13.化け物が遊ぶ夜に
人?いや違う……。
恐怖よりも条件反射から銃剣を突き出す。
「はわ…」
吐き出せた言葉に覇気はなく、誰何さえせず、闇雲に銃剣を突き出す。
化け物はそれをヌラリと下にかわして、古谷に組み付いてきた。
古谷は組み付かれる前に何とか小銃を相手にブン投げる事に成功する。それは当たりはしたが、たいしたダメージを与えなかったようで、怯ませる事も出来なかった。そして古谷は、化け物に押し倒された。そして、古谷は万歳をするように押さえられた自分の腕を見やる。次にそれを押さえる相手の腕を見る。そこでありえない物を見る。
相手の右肩を月光が舐めた瞬間に、古谷の目はとらえた、親近感すら湧く三本線が入った階級章を。
「味方?!」
古谷は混乱した。だが古谷には驚く暇はなかった。完璧に相手に馬乗りされていた。地面に縫いつけられたも同然だった。相手の頭が古谷の方にゆっくり下りてくる。
月を背にした逆光で顔は分からない。なのに目は爛々と輝き獣のそれを連想させた。その瞳は夜空よりも黒く、目があるはずの所には何も無い空間がポツリと空いているようにしか見えない。
相手がゴクリと生唾を飲み込む音にその喉仏もあわせて動いた。
相手の生暖かい呼気が歯の間から自分にかかる。はっきりと臭いを感じ取れる。
生臭い。
酷く生臭い。その生臭い口が自分の首もとに向かって下りてくる。白く尖った犬歯がよく見えた。自分は恐怖から体を闇雲に動かす。ビクともしなかった。
「やめろ…」
口からは弱々しい言葉しか出てこない。相手が顔を横にして噛み付く準備を整えてくる。息が喉仏にかかる。
死ぬにしても、噛みつかれて死にたくない。せめて苦しまずに死にたいな…。
「やめてくれ……」
いつの間にか、抵抗しなければならないのに何も出来なくなっていた。僕は諦めていた。
じいちゃん、俺死ぬわ。
完全に諦めて、相手の頭越しに満月を見やる。それらと目が合った。
それは目の前のソレよりも化け物だった。
何人もの人が宙に漂っている。その表情は虚ろで眼窩と口は黒く穴が空いていた。その一団の下の木々にそいつがいた。
遅くなってしまい、大変申し訳ありません。これからも稚拙な文章でありますが、読んで頂ければ幸いです。