第四話 というわけで
その後、つつがなく五時間目以降の授業を終え、只今放課後を迎えている。もちろん、担任の呼び出しも入っている。
(呼び出しって私にとっていい思い出ないんだよね。やだな~)
憂鬱な気分のまま、担任の先生がいらっしゃる音楽準備室の扉を開けた。
「失礼します」
「はい、どうぞ」
中に入って私を待っていらしたのは、音楽室の天使こと担任の麻衣子ちゃんではなく、眼鏡を光らせ優雅に長い足を組んでパイプ椅子に座っていらっしゃる川村充先生であった。
(なぜ気付けなかった!)
先程の入室の許可の声が、優しい温かみのある高い声ではなく、耳に心地よい低い声であったことに気付けば、今のような状況を想定することができたはずである。このような不意打ち……きっと。
「担任の先生にお願いをして、少し時間をいただいたんです――どうしたんだ?最近のお前、少し様子がおかしいぞ。顔色も良くないみたいだし。お前のことだから、受験勉強のしすぎなんてことはないだろうし、――何があった?」
そう。きっと、優しくて鋭い先生のことだから、全部見抜いてしまうんだ。先生は大人だ。
普段は口悪いくせに、私がピンチの時は、こうしてそっと手を差し伸べてくれるんだ。
そんなのずるいじゃないか―――だって。