【調査】「鈴木 麻衣子」という先生について①
「え?麻衣子ちゃんについてどう思うか?って」
「麻衣子ちゃん、やさしいし、見てるとほのぼのするよね。私はああいう先生いいと思うよ」
「私も。前に三日ぐらい休んでた時、休み明けに〈体調はよくなったの?〉って心配してくれて、こっそりノドにいいっていう麻衣子ちゃんおススメの飴くれたの」
「授業も楽しいし、クラスのみんなも親しみを持っているよね」
「うんうん。ただ、三年生になって音楽が選択になっちゃったの残念だよね」
「そうだね。麻衣子ちゃんの綺麗な歌声を聴けなくなっちゃったもんね」
「ホント!あの歌声は凄いよね。私、あんな歌声聴いたの、はじめてだったもん!大学の時はコンクールで入賞してたらしいよ。そうそう、歌声といえば、麻衣子ちゃんには敵わないけど、葛城さんも綺麗な声してるよね」
「そういえば、葛城さんって、山城くんと付き合ってるらしいよ!」
「ええー、意外!!葛城さんっていったら、あの成績優秀な美人さんでしょ。そんな人がどうして、ガリ勉くんと?!」
「普通あり得ない組み合わせだよね。でも、葛城さん本人が認めてるんだって~。結構、ベタ惚れらしいよ。そもそも二人はね……って、あれ?あの子は?」
「そういえば…どこ行っちゃたんだろう?もういいのかな?」
「は?鈴木先生についてどう思うかだって?っていうか、あんたどうしてそんな疲れ切った顔をしてるのよ――ん?ご近所の奥様方のマシンガントークを聞いてたって?どこ行ってたのよ、あんた……ああ、鈴木先生についてね。生徒の話をしっかり聞いてくれる先生。生徒のことを隅々まで見ている先生――あの感じは、かなりの情報網を張ってるし勘も鋭いハズよ。まあ、ああいう人は、人との付き合い方がちゃんと分かってるし、人から好かれるタイプよ。滅多なことがない限り否定的な意見は出ないと思うな。もしいたら、それは、他人のものばかり羨んで自分の足元が見えてないタイプか、危ない橋を脇目も振らず走ろうとする大馬鹿ものタイプね―――鈴木先生は川村先生の次に怒らせてはいけない人物よ……て。何よ、その目―――ハッ?何が、〈佳純様こそ怒らせてはいけない危険人物、恐ろしい〉よ!――――フッ、そうそう。さっき、あの数学教師様がわ・ざ・わ・ざこの教室までやって来て、<古泉さんと尾ノ上さんはいませんか>って言ってたわよ。あんた、まだ数学の課題を出してないでしょ?あれは、ニコニコしてたけど完璧お怒りよ。目がイッちゃってたから……あ!コラ!桜、逃げるな!!」
「鈴木先生についてだって?そりゃ、一緒に仕事しやすい、いい同僚だよ。鈴木先生は一生懸命だし、生徒思いで、どんな人の意見でも素直に聞いてどんどん成長するからね。先輩教師として凄く期待している若手教師の一人だよ。プライベートでは、だって?僕はそんなに仲良くないし、普段休日はどんな過ごし方をしているかまでは知らないな。それなら、吉村先生か川村先生に聞くといいよ。特に川村先生は、大学時代の先輩らしいからね―――それより!尾ノ上さん!!もう、退学届を取りにきた時は、一瞬先生の心臓が止まるかと思ったよ!何を思い詰めていたかは分からないけど、もう大丈夫だって川村先生や鈴木先生から聞いたよ。本当に大丈夫なんだよね?もし、何かあれば何時でも言うんだよ。相談に乗るからね。あっ!そうそう。川村先生が――」
「―――こんなところにいたんですね。尾ノ上さん」
「ああ、川村先生。ちょうどいいところに!探していた尾ノ上さんがいるよってちょうど連絡しようと思っていたところなんだ。古泉くんは見付かったの?」
「…いえ。残念ながら奴は逃げ足が速かったようで……今回私にかけられた苦労は、後ほどきっちり返していただくので―――さあ、尾ノ上さん。行きましょうか?」
「ごめんね。そんな顔で見ても、僕には助けてあげられないよ――やっぱり自分の身は可愛いからね」
「その通りですね。自分は大切にしないといけませんもんね、榎先生―――尾ノ上さん、この世の終わりのような顔をしても、数学の課題は終わりませんよ。さあ、行きましょうか」
「いってらっしゃい―――川村先生。あまりにも怯えているので、どうか優しくしてあげてください」
「……肝に銘じておきましょう」
ちょっとだけ続きます。
ちなみに、桜ちゃんは新聞部です。




