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1.眠れぬ夜の昔話

 俺の最近の悩みは、我が主との旅において避けては通れない、宿泊時の部屋割りだ。護衛の身としては常にお傍近く控えていたいが、一応異性であることが問題なのだ。幼少の頃はまだしも、今は14歳で微妙な年頃。そろそろ部屋を分けるべきなのかとも思っている。特に彼女と同じ歳の少年が、旅の供に加わってからは。


「なあ。ロイドって、何でライラの騎士になろうと思ったんだ?」

 俺を呼んだそいつは唐突に問い掛けてきた。子供は寝る時間だというのに、寝付けないのか、ベッドに転がったままこちらを見ている。夜も更けてきた時間なので声の大きさに注意しつつ、とりあえず答えた。

「何でと言われても。ライラ様こそ俺の主だと直感しただけだ」

「それが分かんねーの。ライラも良く知らないって言ってたし、もうちょっと詳しく教えてくれよ」

「聞いてどうするんだ……。明日も早い。さっさと寝ろ」

好奇心に輝く茶色の瞳を、瞼で隠せとばかりに右手で覆ってやった。何すんだよー、とあまり怒っていない抗議の声が聞こえたので、次は左手で口元を塞ぐ。宿の者に用意させた衝立(ついたて)の向こうでは、我が主がお休み中だというのに。この少年はいつまでも騒がしい。

「ぶはっ、口まで閉じなくてもいーじゃん。眠くならなくて退屈なんだよー……。ロイドの昔の話聞いたら寝れるかもなー」

 岩をも砕く怪力に任せて俺の手を引き剥がしたこいつは、本当に寝る気など無さそうだ。地味に痛む手首を軽く振って、再度寝ろという意味を込めて睨んでみれば、未だに向けられていたのは期待の眼差し。そこに映る俺の顔は呆れている。

「まったく、お前という奴は。――特に面白いことなど無い、退屈な昔話だぞ」

 もういい、寝かしつけるのは諦めた。俺の在り方が、我が主と別の意味で特殊な生い立ちを持つ少年の、何かの糧となるかもしれない。少しばかり過去を振り返ってみるのも良いだろう。

「もう十年前のことになる。俺は15歳で、まあ色々と小さいことで悩んでいた時期だった。ライラ様に初めてお会いした時も、確か直前に面白くない事があってな。だから――」


 突然の言葉に、戸惑った。


――あお、ちがう。なんのいろ。


 そう、今でもはっきりと覚えている。最初のきっかけは、俺の髪と目の色だった。



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