書き溜めていたプロット01
書き溜めていたプロット(あらすじ)を詰め込んだ、いずれ書く予定の備忘録です。
あくまで個人的な備忘録なので、このネタがもっと肉付け出来て脳内でアイディアが湧いて完成までのイメージが固まったら執筆してどこかに投稿します。
「彼女の望み叶えたまえ」
十八年前、工業高校のデザイン科にいた天性の才能を持っていて高校生の枠組みをも超えた麒麟児として有名だった少女は、高校三年生の十月の半ば(文化祭の終わった後ぐらい)に『コンドーム事件』という、ふざけた事件から友人を庇ったために日頃からセクハラ三昧の科長により「これまで目を掛けてやっていたのに」と手のひら返しをされて停学処分にされるが、彼女の才能を自分たちのアクセサリーのようにしか扱っていなかった家族からも見放されたので、あまりにも長い停学処分が解除されないまま、有名国立大学の美術学部にも推薦が決まっていたがその推薦入試日すらも過ぎた。そのまま二学期の終業式の日を迎え、精神が摩耗した少女はマンションの最上階である自宅のベランダから飛び下り自殺をした。
だが、彼女が直前まで手掛けていた卒業制作として出す予定だったB1五枚一セットの作品は完成まで残り二枚のところまで完成して残されており、科棟の一室に隠すように置かれていた。それは彼女に庇われた友人がセクハラ科長が見つければ捨てられたり、親族も見つければ世界中にコアなファンがいる彼女の作品を、まだ完成していないのに売り飛ばす可能性があったので隠しておいたからだった。
そんな友人は彼女の死を知ってからすぐ、『自分の罪』として背負うために希望していた美大を諦めてギリギリで推薦の出願が間に合った違う大学に進み、教員免許を取って母校のこの学科に戻ることを決意した。親友だった天才少女の死と、あのとき何も出来ずに臆病で……そして本当は当時の同じ高校の恋人に無理やり科棟の中で身体を求められても拒否出来ずにあんな事件を引き起こした……という無実の罪どころか『真犯人』でもあった自分が、いまもその地位にてふんぞり返っているその科長の魔手から後輩の女子たちをせめて自分の目が光る範囲にて守ろうと考えて。
しかし天才少女は地縛霊となってしまっており、毎年二学期の始めから終わりまでだけの時期、このデザイン科棟に陽が落ちてから朝日が差すまでの時間だけ現れることが出来て、棟の中身も自分が死んだ当時に戻すことができて、その中の物たちは全て彼女の指先ひとつでポルターガイスト現象を引き起こせていた。
季節は二学期の始め。主人公たる同じ高校の建築科の少年はネットの裏掲示板で見た『コンドーム事件』とやらが気になって深夜の学校に忍び込む。
するとそこで出会った少女霊は、霊にしてはあまりにもざっくばらんな態度で話し掛けて姿を見せて来て、自分の存在やこうして現在この場所に囚われて地縛霊になっているという推測を交えた理由を話す。主人公はそんな『先輩』のために彼女と以前から知り合いだったという教師から情報を得て、どうにか少女の卒業制作を完成させて成仏させてあげるのと同時進行で、『コンドーム事件』で濡れ衣を被せられた生徒たちを恫喝したことを反省もせずに彼女を追い詰めた科長がまだここに居座っているので当時の彼女の汚名を払拭させて成仏させようと考える。以降、毎日深夜に『先輩』に会うために忍び込むようになる。科長を反省させ、社会的に失墜させるための『武器』は十八年前の棟の中に揃っていた。二人は長い時間を掛けて策略を練り、見事に科長を陥れる。
主人公たちが仕組んで〝そう見えるように〟セッティングされた科長は泥酔しての科棟内部の物品破壊容疑などで、その状態のまま他の教師や生徒たちも登校してくる時間になり、『器物損壊行為』などを咎められてはさすがに校内だけで済ます訳にもいかなくなり、校長によって『自主退職届』を出すように勧められる。そこまでを主人公は見届けていた。隣に『先輩』はすでにいなかった。
長かった夜が明けると、もう次の日の朝が来ており、『先輩』が棟から一歩外に出ると足元から季節外れの蛍のように散り散りに崩れて消えて行こうとしていた。『先輩』は別れを告げて消えて行こうとしたが、最後は普段のように飄々とした笑顔ではなくぎこちない笑みを浮かべつつ、消える直前になって主人公に手を伸ばしていたが、それはすぐに引っ込められた。様々なしがらみに囚われて地縛霊となっていた少女は、もうこれ以降二度と夜中に現れることはなかった。
『先輩』の遺言では
「残りの二枚はもう完成させてあそことあっちに隠してる。それと……待ってるからね」
と言って目の前で消えた『先輩』の言葉どおり、自分たちが策を練っている合間にも『先輩』が着手していた、これまでの十八年間のループでは終わりが来る度に描いても描いても自分が死んだ日になったら見事に白紙へとリセットされていたので嫌気が差し、もうほとんど完成するのを諦めていた『卒業制作の残り二枚のパネル』は他の三枚と調和しつつも『テーマ性を持たせているグラフィックアート的なポスター仕上げ』であるにもかかわらず、芸術には疎い主人公が五枚全てをそこに並べると、その場で膝がくずおれて自然と涙するほどのものだった。
そこで自分の涙を服の袖で拭こうとして、ようやく主人公も気付く。自分にも涙どころか、体中全てに温度が無い――と。
そう、主人公は『先輩』とは違って昼間も歩けるけれど、そのテリトリーはこの高校の敷地内だけに縛られている地縛霊。『コンドーム事件』のことを知ってからデザイン科棟に忍び込む際に足をうっかり滑らせてしまい、打ち所が悪くてそのまま死亡したけれども本人にはその自覚が無い、この高校自体に縛られている地縛霊。
科長を陥れる際に手伝ってくれて、『先輩』の情報をくれた先生というのも『先輩』に庇ってもらった友人であるデザイン科の教師ではなく、自分自身もこの高校のOGであり、忘れ物を取りに行くために夜中にこっそり忍び込んだ際に『先輩』と出会ったことのある、霊感が他人より少し強いだけの養護教諭。けれども主人公には自分が死んだ自覚があまりにも無くて普通の生徒のように振る舞っているから、その養護教諭も主人公のことをただの生徒だと思っていた。
主人公は『先輩』が最期に自分に向けて伸ばそうとした手と別れ際の言葉を思い出して、やっと得心した。朝の太陽はもうすでに顔を全て覗かせて高らかな位置に昇ろうとしている。
登校してくる生徒たちの声も聞こえてきた。
高校生たちの二学期、寒い冬の日。受験生には寒さに愚痴など言っている暇すらも無い追い込みの時期である小春日和。
『先輩』がわざわざビニール袋にガムテープでぴっちりと封までして隠しておいたデザイン科棟の二ヶ所を書いたメモが、鍵の掛かった保健室の教卓の上に載せられている。
この高校の敷地内の一番北東にあって、真っ先に朝日の恩恵を受けることの出来るデザイン科棟の屋上。
そこでは遠くの境界線を見つめてただ泰然と佇んでいる、確かにこの高校に所属していた生徒の姿がうすぼんやりと、たまに透明にもなりながら、一人。見る人間によってはもっと鮮明に見えていたのかもしれない。
両手を大きく広げて深く吸い込んでいた息を吐き出した透明な少年は、一瞬だけその輪郭をはっきりとさせたあと、助走を少しだけして、デザイン科の棟から隣合わせにしてある建築科の棟へとジャンプ。
しかし着陸は叶わず、むしろ最初から望んでいなかったのか。
彼の姿は朝日に照らされ、全身は砂金のように弾けて寒空へと消えて行った。
「彼女の望み叶えた結果=ユメ」end.
・「神様を助けた所為で老若男女問わず好かれるようになった主人公に、周囲の美少女たちが自分のアイデンティティーを捨てても主人公の所持している漫画やゲームやラノベのメインヒロインたちの要素を取り入れてアタックする話で、特に角川系のラノベや漫画のヒロインネタを取り入れます。「実妹が『どうしよう、私なんか実妹だから俺妹の桐乃ちゃん路線で行けばいいの!? でもいきなりお兄ちゃんのことを罵倒したりして嫌われるの可能性もあるから怖い!!』」
・「最近流行りのラノベ作家の代理モノで、乙女系ラノベ受賞作家の主人公が同時期に男子向けのラノベ大賞を受賞した作家の従妹とひとつ屋根の下だし名前の漢字も「恵」で同じなので利害が一致して入れ替わる。特に主人公は担当の女子編集さんが男性恐怖症っぽくて自分も相手も特に不安なので従妹に替わって欲しかった……という話」
・「勇者育成学校の卒業式で最下位の成績で卒業した主人公だけどいきなり転移魔法でどこかの森に送りこまれたと思ってスライムを討伐したら、祖母の形見のペンダントが反応したらスライムから幻惑魔法が解けて……その正体は自分の次に成績の悪かった女子生徒だった。そして成績優秀者ほど他者にはドラゴンなどの強力なモンスターに見られる幻惑魔法を掛けられていて、この森からは自分以外の全ての生徒を討伐するまで出られない……というたった一人しか卒業出来ないデス・ゲーム物。最後にはその森自体は魔王城のすぐ近くにあって、他の森からも魔法使いや神官や武闘家たちも疲弊して病んでいる表情で出て来て、全員全てを知っているような顔で黙ってパーティを組み、魔王城には突撃することなく町に戻って、協力して狙うのはそれぞれの母校の教師たち……」みたいなオチで。全く救いの無いやつ。