魔法の名は。
イ「左だ。」
シュラは、仰け反るようにして回避しミミズツキの腹部に手を当てる。
シ「ヨツフカイ!」
ミミズツキが、足をバタつかせ、お腹から地面に落ちる。
足をおぼつかせながらフラフラと立ち上がり、どこを見ているかわからないような仕草を示す。
幻惑の魔法。
個体差によるが、しばらくの間かけた相手の視界を奪い、判断を鈍らせる!
それだけ!
ちなみに、ダメージは無い。
ただ無力化できるということは、隙がうまれるということ。
刃が弾かれる私の代わりにイーさんがとどめを刺してくれるのは変わらないのだが……。
ザシュッ。
ミミズツキは、静かに横になっている。
自分の魔法の感覚を確かめる。
問題ない。実戦でもやっていける。
確かにとどめを刺せないのは一抹の不安を抱えるが、なにも無力化しているうちに伐採した木を持って逃げてしまえばいいだけ。
明日からイーさんに楽をさせてあげることが出来る!!
今まで、お世話になった恩返しがやっと!!
⊿
魔法の名を知ったのは昨日。
あれは、ヨビの家を訪ねてから3日後のことだった。
暇さえあれば雑草を枯らす練習をし、マカドシワスをイメージする副作用をほぼ感じなくなってきた時。
脳裏に、飲み屋帰りのオッチャンが浮かび上がり、しきりに脳のインターホンを鳴らす。
ピンポーン、、ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン、ピンポーンピンポーン……。
耳を塞いでも意味がなかった。
思いきり目を瞑っても、頭を振ってもインターホンは鳴り止むことがなかった。
キコエマスカ、イマワタシハ、アナタニチョクセツ ハナシカケテイマス。
そんな感じだ。
耳障りで鬱陶しい。そもそも耳で聞いてないのに耳障りとは変だが、鬱陶しい。
だから、私はドアをあけてこう言ったんだ。
「あ、うちそうゆうの結構ですので!ほんと、宗教とかよく分かんなくて。興味が無いというかなんというか。とりあえず、入信しませんから。」
酔っぱらいのオッチャンは、なにも言わないまま、手土産を置いて帰ったよ。
手土産には、こうプリントされてたんだ。
ヨツフカイ。って
それが魔法の名前だとは思わなかった。
呟いた瞬間、手のひらが少しくすんだ色になったから、もしかしてと思って、試してみたら。その通りだった。
あの時は、オッチャン教になら入信してもいいかなと思ったね。
⊿
シ「ねぇ、イーさん」
イ「なんだ?」
シ「ミミズツキを倒すことは出来ないのだけど、魔法も使えるようになったし、もう身の安全を確保出来るようになったから明日一人で柴刈りに行こうと思うんだ。」
イーさんは、一瞬苦い顔をしたがすぐに穏やかな顔になり承諾してくれた。
きっと、心配なのだろう。ただそれでも、応援してくれているのだ。
明日……。やっと恩返しが出来る。
帰り道、最後に感覚を確かめるのに雑草を摘もうとすると、近くの黄色い花が目に入る。
マリーゴールドのような綺麗な花。
どうせならと、シュラはそれを摘み。呟いた。
……ヨツフカイ。
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