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「ただいまー!母さん、ごちそう作ってくれ!」
「ったく、春陽ってどんだけ食い意地はってるの?」
「うるせぇ!母さんのごちそうはすんげーうめぇんだ!」
「なっ!そんなこと私が一番知ってるもん!お母さん!私に一番おいしいごちそう作って!」
「茜音も食い意地はってるよ・・・ったく」
帰宅して一番にどちらがごちそうを食べるかで競い合っている春陽と茜音にあきれつつ、海翔は今日の入学祝のごちそうを期待した。
「お母さん・・・・か」
当たり前のように言ってきた言葉。
五華に選ばれたころ―――物心つく前から親元を離れ、この家で育ってきた。
当たり前のように「母さん」「ママ」「父さん」「パパ」などと呼び、本物の息子のように接してくれる。
それが普通。
しかし、この頃海翔は本当の母と父を考えるようになった。
「僕が五華に選ばれたとき、本当のかあさんと父さんはどう思ったんだろ・・・」
あれから身内から隔離されているとでもいえる状況だ。
「・・・・・・会えないのかな。でも、将来会っているとしたら、僕は失恋してるんだろうな」
親の元に帰る。
すなわち、妖華姫に選ばれずこの家にいる意味もなくなり追い出されるということ。
「でも、やっぱりこっちの母さんたちに会えなくなる方がつらいな・・・」
本物の親と、育ての親。
同じようで違うこの感覚に少し悩まされつつも、海翔は前を見ることにした。
「なんで今更こんなこと思うのかな」
自嘲すると、海翔は台所で母親にごちそうを作れとせがんでいる茜音を春陽のもとに歩み寄った。
「ほら、そんなに母さんを困らせないの。みんなに作ってくれるって言ってるでしょ?」
「そうよ。ほら、海翔の言う通りよ。みんなに作ってあげるから心配しないで?危ないからあっち行ってなさい」
「はぁーい!」
「オッケー!」
素直にあっちに行く二人になんでこんなにも母さんに素直なのか。と少しあきれつつも、海翔は育ての親の母親に向き直る。
「ごめんね、母さん。きっとあの二人親離れできそうにないよ」
「いいのよ。みんな大切な子どもたちだもの」
「うん、僕らは母さんの、子供だよ・・・」
「海翔?」
「あ、ううん。なんでもないよ」
笑ってごまかすと海翔は足早に自分の部屋に戻った。
リビングを見ると、食事用の大きなテーブルの自分席にちゃんと座っている春陽と茜音が見えた。
静かに扉を閉じると、海翔はベッドにそのまま身を預けた。
「何言ってんの僕・・・」
自分でも言ってる意味が分からなかった。
「僕らは母さんの子供・・・か」
今までもそうだったのになんで気にするようになったのか。
別れが近づいているから?
思春期だから?
どれも違う気がしてならない。
もっと、しっくりくる理由があるはず・・・・・。
「なんなの、この気持ち。意味わかんない・・・」
ぐるぐる回る頭の中。
気持ちの整理もつかない。頭も考えに追いつかない。
この気持ちを見て見ぬふりしたい。
「反抗期の予兆だったらどうしよ」
ふざけ半分でそういうと海翔はそのまま深い眠りについた――――――――。