ドナドナ♪ド~ナァ~♫
私はドナドナされている。
こんな風に云うと、何だか楽しそうに聞こえてくるから、不思議だ。
だが、実際は楽しいなんて、とんでもない。
今私を連れている女性、名を『ドリュー』と云うそうだ。私が咄嗟に、口にしてしまった『エラ』と云う名前にも、何やら、いわくあり気な様子だった。
そもそも、私が、彼女を『エラ』と呼んだのは、今の自分の姿と同じで、見覚えがあったからだ。
あのゲームで使用していた、複数の”従者”のうちの一つだ。
その中で、家内のことを想って作ったのが、今の自分の姿。
そして、その前に作った”自分の理想の女性像”で作ったのが、彼女だった。
(当然、思い入れも一際という訳だ。)
この世界での私の役割は、はっきり理解している、つもりだった。
なのに彼女の存在を知ると、少し怖くなった。
想像してくれ、仮想世界だと、思っていたものが、いつの間にか、現実の中に染み出している。
これでは『幻想世界』ではなく、『空想科学』の世界だ。
昔読んだ”幻想小説”の中にこんなことが書いてあった
『………そもそも彼ら、架空の生き物は、全くの想像から生まれた、のだろうか。実は、実際に出会っていて、それをもとに書かれたのではないだろうか?もしくは、そうした実在の、影が現実に影響を及ぼしている、のではないのか。』と。
正直私は怖い。このあり得ない状況が。
そして、それ以上に”自分でも”びっくりするくらい楽しんでいる。
(元の年齢で)いい年して、ワクワクが止まらない。
それにしても………………………………………
………………………………………、少し前を歩く”ドリュー”を見る。
もうただ、只管………………………………………、
「素晴らしいぃ!」としか出てこない。
褐色の肌に白銀の髪(私も銀髪だが、私は緑系の白銀、彼女は青系の白銀)
身の丈は、二メートルを超える”大女”、そのウェストは高い。
大きなお尻に、”外国産”で”天然モノ”を主張しているかの胸部と、
出る所は出る、引っ込むところは引っ込む、『理想的なプロポーション』をしている。
そんな《・・・》彼女を、見上げる様にして、遂、眺めてしまう。
「そんなに熱い視線を注がれても困るのだが…………………………………」
「えっと、その。ごめんなさい。」
「いや良い(見られることには、慣れてるからな。)それより…………………その、なんだ。………………………………………私の名前のこと、なのだが、どういう事か聞いても……………あ、いや、回りくどいのは、苦手だ。なぜ、あの名を知っていたのか、教えてもらえるかな?」
「えっと、どういう事でしょうか?」
「いや、だから”エラン”のことだが?」
「えっ、”エラン”ですか?」
「そうだ。”エラン”だ。」
(どういう事だ?)
「いえ、私が言ったのは”エラ”で、”エラン”じゃ有りません。済みません、知人にそっくりの女性がいたので。」
「なんだ、そうか。それは済まなかったな、何だか、無理を言ってしまった様だ。もし、良かったらその”私そっくり”と云う女性に、”会わせて”もらえないだろうか?」
「いえ、もうずいぶん、遠いところにいるので、難しいと思います。」
「いや、これは失礼した。まさか…………………………」
「あぁ、いえ、亡くなったという訳では。ただ、”遠く離れすぎた”だけなので、お気になさらず。」
「そうか。すまんな、重ね重ね。」
「いえ、どういたしまして」
(えぇ、もう本当に無理ですよ。ゲームにインターネットとか”王侯、貴族”すら考えつかない、であろう、”遊戯”の説明とか、もう絶対無理っ!)
彼女もいろいろ事情があるようだが、むしろこちらの方が”マズイ”。神獣とか、神獣とか、神獣とか…………………そして、彼女は”何か”を知っているような気がしてならない。
”門の前での一件”にしても、なぜ、あそこで出てきたのか?
タイミング良く登場できるのは、お茶の間のヒーローか、訳知り顔の”やり手営業マン”くらいだぞ。
とにかく、そう考えると、私のような”アホ子ちゃん”、鴨葱以外の何物でもないな。
慎重にいかないと………………………………………。
そんな事を考えつつ、他愛もない話をしている内に…………………………………
私達は、冒険者ギルドにたどり着いた。
ところで、気になってた入門税。
実は、彼女が全部、立て替えてくれました。
もちろん、最初は”お返しします”と言ったが、まるで受け取ろうとしない。
だから私は、代わりにと
”始原の森”で採った、果物や木の実を出す………………………………と
「それでは多すぎる!」
と”皆(門番さんも含めて)”が言う。
ので
「じゃあ今度ご馳走しますね。」と云うと、皆喜んでくれた。
特に、ドリューのさりげなくも、瞳だけがキラキラしていたのが、妙に印象的だった。
(女の子なんだなぁ~。)
ただ、首輪については、ほとんど聞いてこなかった。
それが、妙に引っかかる。
そういうことがあるのか?
しかし、あの子分の言い草からすれば、滅多に無いみたいだったし………………。
と云うか、在り得ないというニュアンスに感じられたが?
さても謎多き美女、と云ったところ?なのかなぁ。
∽∽∽
さて、まずは入って、登録と買取をお願いしようか。
解体もお願いしてみよう。
(よく斬れる爪が、あるじゃないかって?)
刃物だけあっても、やったことないモノは、無理っ!
解体ショー、それも”四つ足”の?そんな”職場経験”もないよ。
そして入ると
一斉に視線が………………………………………これが、お約束。
ではないですよね。
ワンピにズタ袋、編み上げのサンダル、は問題ない。
(ブーツとか、複雑なデザインは無理だったので)
スカート丈だって、ひざ上くらいですし………………………………………
やっぱり、色と髪かなぁ?
色は全部、真っ白。
着色とか面倒だし、柄とデザイン”センスに至って”は……………………ごめん、聞かないで、理由もなく視界が、が、ガ。
と云うと、最後、髪か。
流石に、踝を隠すほどの長さは、長すぎたか。
あぁ、デザインを変えれば?と思うだろう?
けど、一応やってみたんですよね。
そして見事、惨敗です。
どう”イメージ”しようとも変わる様子がない。”イメージ”そのものが難しいと、諦めました。
そして、切ることは最初に、断念しました。
【神獣】の髪なんていう”【神気】の塊を”
どうしたら良いのか、考えつかなかったので。
まぁ、そう言ってても始まらないので、徐にカウンターに近づく。
すると
「いらっしゃいませ、冒険者ギルドへようこそ。あら、ドリュー、久しぶりね」
とピンクブロンドのおっとり美人入った。
(受付嬢って、本当に”美人”なんだなぁ)
「あぁ、久しいな。サーシャ」
「今日は、どういったご用件?」
「用件はここにいる、この娘に聞いてくれ」
「あら。今日は、サーシャと云います。御用は何かしら?お嬢さん」(見かけない娘さんね。どこの”貴族の”娘、かしら?)
「今日は。ルゥナと云います。冒険者登録と、買取をお願いします。」
「えぇと、”冒険者”についてご存じかしら?危険だし、かなり厳しいのよ?」
「はい、おおよそ。ですが戦闘には、自信が有ります。ぜひ、お願いします。」(ふふん、自己アピールこそ、社会人”経験の証”)
「かなり厳しいわよ。最初は”力仕事”になるし、まずは”能力”測定かしら?」(さぁ、”検討”なさい。そして、回れ右して、お屋敷に帰るのよ。)
「はい、お願いします。」(いぃっよっしゃぁ―。就職、確定ッ!)
(………………………………………。)あぁ、もうっ。何、この娘?あぁ、ダメだ。ドリューがあんなに楽しそう!もぉぅ~ドリューったら、いつも言ってるのに、ここは、依頼を”処理”するところで、依頼を”増やす”処じゃないって。あなたの紅滅姫って、依頼の事だけじゃないのよ!平穏も”紅滅姫《する女》”なの~~~~( ;∀;)
「では、”魔力測定”から行いますので、こちらに手を置いていただけますか?決して、”魔力行使”の内容を見る為でなく、飽くまで”魔力の質と量”を見るもので、情報はギルド内でのみの、使用に限る事は、ギルドの総意として、誓ってお約束致します。」
「はい。」(”魔力測定”ッ、来たッ―!!)
すると、受付嬢はカウンターの上に、クリスタルの埋め込まれた、四角い箱状の装置を置いた。
その、半円球の部分に、言われた通りに手を置く。
すると、クリスタルはジワリと光だし、やがて、眩しいほどに輝くと、途端に光は消え、静かになった。
そして、じぃぃっと装置を向う側(出力画面があるのかな)で見ていた受付嬢は
「………………………………………????」(ナニコレ。ギルドでこんな事教わってないわよ??)
「えぇーっと、少々、お待ちくださいね」
そう言って、席を立ち、奥へと消えて行った。
(………………………………………なんだこれ?)
そして、私の目の前には、半透明のスクリーンがあり、
そこには
『神気による承認申請、認可。初期化しますか? Y/N? 』
の文字。
(ヤラレタッ!)
後ろを振り返れば、ニコニコと楽しそうに、成り行きを見守っているドリュー。
嵌められた!どこから?決まっているッ!ズットダ!!
恐らく最初から、”捕まって”いたんじゃないのか。彼女には、バレバレだったんだろう。
どおりで、入門の際、市民証の様なものを、門番が確認しないはずだ。彼女が、どんな”力”を持っているか知らないが、彼女が出た時点で、全て彼女の”裁量”に任されたのだろう。
とりあえず、初期化をキャンセル(空中の画面の、Nにタッチ)すると、装置は一瞬、反応したあと、黙り込んだ。
そうして、見事に”ドナドナ”された私は、受付嬢を待つのだった。
お読みいただきありがとうございました。
長くなりそうなので、切りました。
次回はなるべく早く上げます。
では




