【そして、季節はまた巡る】
以前に投稿していたものと同じものになっていたので差し替えました。全く気付かず一か月程修正しないままとなってしまって大変申し訳ありませんでした。
「桜、卒業おめでとう」
「ありがとう」
「――これで少しは手を出せる」
「……」
「さて。卒業式も終わったことだし…」
「え…――さっきの発言はスルーするんですか…」
「後は大学の合格発表を待つのみだな」
「うッ…それは、この卒業したけど本当の意味では心が晴れやかにならない微妙な時期に不安を感じる受験生に振るべき話題ではないと思うのですが…」
「ハッ」
「……は、鼻で笑われた…」
「いや、今更そんなこと言うような繊細な神経してないだろ、お前は」
「失礼なっ!そんなの、大事な大事な生徒に掛けるべき言葉じゃないでしょっ!!もし大学に落ちてたらどうするのよ!!もう一年受験勉強するなんて耐えられない!合格という二文字のために一日みっちり勉強しないといけないなんてッ――ムリムリムリムリ!!」
「…お前、それ、単に数学を勉強するのが嫌なだけだろ。それに、大学に何しに行くつもりなんだよ。大学生だって高校生と同じ学生なんだぞ」
「そ、それは分かってるけど……」
「ま。そんな顔をするな。もし、お前が不合格だったら少し早いけど、俺のところに来ればいいだろ。面倒見てやるよ」
「ま、まさか!今の発言は世の乙女たちが一度は夢に見るプッ、プロポッ」
「どもりすぎっ!言えてないしっ!」
「わっ、笑うな!だって、だって…」
「あー、はいはい―――…ま。世の中はそんな甘くないので、大学には行って勉学に励みなさい、学生さん。どうせ、お前のことだから、万が一不合格だったとしても、俺のところに逃げ込むことはないだろ。壁にぶち当たったって、逃げずに立ち向かうやつだからな、お前は」
「ず、ズルイ。そんな風に言われると、頑張りたくなるじゃない――それに、ポンポン頭をたたくなっ」
「はいはい。ホントッ、桜は面白いよな~。ま、そんな不安がることはない。桜がしっかり努力していたこと、俺は誰より近くで見守ってきたからな。きっと、大丈夫だよ」
「うん」
「取り敢えず、この話はここまでにして―――桜、この三月末の連休は予定空いてるよな」
「何故、疑問形ではないのですか…」
「どうせお前の予定なんて、家でゴロゴロか、俺の家でゴロゴロかの二択だろ」
「なっ、そ、そんなわけっ」
「――ないのか?」
「イエ、ソノトオリデゴザイマス」
「そうそう、素直が一番だぜ…―――話は逸れたが、実は地元に戻ろうと思ってな」
「地元?あ、そっか。先生は確かここの人じゃないもんね」
「先生?俺はもうお前の先生を卒業したんだぞ―――あれだけ練習したのに、もう忘れたのか?それなら、もう一度教え込まないとな…」
「いっ、イエ!結構でゴザイマス」
「それは残念」
「――もうっ。さっきの乙女たちがいつか言われたいと願っている例のアレから私で遊んでるでしょ。からかわないでください」
「いつ、俺が冗談なんて言った?」
「へっ?」
「俺は『いつかお前と』って考えてる」
「…………―――それで。どうして地元に?」
「おっ、今回は立ち直りがはやかったな――ただ、顔が真っ赤だぜ、桜」
「……」
「ちょっとやり過ぎた、悪かったって。だから、そんな風に睨むなよ―――可愛くて我慢できなくなるからな」
「―――ッッッ!」
「あはははは!桜って、ホント飽きないわ~。さ、話を戻すが。実は俺と優斗の幼馴染で麻衣子の親友がこの春に結婚式を挙げることになってな。もし良かったら桜も一緒にどうかと思って―――結婚式は身内でやるそうだが、披露宴は仕事関係の人や友人を呼ぶらしくって、当然俺も招待されているわけ。そんな堅苦しい感じにはならないだろうし…前に言ってただろ、俺の地元に行ってみたいって」
「うん。だって、一度は行ってみたいって思うでしょ。修学旅行先もそこじゃなかったし」
「土日出勤が当たり前でなかなか休みが取れないのと、職業柄、桜をどこかに連れて行ってやることができなかったからな…いい機会だと思ったんだ―――桜、どうだ?行ってみるか?」
「うん!行く!京都!!」
そうして、私と先生は春休みを利用して京都へと旅立った。
『私と先生と愉快な日常』
~番外編~
(完)
⇒NEXT
『世にも奇妙な猫物語』
最後の最後まで先生は甘かった。そして、この旅行で先生は桜ちゃんのことを親に紹介するつもりです。着々と囲い込まれています。
これにて、本当に完結です。これまでたくさんの方にご愛読いただき、ありがとうございました。もちろん、これまでの伏線は次の作品などできっちり回収していきます!これからもどうぞよろしくお願いいたします。




