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星撃ちの魔術師  作者: 星宮 しずく
1章 陽気な春
9/17

8.判決


前回のあらすじ

少女はお話を聞きました

「貴方ですよね。倉庫を木っ端微塵にしたのは」

疑問形でもない。断定的。

それなのに白々しい位に輝かしい笑顔。

男に恐怖を与えるには十分すぎた。

「その片手の筒。なんですか?…あぁ、すみません。卒論ですよね。貴方とは無関係の年の」

セレナが指を指したのは男の持っている筒。

筒には168期生。

「お見受けした所、貴方。三十路手前ですよね」

「…はぁ。お前何言って」

「そちらのネクタイ。十一年前のこの学校の卒業生に贈られたものと記憶しております」

セレナの視線は男のネクタイにあった。

紺色で何処にでも売っていそうなネクタイだが、右下に学校の校章が着いている。

「ある程度の周期はありますが、使い回しをこの学園はしません。ネクタイが卒業生に贈られた年。最近だと十一年前の卒業生162期生。その前だと96年前の77期生ですね。しかし、77期生には紺色ではなく、青色の物が贈られています」

セレナは一年前の入学式の日。式に出たく無さすぎて図書室にこもり本を読んでいた。

そこで見ていたのは歴代の学園の卒業生に送た品物が示されていたもの。

ここで使えるなんてセレナ自身、思ってすらいなかった。

「それに、これ。貴方の落し物でしょう」

男の前に投げられたのは科学準備室にあった油の容器。それも空っぽの。

「倉庫の、いえ、倉庫だったものの前に落ちていましたよ。地下に入るのには邪魔ですからね。置いていって当然です」

セレナは和かに続ける。

「貴方は卒論を何らかの理由で盗もうとした。腐っててもこの学園の卒業生。警備員を、掻い潜るなんて面倒な事はしなくて良かった」

淡々と告げる。

「ですが、いくら卒業生でも倉庫の地下を教えて貰うことは不可能だった」

その場面を見ていたかのように。

「なので貴方は倉庫に侵入。地下通路。見つけたのですよね」

その場面に居合わせたかのように。

「その後、倉庫を爆発させた。案の定、警備は倉庫の地下では無く倉庫自体に移った。これで、安心して貴方は卒論の物色ができた。良かったですね?」

全てを見ていたかのように。

「お伺いしたいことがあります。先輩として、もちろん答えてくれますよね?」

断罪人を捌くかのように。

「貴方は自分の後輩の卒論を使い、何をしようとしているのですか」

セレナには男は写っていない。

ただの無機物としてそれを見ていた。

「…うるさい!お前には関係ないだろ!」

怒りで興奮しているのか、男は二人の前に魔法陣を召喚させた。

セレナは男から離れる。

(中級魔術師の中でも下の方、って所かな)

警戒する事に越したことはない。

簡単な結界なら無詠唱でも張れる。

セレナはルナの周りを結界で覆った。

「我に宿りし炎よ、今、敵を炙れ!」

男が詠唱したのは攻撃術の炎魔術。火球がセレナ目掛けて飛んでくる。

「セレナ!」

ルナは魔法陣を創ろうとした。が、創り出せない。

魔力は一切消費していない。

創れないなら。と、セレナの所に行こうとするも何かにぶつかる。

どうして。

ルナは何が起こっているのか理解できなかった。

倉庫付近で、男とセレナは鬼ごっこ状態だ。

火球の球を作り上げ、セレナにぶつけようとする。

それをセレナは避ける。

これの繰り返しだ。

「逃げているだけじゃ、埒があかないぞ!死ぬ気で来いよ!」

(さすが、中級魔術師。魔力はまだ有りそう。ただ、単調な方法。もう少し頭を捻った方が絶対いいのに)

誰にも知られずに少々罵倒するセレナは性格は悪いのかもしれない。

その間にも男は攻撃を続けてくる。

ここまで来ると教師が気づかないのも不思議になって来る。

「さっさと降参しろ!俺の方が強いのは丸わかりだろ!」

火球が、スピードを上げてきた。

多分、これからもスピードを上げ、数を増やして本気でセレナを潰しに掛かるだろう。

(…嫌だなぁ。でも、学園壊されると面倒。仕方ない)

セレナは逃げ回っていた足を止める。

男は、チャンスだと思ったのか、真っ直ぐと進む火球は数を増やし、スピードを上げていく。

これで、セレナを仕留める気なのだろう。

火球は、セレナの目の前まで来ていた。今から防ぐのは不可能。

男もルナもそう思っていた。


火球はセレナの真横を通り過ぎた。

男が軌道を変えたのか。否。そのような繊細な技術は使えない。

ルナが軌道を変えたのか。それも否。結界の中にいるルナは魔術を発動させられない。

となると、ただ一人だけ。


二人の視線は一人に集まっていた。

制服の襟元には学年とクラスのピンバッチが付いてある。

無能の三組。落ちこぼれの三組。

三組は昔からそう言われていた。

そんな組に所属している少女、セレナを二人は見ていた。

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