悪役令嬢の母親は
昨日何気なく投稿したら平成最後だったので令和初日に投稿しようと眠っていた短編を掘り出してきたのです。
「ロザリー=トロー!私はお前との婚約を解消する!!」
キラキラした美少年がそう叫ぶ。それはまさに乙女ゲームの断罪シーン。しかし悪役令嬢にされている彼女の目は鋭く彼を見据えている。
美少年の周りには誰も立っていなかった。
※※※※※※
私、ベルナデッド=トローは転生者である。
それこそ生まれた時はそれなりに幸せだった前世を思い出しては泣いていた。幸い赤子が泣いても違和感はなかったので怪しまれはしなかった。
しばらくして新しい環境になれてくると、この世界が地球じゃないこと、中世ヨーロッパ風世界であること、家は貴族であることなどがわかった。まぁ、ネット小説などでよく見るザ・異世界であったのだ。悲しみから立ち直った私はこの世界のことをどんどん吸収していった。
見た目はちびでも中身はそれよりも年上で、前世の知識や経験をフルに使って成長した私は当然の如く天才児と言われた。お陰様で結婚適齢期になると縁談が殺到した。結局私は公爵家の嫡男と恋をして結ばれた。
長男長女次男の順に子供を授かり、幸せに暮らしていた。しかし、長女が六歳になる頃、私は気付いた。
この世界は前世の乙女ゲームの世界で、私の娘はその悪役令嬢ポジションであることを。
きっかけは娘のロザリーが風邪を拗らせ寝込んだこと。私が見舞いに彼女の枕元に立った時のことだった。熱にうなされながら彼女は言ったのだ。『悪役令嬢だなんて…。』と。
私はその時前世で友人がやっていた乙女ゲームの悪役令嬢の名前がロザリー=トローであったことを思い出した。そして友人の話ではロザリーは最悪だと貴族位を剥奪されて国外に追放、そのまま自害するらしい。母親として、娘に自害されるのは悲しいし、何より悪役にされるのが嫌だった。
彼女の言葉は日本語だったため、周りにいた人達にはうめき声にしか聞こえなかったようで私の他は誰も彼女の言葉には気付かなかった。
ロザリーが回復すると、私は彼女を誘って庭で二人だけのお茶会をした。娘にデレデレの旦那も参加したいと言ったが、女子会だと言って追い払った。昔から知っているメイドを一人付けて他の使用人には外れてもらった。実はこのメイド、諸事情で私が前世持ちであることを知っていた。
菓子を美味しそうに食べる娘を眺めながら私は日本語で語りかけた。『一人で抱え込み過ぎない方がいいわよ。』と。彼女は一瞬口を動かすのをとめ、その後再び咀嚼して飲み込むと私の顔をまじまじと見て『お母様の前世は日本人なの?』といった。私はそれに首肯して、彼女と話を続けた。
前世の記憶は寝込んだ時に思い出したそうだ。私はこの世界である乙女ゲームを実際にはプレイしていなかったので、前世でやり込んだという彼女の知識は有り難かった。彼女も自分が悪役令嬢になるのは嫌だとはっきり言ったので、脱悪役令嬢を目指すことを二人で確認した。
まず取り組んだのは見た目だった。彼女曰く、ゲームの中のロザリーは縦巻きロールで口紅も着るドレスも真っ赤なんだそうだ。なんだそのベタ過ぎる悪役令嬢は。聞いて思わず吹き出したら、『ありふれ過ぎてるよね?』と肩を震わせながら言っていた。彼女は私が同じ転生者と知っても代わりなく私を母親として接してくれた。嬉しかった。
今の彼女の服は淡いパステルカラーで白のレースやフリルが付いている物がほとんど。実は私の趣味だったりした。今後、派手な原色の服を選ばないように気を付ければ問題ないということになった。
急に服について相談し始めた私達を見て、旦那が「ロザリーちゃんは何を着てもかわいいのに…。」とか言っていたが私もロザリーも無視した。親バカの発言は当てにならない。ゲームのロザリーも父親の言葉を鵜呑みにしていたらしい。後でロザリーの服を選ぶ時は必ず本人か私を通すように釘を刺しておいた。余計なことにお金を使いたくないし、あっても着ないとなると職人に申し訳ない。それにほっておくとあの旦那はロザリーに着ぐるみでも着せかねない。
問題は髪型だった。生まれつき癖毛だったロザリーの髪は成長するにつれてそのうねりがたて巻きロールに形成されていった。早速ロザリーストレート計画が実行されたが全て失敗に終わった。
何人の美容師が去って行ったことか…。悪役令嬢補正は思ったよりも強かった。結局ストレートは諦めて縦巻きロールをキレイに保つことにした。そしてゲームでは髪を下ろしていたというので結い上げることで印象の改善を図った。
ほかにも交友関係を変えようとした。ここでも悪役令嬢補正のせいか、結局ロザリーのゲーム取り巻きはそのまま今のロザリーの取り巻きになった。しかし、ゲームに比べるとその関係は穏やかになっているそう。確かにみんな揃っての高笑いとかしていない。少しずつでもいいので変えていければいいのだ。
ロザリーに家庭教師を付けて勉強させて、教養を叩き込んだ。この時、息子達にも同じようにより強く勉強させた。ロザリーが私に贔屓されていると思って兄弟関係が崩れることを避けるためだった。
この頃、長男のアンドレが天才といわれる母親との差を気にして私との間に壁を作っていたことがわかった。ロザリーより二歳年上の彼はヒロインの攻略対象の一人で、その壁をヒロインが崩すことで仲を深めるらしい。ロザリーにその話を聞いてからはアンドレの様子をよく観察するようにした。そうすると確かに彼は私を避けていた。どうして今まで気付かなかったのか、ショックだった。
ある夜、初級学校での成績を受けて今後の方針を決めるからといってアンドレをサロンに呼び出した。
彼は緊張した様子だった。私は少しずつ彼と話した。私は上手い言葉は知らない。だから彼に私のアンドレに対する思いを素直にぶつけた。彼も私に思うところが多かったようで、しばらくするとどっと吐き出すように話始めた。
結局その時はお互いに本音を言い合うだけで終わった。アンドレは年の割には賢い子供だったので、その後はよく考えて行動してくれると思った。
実際、彼はその後、私とよく話してくれるようになった。何か吹っ切れたのかも知れない。そして彼の勉強の予習復習に付き合うことにした。がむしゃらに物事を叩き込むよりも頭のいい人の考え方を知った方が良いというのは私の前世の教訓の一つである。
そうやって私は徐々にアンドレとの関係を良くしていった。また、次男のマルクにもちゃんと構ってやり、関係を悪くしないようにした。
脱・悪役令嬢計画がそうやって順調に進んでいた頃、親バカ旦那が爆弾を持ってきた。メインの攻略対象、第一王子との婚約だった。悪役令嬢へのフラグが立ったようなものだ。ゲームのロザリーは婚約者であることを盾に好き放題するのである。
ある日帰ってきたら、突然「ロザリーちゃんの婚約が決まったよ~。」とニコニコ顔で言いやがったのだ。ロザリーは気を失いかけ、あまりの突拍子のなさにアンドレの顔は白くなり、マルクは「おねえさまいなくなるの?」と泣き出す始末。
状況がわからずおろおろしている旦那に一喝した。いくら貴族の政略結婚でも、こんなに簡単には決まらない。彼が言うにはどこぞの馬の骨野郎に嫁がせるよりはずっと良いと思ったらしいが、本人の望むところに行かせてやらないのかと言うと黙った。悪役令嬢補正かと思うと、怖くなった。
ヒロインの捜索もした。彼女は隠し子として十歳で子爵家に迎えられ、本妻や異母姉妹にいじめられるストーリーらしい。
ロザリーの記憶を頼りにその子爵家を探すと、すでにヒロインは子爵家にいた。忘れていた。彼女はロザリーと同い年、その時ロザリーは十一歳。ヒロインの名前はアンナといった。
子爵家のお嬢さんをロザリーのお茶会に招待する。その時にアンナも誘う。子爵家の本妻は彼女の存在を隠そうとしていたから焦っただろう。公爵家の情報収集能力なめんなよ。これでアンナが子爵家との繋がりを隠してゲームの舞台となる学園で過ごすことはなくなるはずだ。
結局、アンナは異母姉妹の後ろに隠されるように我が家に来た。本妻もついてきて、参加しようとしたが、子供のお茶会だからと言って帰らせた。そもそも彼女は招いていない。
最初はアンナを周りに認識させまいとしていた異母姉妹達は、アンドレの姿を見るとそっちに走っていった。彼はなかなかイケメンに育っている。
取り残されたアンナに目を向け、私は微笑んだ。貴族社会は大変でしょう。と言うと、彼女は私は大したことないと困ったような顔で言った。ロザリーと彼女を引き合わせて話をさせる。二人だけで話した方が良いと思った。
お茶会の後、ロザリーはアンナも転生者だと言った。この世界が乙女ゲームの世界であることも知っていた。ロザリーはアンナに自分が悪役令嬢になる運命を変えたいと話すと、アンナも賛同してくれたそうだ。アンナ曰く、自分の恋人は自分で見つけて見せるそう。
ついでにアンナの前世での推しはロザリーの婚約者の王子ではなくアンドレだそうなので、王子は好きにして良いそう。うちのアンドレと付き合いたかったら、それなりの根性見せな的なことを伝えておいてもらった。
王子に関しては、私は直接関わりにくく、対策が取りづらかった。被る猫は良いようで、パッとした印象は良かったし、基本的にはしっかりしたいい子であることもわかった。とりあえず、彼に関することの調査を続けた。ヘマさえなければ良いのだ。
そして、ゲームの舞台となる学園への入学。この世界の学校は日本で言う小一から小四までの初級学校と小五から中二までの中級学校、中三から高三の上級学校の3つに分けられる。
大体どの国民も初級学校には通う。ただ、上級学校にまで行くのは貴族や裕福な商人の子や、頭の良い奨学生としての庶民である。貴族の子が通うような学校は中級学校までは男女別学だ。上級学校で初めて共学となる。
上級学校を卒業してからいわゆる士官学校や大学のようなところに行く人もいるが、ゲームの舞台は上級学校が舞台になる。
ロザリー達が通うのは国のなかでも随一の王立学園。しかも全寮制、いかにも乙女ゲームという感じがする。アンナとはあの後何回もあって母娘揃って今では仲良しである。
ロザリーはしっかりした子に育った。問題はないはずだ。それでも見おくる時は寂しかった。アンドレの時も心に空欄が出来た気がした。その日は、泣きわめく旦那の気持ちがよくわかった。
ロザリーは報告も兼ねて手紙をよく出してくれた。彼女は上手く生活できているそうだ。届く成績も悪くない、ゲームのロザリーの頭は悪いからこれは良い兆候だ。
アンナはお茶会に来ていたおかげで子爵の子であることが認知されている。だから隠れて入学するようなことはなかった。だが、相変わらず異母姉妹達からは煙たがられているのだそう。
そして、王子がアンナに話しかけ始めたそうだ。アンナは王子ルートに進むことを回避するために逃げているそう。しかし、それでもアンナを見る他の令嬢達の目が厳しくなっているのは確かだという。嫌な感じがした…。
一年後、ロザリーの一つ年下だったマルクが入学した。実は彼も後輩枠としてゲームの攻略対象として存在していた。
ゲームでは恐ろしい姉に怯えていた彼も、お陰様で姉思いの優しい子に。というかはっきり言ってシスコンだ。なんかこの手の攻略対象もいそうだ。
私にも優しい良い子なんだが、他の令嬢は大したことないと思っている節がある。アンドレには素直だが、父親である私の旦那には反発する。旦那がショックを受けていたので、「きっと反抗期なのよ。」といってなだめた。我が家の父親の威厳は下がる一方だ。
うちの三人の子達全員が入学し、王子や他にも有力な家の子が学園に揃った。ここまで揃うことは稀で、世間では色々噂された。親の七光りシリーズとか言われているのを聞いた。結構的を射ていると思ってしまった。一番多かったのが奇跡の世代。カタカナで書きたくなった。幻の6人目は?思わずツッコミたくなったが、漫画のないこの世界では我慢した。
そして揃った奇跡の世代は言わずもがな攻略対象達である。うちの子達や王子の他にも騎士団長の息子や錬金術師の家系の理系少年など。
全ての少年達が貴族位だったので、お茶会に呼んだり、パーティーで親に接触したりして、ロザリーの入学前に全員と会うことが出来た。彼らがゲームのストーリーに関わりそうな心の闇とかがある場合は、それを晴らそうとした。
努力が実を結び、彼らは今のところ悪役令嬢ロザリーの敵にはなりそうにない。ロザリーや他の令嬢とともにアンナもあらかじめ紹介させておいた。悪役令嬢補正がこの辺で来なくて良かったと思っている。
それでも王子の興味はアンナに傾いたまま。私からも、ロザリーからも、アンナからも、学友であるアンドレやマルク含む七光りシリーズからも、それとなく注意はした。けれど王子の態度は変わらない。悪役令嬢補正か?彼は感情が先走って、周りが見えにくくなるようだ。本当に性根は悪くないのだが。
王子の暴走は誰にも止められず、日に日にアンナに対する悪口や嫌がらせもエスカレートしていく。アンナは覚悟していたようだけど、それでも辛かったようだで、ロザリーに、時々愚痴をこぼしていた。
そういうことだったので、問題は王子をどうするかだ。
私の教訓から考えて、彼には大きな失敗が必要だと思った。王子という身分のせいで、周りは彼を甘やかしていた。彼は気付いていないだろうが、彼はまだまだ未熟者である。周りに恵まれ過ぎたのだ。他の子達が味わう挫折も彼にはない。ここは一発がっつり失敗しない成長できない。
王子はそこまで腐ったアホではない。失敗すればちゃんと反省してよりよく成れるはずだ。
失敗の場として選んだのは学園の卒業パーティー。卒業生やその親族、在校生の代表が参加する華やかなパーティーだ。ロザリー達の卒業パーティーで、アンドレは卒業生枠で参加する。そして言わずもがな、ゲームでの悪役令嬢ロザリーが断罪される場でもある。王子に関わることには悪役令嬢補正がかかりやすいからきっと断罪イベントが起こるはずだ。そこで、ざまぁをやってやる。
そのうち、王子がイベントを起こしそうだという情報も入ったので計画はうまくいきそうだ。イベントのために下準備を入念にした。
そして迎えた卒業パーティー当日、不安そうな顔のロザリーを送り出した。
※※※※※※
そして、冒頭に戻る。私はニヤニヤを必死に抑えていた。
ロザリーはそっと口を開いた。
「殿下、お尋ねしてもよろしいでしょうか?」
「なんだ。」
「そのようなことはまず、婚約を決めた親を通してから話し合うのではないでしょうか。」
「あぁ、確かにそうだな。ただ、我は今回、証人として人の目があるべきだと考えたのだ。それに他人を通すと、うやむやにされかねないからな。」
「わかりました。では、婚約破棄をする理由をお聞かせ下さいませんか?」
「そんなこともわからないのか!お前がアンナにした数々の非道の行い、許されると思うなよ!」
「殿下、具体的に私が何をおっしゃって下さいませんか?」
「もしやお前、何が悪いことかもわかっていないのではないか?私は聞いているぞ、アンナがいじめを受けていたと、中には階段から突き落とそうとするなどの極めて悪質な物もあったと。」
「それらすべてが私の仕業であると殿下はお考えで?」
「あぁ、そうだ。全てこの紙にまとめてある!」
「では、見せて下さいませんか?」
「構わないが、決して破るなよ。」
「ええ。」
ロザリーは紙を受けとると、書かれている事項を確認した。
「殿下、ここの日付に書かれた、教本を隠したという行為はこの日の昼休みに行われています。しかし、私はこの日はその前日や翌日も含めて、選択授業の研修で、出掛けています。校内に足を踏み入れてはいません。」
「悪あがきか?大方お前が誰かに指示したのだろう?」
「それから、これらの情報はどこで得られましたか?そして私が犯人であるという根拠は?」
「人伝に聞いた。直接アンナにも聞いた。そして階段から突き落とされたアンナを受け止めたこともある。残念なことに犯人の顔は見えなかったがな。ただ、その人物が去ったときに女子制服のスカートが見えたんだ。」
「それは根拠とは申しませんわ!アンナ様が私がやったとおっしゃったのですか!」
いかにもネット小説な婚約破棄騒動の会話だと思う。ロザリーも心のどこかでベタだと思ったようで、口の端が少しピクピクしている。頑張って耐えろ。
「いいや、アンナはお前だとは言わなかった。だがな、お前に脅されて嘘をついていたとも考えられるぞ!」
「それもただの推測じゃないですか!アンナ様!アンナ様はどうお思いで?」
「おい!アンナに話をふるな!」
すまんな王子よ、ふるよう指示したのは私だ。ざわめいている人混みの奥からアンナがしずしずと出てきた。そして彼女はピンと背筋を伸ばすと言った。
「殿下、確かに私は物を隠されたりするなどのつらい思いをしました。しかし、ロザリー様は私の悩みを聞いて下さいました。また、私が他のご令嬢方と親しくなれるように取りはからって下さいました。何より、ロザリー様は上級学校に入学するよりも前から親しくさせていただいております。ですからロザリーが犯人ではないと考えております。」
「なっ!」
王子の顔がみるみる内に青くなる。
「また、どなたとは言いませんが、階段から私を突き落とした方とはすでに和解しておりますからご安心ください。」
事実だ。階段から突き落とした子はロザリーの知り合いで、彼女も罪悪感があったそうなので、ロザリーが諭して二人は和解したのだ。
「そして殿下、失礼を承知で申し上げてよいでしょうか?」
「…許そう。」
「私は殿下に何度も私の名を呼び捨てで呼ばぬようにお願いしたはずです。しかし、今さっきの話の中でもすでに六回も呼び捨てで呼ばれました。そんな馴れ馴れしいことは婚約者であるロザリー様だけにすればよろしいのに、おやめになられないからご令嬢方の嫉妬を招いたのです。殿下はお立場をわかっておいでですか!?」
今にも指を突き立てそうな様子でアンナは言い切った。今現在、王子の周りに彼の味方はいない。アンナに責められて真っ白になって突っ立ている王子を中心に沈黙が広がっていた。せっかくのパーティーが白けてしまっている。
ここから私の出番だ。
パンっと私は手を叩いて沈黙を破った。
「殿下、以上でしょうか?」
「…トロー公爵夫人…。」
「先程ロザリーが申した通り、婚約に関しては本人達だけでどうにかは出来ません。後日話し合いの場を設けましょう。そして、今の話を聞くに相互の理解不十分があると思われます。ですから、ここは一度殿下とロザリーとアンナ嬢で情報共有をして共有意見を決めてください。よろしいでしょうか?」
「…構わない。」
「そうですか。パーティーには休憩用に個室があるそうですからそこで話して来て下さい。私は干渉致しません。ただ念のためうちのアンドレは付けさせていただきます。」
そして、四人はパーティーから出ていった。参加者達が彼らが部屋から出るのを見届けた。
実は事前準備として、参加者全員にパーティーで一騒動起きるかもだけど許してね的なことを手紙で伝えていたのだ。おかげ様でひどく悪い噂や評判は立たなかった。この事は王子の両親である王と王妃に息子のメンツを保ってくれたと、とても感謝された。
子供達の間で話はまとまった。王子は頭が冷えたようで迷惑をかけたと謝罪してくれた。大人達の話も進んだ。やっぱり本人の気持ちも大切だよね、ということでロザリーと王子の婚約は破棄された。ただし、本人らが望めば再び結ぶこともできる。王子はアンナにこっぴどくフラれたそうだが、立ち直った彼は大人っぽくなった気がする。
※※※※※※
今日、ロザリーは王宮にお茶会に行く。王子も参加するそうだ。
実は前世でロザリーは王子が推しだったようだ。現世では色々なことがあった。それでもロザリーは王子の真っ直ぐな性格にひかれていたようだ。ロザリーが悪役令嬢になることは無事に免れた。王子も今まで駄目だったところが治ってよりいい男に仕上がっている。
ロザリーには自分の気持ちを大切にして欲しい。だけど悪役にはならないでね、私が大変だから。
日付変更線ギリギリ…。
5/6追記 読んでくださった方、ブックマークやポイント評価してくださった方、ありがとうございます!誤字報告もとても助かりました。思っていた以上にポイントが伸びて、驚きつつ嬉しいです。まだまだ拙い文章ですが、これを励みに精進していきたいと思っています。お礼に番外編や続編のような小話を書きたいと思っています。いつ投稿するかは未定ですが、そちらも読んで下されば嬉しいです。
5/30追記 昨日、続編を投稿しました。「悪役令嬢になった私は」です。ロザリー目線の後日談になります。
6/25追記 昨日よりベルナデッドの武勇伝の連載始めました。