つまり 私は雌《わたし》
不定期更新にて。
今回、不衛生な表現が含まれています。性的暴力的表現ではありませんが、ご不快な方には、申し訳ありません。後書きに、あらすじを、置いておきます。
7/11 加筆修正
どこまでも続く雄大な森の中を、私は歩く。足裏に感じる緑の『しっとり』とした感触も、時折姿を見せる、樹々の根の硬さも、まごう事無く、ここが”本物”であると、感じさせてくれる。
強いて言えば、少々不思議な点が見られるくらいか?
例えば、今も横に立っている大きな樹だが、幹回りはおよそ、私の『体長』の三倍程度。ところが足もとには、私の『指先を隠す』くらいの草(?)が生えている。これらがすべて、若草であったり、元々、丈が短かかったら、よいのだが…………………。
分かってはいるけど、ここは『異世界』だ。私は【神獣の白虎】で、『ホワイトタイガー』じゃない。尺寸が少々、可笑しくなっていても、致し方あるまい。
それよりも今は、ちょっとした問題がある………。
体の大きさ?とか、まあ色々あるけれど…………よくある喫緊の問題として………………
✿✿✿✿✿
私は『生きている』ことを、実感した。いや、下世話な話で申し訳ない。しかし”生物”であるのかどうか、これを見分ける方法は、これに限る。
しかし、そんな私は、最も重要なことを忘れていた。
『猫』と云えば、いや猫に限らないが、「こういう時の後始末は?」
最初は戸惑ったが
「それでもこの体でいる以上は」
と割り切って、グッと、身を曲げ、鼻先を近づけると…………………
(エッ?……………………………………)
「私、雌だ!!」
そう気付いた途端、先程までのあれやこれやが、どうでも良くなってしまった。
私自身、獣の姿になってしまった時点で、もうこれ以上は無いと
「高を括っていた」
みたいだ。
幻想世界にやって来て『白虎になった』、と”油断”していた。全く以って、笑うしかないとはこのことだ。
だが、なったものは仕方がない。存分に楽しむとするか。随分余裕がある様に感じられるかもしれないが、これが”年の功”と云う奴だ。まぁそうは言っても、まだまだ若輩者だったろうが、それでも結婚もしたし、子供はなかったが、一人になってしまうまで「幸せだった。」
とにかく、私は”森の探索”を続けた。
分かったことは、ここはひどく大きな森で、何処までも、この『セコイアの様な』樹が生えている事。私以外の(魔獣と呼べばいいのか)力のある”存在”を見かけなかった。偶々なのか、理由あっての事なのか、兎も角、小動物(?)くらいしか見かけなかった。小動物(?)と云ったが、本当に”小さく”、兎などは”手乗り”サイズだったりする。今も、目の前を横切っていく、まるで私が「襲わない」ことを知っているかのように。
そして、最初の探索は、終わった。
あれから、幾日かが経った。
私は変わらず、”探索”をしては帰ってくる、日々だ。「森を知りたい」と云うこともあったが、何より早く、この”身体”に慣れたかった。『獣化』などと云う、どこかの『文学作品にでもなった』かのような、体験などあるわけもなく、こうして、過ごしている訳だ。
だが、それもある時、ふと妙なものを見つけたことで、ガラリと変わってしまう事になった。
それは、いつものように、水を飲もうと、水たまりを覗き込んだ時だった。
「何だろうな、これは?」
澄んだ水面に映った己の顔、その口の端から燻る『焔』の様なナニカ。細くたなびいて、今まで「息が白く」なってるだけかと、思っていた。
だが、改めて見てみると、呼吸に関係なく、漏れているようだ。
そこで物は試しと、その”焔”を出すつもりで、「ふぅ――ッ」と吹く。すると、目の前にぶわっと、『白金色の焔』が広がった。
驚いた。ただその一言だ。何より驚きなのは、自分自身が『それ』を当たり前の事として、受け入れてしまっている事だ。自分はもう以前の自分ではないと、分かっていたつもりだった。よもや、ここまでとは……………………………………。
悩みは尽きないが、今更だろう。それに”元”の人生にそこまで愛着があったわけでもなし。折角なのだ。”前”は50年ほど生きた。
さては
”今度”はどのような生きようか?
その為にはまず、この”焔”だよな。因みに【白竜】はドラゴンブレスだったようだ。(まぁ、そうだろう。)
ところが私の場合、『大道芸』の火吹き男の様にしかならない。確かに『練習は必要』なのだろうが、どうも『ドラゴンブレス』にはなりそうにない。
暫く、「困った、困った」と考え込んでいたわけだが、ふと閃いた。分からないことは「【神獣の知識】に聞くしかあるまい」と。
(ちょっと横着をし過ぎたようだ。)
反省をせねばなぁと、ちょっと気にしつつ、”焔”の事を考える。
記憶(?)をたどれば、白竜は『ドラゴンブレス』のほかにも、『ファイヤーボール』の様なものまで使えたようだ。
(と云うことは、形と性質を変えられる、と云ったところかな?)
それから、どれ程たったのか?
色々と、試してはみた。温度を上げれば、炎になるし、下げれば冷気の塊(ドライアイスの気体みたい?)にもなった。
一度、気合を入れて、『ドラゴンブレス』にも挑戦したが、”大道芸”が”イリュージョン”になったと、報告しておこう。
そうやって手に入れたのが、これだ。
「【浄炎】!」
然う唱えた途端、『全身を焔が』包む。
一気に燃え上がるように広がり、始まりと同じく唐突に消える。
そして、そこには『サッパリ』した私がいた。
…………………………然う、『洗浄』神術(?)の誕生である。
自然の中で、文字通り『ワイルドライフ』を送る身としては、気にしない方が良いのかも知れないが、やはり”元”人間の部分が納得できなかったのだ。
(ひょっとしたら、日本人の特徴だったりするのだろうか。)
とまれ、これで…✿も、心配いらない。
それと最後に(……✿の話の後で恐縮だが)食事に関してだが、『私は』どうやら”ほとんど”『食べなくても問題ない』ようだ。
初めは(”肉食獣”故か)とも思っていたのだが、何故か『空腹感』が無く、【浄炎】を使った時だけは、だるくなって眠くなる程度だった。そして、朝起きると『元通り』になっている。月光を浴びていればよい、とは分かっていたが、まさかここまでとは、思っていなかった。
そんな訳で、『ワイルドライフ』という名のなんちゃって”ライフ”を始めることになったのだ。
今回のあらすじ
森へ行きます。
色々、試します。大きい?(ナニガ?)炎?(ナニコレ?)
そして、私って………。
と、こんな感じです。
ではまた。
7/11 ✿積みに行くシーン 分かりにくかったでしょうか?
今後を考え、若干の変更をしていきます。