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私と先生と愉快な日常  作者: 月嶋ゆう
【番外編】私と先生と愉快な日常
20/41

【調査】「川村 充」という先生について

「いやいや!〈却下!!〉なんて速攻で言わないでくださいッス、先輩っ!この前の先輩の調査のおかげで《スクープ!学園の人気者たちの秘密を暴く!!~鈴木 麻衣子先生について~》はとても好評だったんスから!是非とも今度は「川村先生」の調査をお願いしますッ」




「桜~。ここにいるか~?」

「あ!佳純先輩!!助けてください!!!」

「ハ?あんたら、何じゃれ合ってんの?」

「いやいや!この状況を見て何言ってんスか?!可愛い可愛い後輩が凶暴な先輩にシメられてんスよ!」

「そっか。桜に用事あったんだけど、また後にするわ。じゃあね」

「いやいや!見捨てないでくださいッ~、佳純先輩!って!イタッ!!さ、桜先輩!マジで爪が当たってるっス!痛い痛いっス!かっ、かずみぜんばい~」

「ああもう!分かったから騒ぐな!!五月蠅い!」


「で」

「は、はい?」

「どうしてこうなったんだ?」

「そ、それは……」

「…もう大丈夫だから、そう怯えるな。そんなに距離を取られると話しにくい。――桜も大人げないぞ。一応先輩なんだから……は?〈先輩を先輩とも思わない態度をしてたから、先輩として教育してやっただけだ!〉って、あんたもあんただよ……それで。何が原因だったんだ?」




「…なるほど。今度は川村先生の調査ねぇ~」

「そうなんスよ!我が櫻高校の人気を独占するナンバーワン教師!もっと知りたい!けどおいそれとは近づけない!!ああ、いつかその、毎度のこと補習をサボろうとして必ず痛い目に遭う三年生I先輩や、やればできるはずなのに何故か数学だけ万年赤点の三年生O先輩に向ける冷ややかな氷の微笑みの下に隠れる、ベールに覆われ隠された素顔を見たい!そんな存在なんスよッ、川村先生はッ!」

「…あんたはどこの乙女だ」

「だからこそっス!!我が新聞部が立ち上がり、生徒たちのニーズに応えるべきなんっスッッ」

「ああ、はいはい。パチパチパチパチ―――こんな拳まで高々と突き挙げられて語られたんじゃ――…詰んだわね、桜」

「〈イヤイヤ〉じゃないっスよ!桜先輩!やっぱり、ここは日頃から大っ変お世話になっている桜先輩が行くべきじゃないスか!さあ、駄々こねてないで行きますよ先輩っ」

「行ってらっしゃい~―――ま、骨は拾ってあげるわよ」



 しばらくの間、「イ~ヤ~だぁ」との叫び声が部室が並ぶ部活棟に響いたとか、何とか。





【調査報告】

 もう二度としません。




「それじゃ新聞部として失格っス。雨にもマケズ風にもマケズ嫌味や毒舌やブリザードアイにも負けなかった我々新聞部の底力を見せてやろうじゃないスか!」




【調査結果】

川村かわむら みつる

・二十七歳。

・高校教師。(教諭。)

・専科 数学。

・専科ではないが、天文学にも詳しいらしい。

・授業は大変分かりやすく、面倒見が良いので、生徒や保護者・同僚の教師陣から大人気である。

・管理職からも信頼されている。

・仕事ができるイケメン。スポーツもできる。

・他人に厳しいが、自分には人一倍厳しい。

・鈴木先生とは大学時代の先輩後輩の仲。

・進路の榎先生と仲が良いらしい。(一部からは、榎先生がまるで犬のように見えるそうだが、榎先生本人にその自覚なし。)



《注意事項》

・きちんと課題は提出し、補習には出ましょう。

・怒らせてはいけません。

・あの敬語や好青年風なのは、見た目詐欺です。決して油断してはいけません。

・半端ない情報網をもっています。よって、逃げ場はありません。

・しっかり勉学に励みましょう。大事なことなので二度言いました。




調査対象は一切登場せず……なのに、何故この存在感。



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