一日目 何でもない日常
はじめまして!
今回、二作目となる“りとうぐらし”を書かせて頂きます〈久貝 智〉と申します
離島の素晴らしさを、この作品で少しでも分かって頂けたら最大級の幸せです
ぜひ、ゆっくりと楽しんでください!
透き通る海。晴れ渡る空。
時計の針すら、ゆっくりと刻まれているような感覚。
僕は山下 はじめ。小学四年生だ。
生まれも育ちも離島で、それ以外の世界を知らない。
テレビでよく見かける高層ビルも見たことがないし、コンビニも行ったことがない。近くにあった駄菓子屋は最近潰れたため、買い物なども、ろくに行っていない。
母さんが作ってくれる一日三食の食事だけで、十分だ。うん、十分十分。
明日は何をするか。明後日は何をするかなど、考えてもいない。その日のことはその日に決める。僕の生き方だ。
これは、じいちゃんが教えてくれた。
「今日を学ばない奴には、明日を語る資格はない」
じいちゃんが言ってた言葉だ。何を行ってるのかあまり理解できなかったが、僕は僕なりに今を一生懸命生きている。
「はじめー。いくぞー」
父が広い部屋に適当に呼びかける。静かな部屋に声が反響する。
「はーい」
今日は父と魚釣りに行く約束をしていた。
魚釣りは面白い。魚との駆け引きは他には味わえないし、なにより、魚が可愛い。釣った魚とにらめっこするのが密かな楽しみであるのはここだけの話である。
今日は、家から遠い、岩肌の見える海岸へ来た。
父いわく、ここが良く釣れるらしい。
「はじめ、これはお前専用の竿だ。しっかりもっとけよ?」
「分かったよ、父さん」
父が用意した竿を僕が、ぎゅっと握る。肌寒い潮風に、竿に残った父の温度が温かい。
魚がかかったときの目印となる”浮き”が波に揺られる。適度な緊張と岩に打つ波の音が心地よい。
しばらく経つと、いつの間にか、うとうとしてしまっていた。いけない、タイミングを逃すところであった。
一呼吸置いて、竿を満面の笑みで見る。すると、
「はじめ、沈んでないか?」
父の声に、慌てて竿を持ち上げる。どうやらヒットしたようだ。魚は釣られまいと必死の抵抗を見せる。僕は逃げられまいと釣竿を右左に傾ける。父は落ち着いた様子で、
「おおー、がんばれ!」
と軽く口にする。
こんなにも全力で戦ってるのに、気楽なものだ。
魚影が少しずつ見え始めた。太陽に反射する青色の体は、僕の熱を更にかき立てた。
父はすでに網を構えている。僕は父の方向に魚を誘導する。そしてついに、
「やったー!!」
全長30センチ程の大きな魚だ。
僕はライバルに勝ったような気分になり、舞い上がった。
父も先程と変わらない笑顔を僕に見せる。
「頑張ったな」
夕日に染まる赤い海を背に、家に帰宅した。
家では、母がすでに料理を準備している。
冷えて疲れた体を、みそ汁で温める。
「今日ね、僕が魚を釣ったんだよ!」
「そう、凄いわね。はじめ」
母はにこっと微笑む。いつでも落ち着いている母は、僕の一番の頼りになる人だ。
明日も楽しいことが起きないかな。
僕はつい、明日のことを想像してしまった。
“りとうぐらし”いかがだったでしょうか?
私の表現が分かりにくかったり、下手な部分はこれから経験で学んで行きます!