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星撃ちの魔術師  作者: 星宮 しずく
1章 陽気な春
8/16

7.戸惑い


前回のあらすじ

少女はちょっと踏み込みすぎました。

「本当に行くのですか?」

「はい、行きます。ルナ様には危険なのでお屋敷に戻られた方が…」

「嫌ですわ」

そんな口論と言っていいのか怪しい事をしながら二人はトコトコと校庭を歩いている。

教師と警備員は今後の方針を校長先生に聞きに行ったらしい。

準備室の前を通った教師がたまたま言っているのを聞いたから間違い無い。

段々と見えてきたのは崩れた瓦礫。

「まぁ、派手に燃えましたわね」

「…こんなに燃えたんだ」

それぞれが感想を言いながら目的地には着いた。倉庫は全焼。

柱であった物が黒くなっている。所々に紙の欠片が落ちている。

セレナはそれを拾い上げた。

「第16…?」

「それは第16期生。それか160期生から169期生の卒論ではないかしら?」

そんなに歴史あったんだ。この学園。

素直にそんな感想が浮かんだ。自分は思っていたよりも学園を知らないのかも知れない。

「ルナ様。ここに地下があるのは本当ですか?」

卒論の欠片を元に戻しつつ問いかける。

ルナは真面目な顔をして答えてくれる。

「えぇ、本当ですわ。卒論の中でも素晴らしい物を書いた方は倉庫の地下に保管されている。とお兄様が昔言っておりましたので」

「この燃えた場所から地下への通路を探さないとなの…」

「そのようですね」

二人は揃ってため息を着いた。

自由にできる時間は後数十分位と見立てて来たが、本当に見つけられるのか。

最悪、ここで待つと言うのも有りだ。

その方がルナを危険に晒さずに済む。

だが、相手がどんな魔術を使えるのか分からないと言うが恐ろしい。

攻撃術は使えるだろう。きっと倉庫が燃えた原因は攻撃術の中の炎魔術だから。

結界術と強化術なら、どうとでも出来る。

結界なら詠唱せずに壊せる。

体力強化、攻撃強化。それくらいなら逃げ回っていれば勝手に自滅する。

セレナにはその確信がある。

ただ、問題は相手が精神感応術か魂術を使ってくる場合だ。

上手く使う人は多くは無いが、いないとも言えない。

何よりこの2つは見えないものを操る。

セレナ一人なら対処出来るが、誰かを庇いながらは難しい。

何より、あまり魔術を人前では使いたく無い。

どうか、簡単に対処出来る相手でありますように。

届くのか分からない願いを心に止めておく。

「どうしましょう?用務室からスコップ持ってきますか?」

「いえ、ここで待ちましょう。いつまでも地下にこもる人間はいませんから」

…よっぽど研究者気質な人で無ければ。

そんな事は口には出さない。ルナは知らなくていい事だ。

「では、ここに座りませんか?立つよりも体力は使いませんもの」

ルナが指を指していたのはコンクリートでできた倉庫の基礎だった。


✿✿✿


太陽は少し西に傾いていても辺りを照らし続けている。

セレナはルナと倉庫の基礎に座っていた。

「…私、学園が好きでは無いのです」

「ふぇ?」

随分と間抜けな声がセレナから漏れた。

そんなセレナにルナはくすくす笑っている。

そのまま視線を落とし、続けた。

「家の都合でほぼ強制的に入ったのです。友人と言える方もいません。皆さんは我が家を良く思っておりません。それに、私に近づいてくお方は大体、財力目当てか父上とお兄様に付け込もうとする方達ですから」

セレナは何も言わない。

何を言えばいいのか分からない。が正しいだろうか。

友人なんて一度もいた事ない。

そもそも、自ら誰かと関わることを選ばない。

それがセレナの生き方だった。

「…突然こんな話してごめんなさい。でも、何か言って欲しい訳では無いの」

ルナは下を向いたまま。その目には一体何を写しているのだろうか。

「シャーレイが言っていたこと、本当なの。我が家は成り上がり貴族」

自分で成り上がりと言うその表情はどんなものなのだろう。

「それに、私は全然貴族らしい振る舞い方が出来ないもの。気を抜けば直ぐに昔のような言葉遣いになってしまうもの。立ち振る舞いもまだまだ」

言葉を紡ぐ声は震えてきている。

「…だからね。私はいつまでも未熟なの」

顔を上げ、彼女はこちらを見た。

表情こそ、笑顔だが無理に作っている。少なくともセレナにはそう見えてしまった。

「えへへ、ごめんね。こんな暗い話しちゃって。辛気臭いよね」

セレナは人の感情を読む事に長けている。

完璧とまではいかないが、ある程度読める。

その為、なんとなくだが、相手が欲しい言葉が予想できる。

(多分、大丈夫だよ。平気だよ。気にしなくていいよ。この辺りが無難で当たり障りの無い答えになる)

ただ、何時もならサラッと言える言葉が喉につっかえた。

何故かはセレナにも分からない。

何も言わないセレナにルナは微笑み掛けて元のルナに戻った。

貴族のルナに。

少しの間沈黙が流れた。なんとも言えない時間。

ガチャ。ドサッ。

そんな時間を潰すかのようなタイミングで音が足元から聞こえた。

セレナは立ち上がり音源よりも少しだけ離れたところに待機する。

ルナも立ち上がった。

「…ルナ様はちょっとだけ離れていてください」

下手したら巻き込むかもしれない。それだけは避けたかったからだ。

ルナは戸惑っていたが、頷いてくれた。

少しした後、ちょうどセレナの目の前の土が盛り上がった。

そこからモグラの様に出てきたのは男性。

制服は来ておらず私服。

片手には筒状にした何かを持っている。

セレナは息をゆっくり吸い込む。まずはこれが先だ。

「─こんにちは、名も知らない先輩。随分と遅かったですね」

セレナはなるべく和かに笑いかける。昨日会った同僚の様に。


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