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妖華姫  作者: 莉那
2/7

~第一章~

「行ってきます!」

元気に家を飛び出した私、美朝(みあさ)茜音(あかね)は、学校へと向かうために駆けだした。

「うわっそれひどくない!?」

いきなり後ろから声をかけられたので、驚いて後ろを振り向くと、女の子――――――いや、これでも一応男の子は私の後ろを走って追いかけてきた。

「ごめんごめん。気づかなかった」

てへっと謝る私に一瞬彼は息を詰まらせた。―――ように見えた。そして顔が赤くなったように見えた。

だけど、それらは幻覚ということにした。

硬直時間から戻った彼は早口に私を説教し始めた

「まったく、一人で外に出たら狙われるからダメって言ったの覚えてる?これ何回目?ねぇ、聞いてる?」

「聞いてるよぉー!」

毎回朝になればこのお説教。

私がほかの女の子と違って狙われやすい体質とかいうのは知っている。私がほかの姫より特別な存在だって知っている。

だから命を脅かされているのを知っている。

だけど、だけどだけどぉ!

「ふつうの女の子みたいになりたいよぉ――――」

生まれつき避けられないことだった。

周りにはそれを羨ましがられるけど、私はそれを恨んだことがある。

「ったく、茜音は妖華姫なんだから、そこんところ自覚してよね!」

妖華姫(ようかひめ)・・・・・千年に一度しか生まれないとされる世界中の妖姫(ようひめ)の中でもっとも上とされる姫。

妖姫は(あやかし)と人間の女性との間に生まれる女子のこと。

妖とは、「鬼」、「吸血鬼」、「魔族」にわけられる三つの種族をまとめた言い方でもあり、通称でもある。


それともう一つ、「五華(いつか)」というのがある。

五華は妖華姫が生まれると五華候補が同時に生まれ、その中から選ばれた五人と一緒に時を過ごしながら妖華姫を守る役を与えられた守護者。五華は五人のメンバーで結成されるのが普通だそうだ。

そして、妖華姫が16歳になると五華の中の一人が妖華姫の結婚相手となり、永久に二人で暮らすこととなる。

誰も知らないところに、二人きりで―――――――――。


「妖華姫なんて嫌だぁ…」

うなだれる私に苦笑した彼――――――「五華」の中の一人、妖の中では「吸血鬼」に分類される、坂原 (さかはら)海翔(かいと)は、「ほら、行くよ」と私を促すと私の手を引いて歩き出した。

「手なんかつながなくたって歩けるもん!」

少々幼稚園児じみた台詞を言って、手を強引に離した。

海翔は、「そっかぁ。もう中学生だもんねぇ…」

と、しみじみ語った。

生まれた時から一緒にいたと言ってもおかしくない私たち六人(他の五華を含める)は、兄弟・・・いや、六子同然に育ってきた。

そっから結婚相手を一人探せなんて不可能に等しかった。

今までの10数年間は私たちにとってかけがえのないものだからこそ、皆成長していくのはうれしく、同時に昔は懐かしいものとなった。


「そうそう!だからもう一人で外に出てもいいよね!」

と、言ったが黒い笑みによって私の威勢はそがれた。

「うぅ~・・・海翔のケチぃ~」

一人で呻くと海翔に「遅刻するよ」と満面の笑みで言われてまたもやかける言葉を消された。

腹黒な部分があるのは知ってたけど、なぜかいつまでたっても慣れない。

それは、やっぱりいつしかは結婚相手になるかもしれないという考えからかもしれない。

だけど、今は今。未来は未来。私は今を生きるって考えながら生きてきた。だから、未来のことを想像しないぞ!と、心の中で誓いながら、大きく一歩を踏み出した。



茜音の親の性は東郷(とうごう)だった。が、古くからのしきたりで、妖華姫は親の性を受け継いではならないとなっていた。

ということで、茜音の母親と父親は二人で考えた。

茜音が生まれたのは、朝だった。

しかし、夕焼けを思わせるほどの茜色をした薔薇はかわいい音を立てながら生まれてきた少女の首筋にもあった。

このことから、名付けた名前は美朝茜音。

朝、美しくも狂ったように咲き乱れる茜色をした薔薇に囲まれ、かわいい音と共に生まれてきたから。という由来らしい。

彼女の両親はこれに満足し、今でも大切に茜音を育てている。


茜音はこの二人の祝福を受けながら、今まで五人とともに歩んできた。

たとえ、それがいつか自分のせいで終わるものだとしても、今を生き続けようとした。

そんな、彼女の物語はこれから、あの夜狂ったように咲いていた薔薇のように、咲き乱れていくことになる―――――――・・・。

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