首輪と私と異世界と
私は混乱していた。
しかし、まずはここから、逃げる事だ。彼女については疑問が尽きないが、それより、町に入ることを、優先しよう。
彼女たちは恐らく探索隊、じゃないかなぁ。だとすれば、ぐずぐずしてはいられない。あのエルフ(?)少年はともかく、彼女は要注意だ。結構、強くひっぱ叩いたから、エルフ少年は町に、戻るだろう。
彼女の方は途中から、飛び込んできた様だった。つまり、パーティを組んでいない?
もし、そうなら、彼女だけ追いかけてくるかも。縦しんば、彼を町まで、送り届けたとしても、すぐに引き返してくる、可能性だって……………。
いや、それはないか?
見渡せば、弾き飛ばした彼の弓も、無くなっている。咄嗟の行動とは言え、やはり彼女を侮るのは危険だ。
そして、彼女たちを見送った私は、すぐにその場を離れることに決めた。
すぐ、”娘”に化けた私は、町に向かって、逃げた。
理由は簡単だ。討伐隊が編成されると、面倒だから。
それに、
『彼女たちだけが探索隊』
と考えるほど呑気でもないしねぇ。
そんなことで、町に向かって、逃げているんだけど
人型になったら、妙に魔獣との遭遇率が上がった気がする。『始原の森』にいた時はあまり、感じなかったのに、この辺りだとなんで?魔獣の位階と関係してるのかな。まぁ、今は考えても仕方ない。
そんな訳で、下手に戦っている所を見られても、面倒臭いと云うか………アレッ、助けられた振りをして、町に?……………………駄目か?
よく考えると、事情説明が面倒な気が…………それにこの辺りの魔獣に苦戦する自分が、想像できない。
やっぱりここは、いつか想ったように、”伝説の傭兵”のように行くしかないよね。
結果、私は彼女と出会うことはなかった。
そして、無事に町にたどり着いた。
いやぁ~長かったっ!あの洞窟を出てから、こんなに掛かるとは、思いもしなかった。虎って言うか、神獣だからもっと、のぉ~んびり出来るのかと思ってました。
街門が見えてきました。思っていたより、随分立派な気がしますが。
さてどう入ろうかと、思案していると
「お嬢さん、どうしやした?」と、声を掛けてくる男が。
「?」
振り返ると、彼と目が合う。
咄嗟に話そうとして、うまく話せるか?迷っていると
(考えたら、人以外としか、会話してないなぁ)
それを見た男が、私が困っていると思ったのか
「町にへぇるのに、困りごとがあるんでしたら、あっしらに任せてくれりゃぁ、よゆーですぜ。」と、そんな事を言った。
「有難う。でも大丈夫だよ。」と
うまく伝わる様にと思いつつ、応えた。
言葉は伝わったようだ、が男は
「ところで、お嬢さん、知ってやすかい?ここの入門税が、最近上がったんでさぁ。そりゃ、皆さんお困りのようでしてね。」
「そこで、ちょいと、イイですかいぃ。実は、うまい手があるんでさぁ。」などと云う。
(あぁ、面倒だ)と思っていると
すかさず
「何ちょいと、装備品つけて貰えりゃあいいんでぇ。そんで一緒に門をくぐったら、装備品を外していただくだけ、何の問題もありゃあせん。もちろん、その装備品が気に入った、と仰るんでしたら差し上げますとも、そんな大した品じゃあないんで。」と、まるで立て板に水の、説明。
あまりの展開に(えっ、?)と固まっている間に、いつの間にか、その装備品とやらが手渡されていた。
「あの、困るんですが」と、返そうとすると
「折角、可愛らしいお嬢さんだ。ちょいと、試してやっちゃくれんせんかねぇ。」と受け取る気配がない。
その首輪を見て、(面倒なことになったな。)と思っていると
「さ、さっ、遠慮なさらずに。」と言うので
「これ、隷属の効果があるんじゃないんですか?」と聞くと
「ばかぁ、云っちゃあいけねぇ、隷属の首輪なんて高価なもん、そうそう手渡せるわけねぇですぜ。それに隷属の首輪だったなら、アッシがつけて差し上げにゃあ………。さ、サッ、ちょいと試すと思って。」
まぁ、これも経験かぁ、と填めてみる。すると
パキィィィ――ッン!と甲高い音が聞こえて
ポロリと首輪が落ちた。
「………………………………………ごめんね。」
「………………………………………ッンナッ!!」男は硬直した。
そして
「どうなってやがんだぁ、ごらぁ―っ!てめっ、なにしやがったっ!ナニモンダッ、てめぇっ!!」と、急に、大声で脅しつけてくる。
「どう?も何も【隷属の首輪】だったんでしょ?これ!」
「ふざけんな!だったら、何で、外れんだよッ!可笑しいぃだろぅがぁっ!!」
「そんなこと言われても外れちゃったし、私、そういうの効かないみたいなので。」
「ッざけんなっ!!ッンナコトッ、あるか馬鹿野郎ッ!!」と男が、いよいよ大声で喚きたてて居ると
「何を騒いでるんだ!お前たち!」と門番の一人が、やって来た。
そこで、私が掻いつまんで、事情を説明すると、門番は
「じゃあ、ちょっと詰め所に、来てもらおうか」と言う。
すると男が
「ハァアァッ!何でオレまで行かなきゃいけねえんだよ!」とごねる。
そして、二人が「いいから来い」「なんでだよ?」と言い合っていると
「うちの者が済みませんねぇ。よく言い聞かせてるつもりなんですが。」と、恰幅のいい商人風の男が出て来た。
確かに、商人に見えるが、その濁った眼はどうにかしてもらいたい。
私を舐める様に見る、その視線で、何となく考えてることが、分かる気がする。
いよいよ、面倒なことになって来たな、と思いつつ黙っていると
「何やら、面白いことになってるじゃないか。」
妙に楽しげな声がして振り返ると
「ッゲッ!!」と思わず、口から洩れた。
そこにはあの、彼女が立っていた。そして
「あぁ、又、貴方ですか。今、取り込んでいるので、後にしていただけませんかねえ?」と、やや呆れたように門番が言った。
「まぁ、然う云うな。事情はさっき、そこで聞いてたよ。」
「さて、商人殿、その首輪、ちょっと見せてもらってもいいだろうか。何、ちょっと、そこの後ろにいる、あなたのお連れさんたちが、着けているものと比べたいだけなんだ。」
見ると、気づかない間に、3人ほどの、みすぼらしい恰好をして同じ首輪を着けた人々がいた。
「そ、それはちょっと………………………………………。」途端に顔色をなくす、商人とその部下。それを見た、門番が
ぴぃいいいっと、笛吹く。
すると、たちまち、四人の門番が現れて、周りを囲んだ。
そこで商人もあきらめたか、部下ともども、おとなしく連れていかれた。
一方私は
「あぁ、この者は私の連れでな、冒険者ギルドから、迎えに来たのだ。」
と、彼女が”私を見て”言うので
「え、ぇえ、そうです。田舎から冒険者になりに来たのです。」と
観念した。
お読みいただきありがとうございました。




