第一話 徒然なるままに
初投稿作品です。
お手隙の時に少しでもお楽しみいただけたらと思います。
(なぜ、お昼を食べた後の授業は眠たくなるのだろう…)
こんなことを考えながら、必死に睡魔に負けないよう五時間目の授業を受けていた…のだが。
「おい」
パコン。
耳元に聞き慣れた心地の良い声が届いたと同時に、歯切れのいい音が教室内に響いた。
「!」
「そんなに私の授業はつまらないでしょうか、尾ノ上さん」
老若男女が思わず頬を染めてしまいそうな、我が校ナンバーワンの人気を誇る川村先生の笑顔がドアップで視界に入った。ただし、目は笑っていないが…。
(やばッ)
思わず身震いをしてしまった私は仕方がないと思う。
だって、この川村充先生様は、一見人当たりの好さそうな好青年に見えるが、その実態は魔王である。
本来は一切歯に衣をきさせぬ程はっきりとした口調のくせに、仕事とプライベートは区別するタイプらしく、仕事中はあくまで教師としての丁寧な言動を心がけている。
ただし、害をなす者には、それはそれは冷酷に切り捨て、相手に一切の反撃を許さない程の深手を負わせる。
あの時の恐怖は思い出したくもない。
一方で非常に面倒見が良い。授業に対して集中してなかったり課題を期限内にこなしてこなかったりすれば厳しく指導されるが、授業は大変分かりやすく、生徒一人一人の実態をしっかり把握しており、進路に限らず何か相談事があれば、どんな時でも手を止めて時間を割く。
このように教師として尊敬に値する存在であり教師という仕事に対してとても誠実なので、生徒からの人気は外見だけでなく中身も影響しているだろう。
男女ともに生徒・保護者・同僚の教師に信頼され親しみをもたれている。そして、一度身内認定した者に対してはとことん甘い。