亡
7.中世から近世へ
終章
おわりに