第四話 類を以って集まる
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川村 充。
この男とわたしの関係について説明すると色々ややこしい事情もあり大変面倒なので、簡潔に述べると。
「幼馴染?」
「そうだ。家同士の仲が良く、幼い頃から交流があった」
「ああ。明とは小さい頃からの付き合いだ。ただ、俺が高校を卒業して一人暮らしを始めてからはなかなか会えてなかったな。ここ最近は俺も忙しくて実家にも顔を出せてなかったし、明がここに入学しているなんて思ってもいなかったぜ――明、また大きくなったな」
「…ポンポンするな」
「クッ。そのツンツンした態度!かっわんねェな。そんなんだから、あいつにいっつもからかわれてたんだよ」
「五月蠅いッ」
「へぇ~、世間は狭いんだね~」
「まさか、お前が言っていた友達が明だったとはな!麻衣子」
ちなみに、わたしの友達の名前は《鈴木 麻衣子》である。
「充こそ、どうしてここにいるんだ!?充ほどの頭があったら、あの大学だって余裕で行けただろ?どうしてあいつと一緒のところに行ってないんだ?!」
「あいつ?」
「…麻衣子は気にしなくてもいい」
「俺と明の幼馴染だよ。もう一人いるんだ。もし麻衣子が俺たちと共にある星の下ならいつか出会うかもな」
「なに麻衣子にフラグを立てるようなことを言ってるんだ!いいか、麻衣子!あいつとは出会わない方がいい!無駄に綺麗な顔して無駄に優しい雰囲気出して無駄に丁寧な言葉を喋るが、中身は腹黒大魔王だ!!あいつのせいで何度死にそうな思いをさせられたか」
「でも、そのおかげで明は強くなったんだぞ」
「確かに、そっ、そう、だが……ただ、あの無駄にキラキラした微笑みにみんな騙されるんだ。もちろん、わたしも例外ではなかった…小さい頃のわたしは純粋だったからな…あの笑顔に騙されて散々な目に遭わされたのは忘れられるはずがない!そんなやつに麻衣子を会わせるなんてとんでもない…」
「あ、あの…明ちゃん、大丈夫?」
「ほっとけ。どうせすぐに立ち直る――さあ、話を元に戻そう。明はどうせ家から近いからこの大学にしたんだろ」
「うっ…」
「麻衣子、お前は?」
「わたしは、父のような高校教師になりたいと思ったんです、充先輩。この大学に通う際、一人暮らしをしないといけないからか、母には随分と反対されましたが…」
「俺も同じだ。俺は御上市の高校教師を目指そうと思ってな…」
「ハア?充は実家を継ぐんじゃないのか!?」
「へ?実家を、継ぐ?――充先輩って実はお坊ちゃまなんですか?」
「そんな大層なもんじゃないさ。まあ、それなりに何代も続いている家ってだけだからな」
「何を言ってるんだ!充の能力はあのせっ」
「おい、明。テンパるのも大概にしろ―――ここには麻衣子がいるんだぞ」
「……」
「?」
「さあ、麻衣子。今日来たってことは、正式に入るってことでいいんだな?」
「はい!もちろんです!よろしくお願いします」
「ああ、よろしく。明も、もちろん――入・る・よ・な」
「……」
「まさか、この俺が立ち上げたサークルに入らないなんてことはないよな?」
「明ちゃん!去年、充先輩が一緒に立ち上げた先輩たちが卒業しちゃって、人数不足らしいの。このままじゃ、このサークルの存続が危ないらしいの…だから、お願い!」
「あ・き・ら?」
何だろう――この拒否できない雰囲気。
頼むから威圧感をこれ以上出さないでくれ、充。
これ…最早わたしに選択の余地はない、よな。




