プロローグ
本日より新連載【世にも奇妙な猫物語】を始めます。以前書いていたものを修正・追加してこちらに移します。新しいものは明日投稿予定です。
主人公は変わりますが、「私と先生と愉快な日常」の話と関連しています。
お時間ありましたら、お付き合いの方、よろしくお願いします。
その日、わたしは出逢ってしまったのだ……。
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ここは、京都の有名な観光名所。
御本殿を通り過ぎ、山道を程よく進んでいくと、鋭い眼光をした狐の彫像が迎え入れ、参拝者の目には幾重もの鮮やかな朱色が飛び込んでくる。そこは、まるで終わりなどないかのように数多の鳥居が敷き詰められ、その様を目にしたものは、こ
の世のものとは思えぬ神秘的な雰囲気を醸し出すそれらに圧倒されるであろう。
正月には多くの人が商売繁盛のためにお参りに来る、狐を祀っている稲荷神社の総本山とも云えるべき――伏見稲荷大社。
(ここは、何度訪れても変わらずいい所だな)
歩を進めると、木々の木洩れ日が溢れ出し、辺りはだんだん静寂に包まれていく。まるで、どこぞかしこの神話の世界にでも潜り込んだかのように、心が洗われていく。
グンッと背伸びをしてみたくなるくらい、心地良い場所だ。
わたし――葛葉 明は、大学入学同時に新入生歓迎行事で仲良くなった友達に京都を案内するため、ここを訪れていた。
ただ、この友達……大人しそうなナリをしているくせに、ちょっと目を離せばフラフラ~と興味が惹かれる所へ行ってしまう癖がある。おかげで、せっっかく伏見稲荷大社に来たというのに、御本殿にお参りをしただけで、その後に案内しようと思っていた見事なここを共に訪れることができなくなってしまった。
仕方なく、友達が興味を持ちそうな辺りを虱潰しに探している。
まあ。相手は小学生の子どもじゃあるまいし、いつかは見つかると思って、のんびり伏見稲荷大社を散策中な訳である。
そんなことを徒然思っていながら歩いていると、わたしは出逢ってしまったのだ……。
キラキラ光り輝く艶。
吸い込まれそうな程の魅惑的な瞳。
思わずこちらが抱きしめたくなるような体つき。
耳に心地よく響く美声。
私は一瞬にして、その光景に目を奪われたのだ―――そう。
現実に存在するとは思えない、素晴らしい姿に。
【世にも奇妙な猫物語】




