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TASさんは異世界にて自由に生きたいようです。  作者: 粗茶漬け
TASさんが異世界召喚されたようです
2/53

TASさん、召喚魔法を掛けられる。

2017/1/19 改稿

TASさんの喋りを平仮名にしました


2017/1/19 文章の一部を変更しました


2017/6/13 文章の一部を改変、修正しました

 目を開けるとそこは、白い空間だった。

 ただただ、白い空間。

 気づけば私はそこにいた。


「うっし……術式停止っと……上手くいったか……?」


 ふと、呟くような声が耳に入る。

 声の高さからして、女性だろうか。それも、若い。


 私はそれを聞いて、辺りを見回すが、相変わらず目に映るのは白い空間である。

 声の主らしき人はいなかった。

 なら、さっきの声は誰だったのだろうか。


 それより、何故私は上下感覚のおかしくなりそうなほど真っ白な部屋にいるのだろうか。三半規管が悲鳴を上げている。

 そもそも記憶が曖昧だ。私は今現在に至るまで、何をしていた?

 というか、私は一体誰だ?


 自分を見てみる。

 髪色。茶髪。

 背は低い。

 性別、女。

 見たままの年齢…10歳くらいか?


 名前は…確か…


 TASさん。そう呼ばれていた、気がする。


 誰にそう呼ばれていたのかは分からない。

 だが、これだけは分かった。

 私の名前はTASさんだ。多分。

 確証はないが。


 …情報が足りなさ過ぎる。


 しばらく頭脳を回転させていると、少しづつ記憶が戻って来た。しかし、その記憶は非常に曖昧かつ、滅茶苦茶なものだった。


 ーーーある時は青い帽子をかぶり真っ赤なオールバックを身に付け鼻の下にちょび髭を生やした配管工のおっさんだったり。


 ある時は金髪で幼女だったり。


 ある時は赤褐色の髪と髭を蓄えたごつい中年だったり。


 エトセトラ(その他様々)


 これらの人物の記憶が頭の中で入り混じっている時点でおかしい。


 しかし、さらにおかしい事があった。それらの記憶の中で自分(らしき人物たち)が行なっている行動だ。


 ちょび髭のおっさんがいきなり奇声を上げながら階段に膝を擦り付け始めたかと思えば、叫びながら後ろに向かってものすごい速度で飛び出し、壁をすり抜けたり、空を飛んだり。


 金髪幼女が超高速な前転で移動し、変態的なまでに効率的な動きで、敵らしきそれをバッサバッサ薙ぎ倒していたり。


 赤褐色の髪と髭を蓄えた中年がヂュエヂュエヂュエという掛け声と共にジャンプとジャンプ蹴りを物凄い速度で繰り返し、高速で移動したり。


 エトセトラ(その他色々)


 記憶の中の自分の行動と、その存在がちぐはぐなのである。


 私は一体何なのか。

 全く分からない。


 記憶をより明確に引き出そうとうんうん唸っていると、誰かに肩を揺さぶられた。


 顔を上げ、確認する。

 真っ白な髪の若い女性がいつの間にか目の前に立っていた。


「おーい。テメー、さっきからうんうん唸ってばっかじゃねーか。人の話聞いてンのか?」


 …どうやら、記憶の模索に夢中になりすぎていたようだ。

 にしてもこの人、一体どこから現れたんだろうか。謎だ。


「すみません、きぃていませんれした」


 正直に、私はそう謝った。何だか舌が上手く回らない。


「……やっぱり聞いてなかったか。いちいち具現化までしないと気付かないとかどんだけ考え事に熱中してンだよ。はぁ……今からテメーの置かれている状況を話すから、耳ン穴かっぽじってよーくきけよ?」


 なかなか言葉遣いの荒い人だな、と私は思った。

 見た目美人なのに、台無しである。

 いや、ギャップ萌えな気もしないでもない。


 いや、ギャップ萌えが何なのかあまりよく分からないのだが。

 よくもこう意味のわからない単語がポンポンと浮かぶものだ。

 多分、ネタ的な意味合いが強い単語なんだろう。


「口が乱暴なのは性分なンだよ、しゃーねぇだろ?」


「……くちにれちゃってましたか」


「いンや。心を読んだ。じゃあ、説明すっぜ」


 …まあ、ツッコミ所は沢山あるのだが、今はスルーする。


「テメーは今、異世界の馬鹿共に召喚を掛けられている」


 ……うーん。


「あれ、ラノベとか読まないタイプか?ん?術者のヤロー、マズったのか?いや、そんなハズないよな。適正のある奴しか、あの世界には呼ばれないハズだ…つーか、こいつ、ラノベとか読むような年齢じゃねぇよな…」


「いや、じょうきょうはりかいできたんれすけど……わたし、きおくがあいまいで、自分がだれで、いったいなんなのか、まったくわからないんれすが」


「……は?」


 目の前の美人は、顎が外れそうなほど口を開けた。

 なにやら、驚いているようだ。


「んー。お前、まさか、精神体(アストラル)が傷付いちまってるのか……?いや、だとしたら此処に来れる筈がないンだよなぁ……まず弾かれる……だが……」


 残念美人はしばらく唸った後、


「うん!わからん!」

 考えることを放棄したようだ。


「まあ、ホントはラノベとか読んでて、ある程度の知識持ってる奴が呼ばれる筈なンだが……」


「とりあえずなんやかんやあって、お前は剣と魔法の異世界に、なーんの力も持たずに、丸腰で行かなきゃいけない羽目になったンだ」


「なにそのつみげー」


「あらら?今詰みゲーっつったか?どうやら知識はあるらしいな。まあそれは置いといて。今回の転移、やけに不安定でな。座標が魔物のうじゃうじゃいるヤバイ感じの森になっちまってやがる。」


「まず、しぬだろうなぁ」

 開始数分で獣の胃袋行きだ。


「ああ。だから、この地球管理局の局長女神であるアタシがテメーにある程度、異世界で生きていけるほどの力を授けてやる」


「そりゃたすかりまふね。で、どんなちからをもらえるんれすかね?」


「そりゃーアタシにもわかンねぇな。まあ、お前に適した力が与えられるだろうさ」


 与える本人にも分からないのか。

 まあ、私に適した力が与えられるのなら、それはそれでいいか。


「あと、テメーのごっちゃになってる記憶、異世界に送るついでに矯正しといてやンよ。向こうに着く頃にゃぁ、思い出せてんだろ。多分だがな。……まあ、送るっていうか、手放すってゆーか。この空間にお前がいるのも、アタシがあっちの(異世界の)召喚術式を無理やり一時停止させてるからなンだが、それも長く持たねぇ。心の準備はいいか?出来たンなら飛ばすぞ?」


「れきました」


 私は舌っ足らずな口調でそう答えた。何だか締まらないが、仕方ないだろう。


「そーか」


 女神様はそういって、パチン、と指を鳴らした。


 それと同時に、私の視界がぐにゃりと歪む。


 ———ンじゃま、頑張って生き延びろよぉ


 ファンキーな女神様の声を聞いたのを最後に、私の意識は闇に呑まれた。

TASさんの髪が金髪ではないのは仕様です。

伏線かも。

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