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星撃ちの魔術師  作者: 星宮 しずく
1章 陽気な春
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4.ほぼ檻


前回のあらすじ

少女は考えていた。

この学園は二つの校舎がある。

一つは本校舎。一般教養を主に受ける者がいる校舎。

二つは旧校舎。魔術教養を主に受ける者がいる校舎。

セレナが向かっているのは旧校舎だ。

「旧」とは着いているがここの校舎を使う事になってから新たに立て替えられたばかりで本校舎と同じくらい、それ以上に綺麗な校舎となった。

下駄箱につき、靴を脱ぐ。

「あっれー。三組の人じゃないですかぁ」

廊下に響いたのは甲高い女性の声。

セレナは振り向く。

えぇと、この人誰だっけ。派手な格好。ピアスが空いている。女の人にしては珍しい。

思うことはあるけれど名前は思い出せない。

きっと、関係ない人なんだろうなと思い、無視をする。

その時、フワッと制服がはためいた。

攻撃術の中の風魔術が使われたのだ。

セレナを吹き飛ばす為の風魔術。

「どう?わたくしの魔術は。底辺で無能な三組とは大違いでしょ?」

オッホッホッホ。と何処かの悪役令嬢の様に高笑いをしている。

確かに、セレナが無能で出来損ないだったら飛ばされていた。

(…めんどうくさいな)

そう思いながらも、自分に魔術をかけた。

重力増加。

強化魔術の一種で文字通り、重力を増加させる。

すごく軽く掛けているだけの為、校舎が潰れることもセレナが床にへたり込む事も無い。

足枷が付けられた程度のものだ。

これなら、風で飛ばされて何処かに落っこちることも無い。

数十秒後。風魔術は消えた。

それと同時にセレナは魔術を解除する。

「…耐えたのね。ただのおこぼれの癖に」

セレナが飛んでいかなかったのが不満なのか表情と言葉には怒りが籠っている。

普通の人なら謝罪するであろう声色、態度。

もしかしたら、ひれ伏せているかもしれない。

残念ながら、前日にこの女子生徒よりも何十倍も恐ろしい圧力を掛けられているのでセレナには何とも効かない。

そんなセレナに嫌気がさしたのか、女子生徒は廊下を歩いて行った。


ガラガラ。と教室を開ける。

相変わらずの静けさと張り詰め方だ。一種の宗教にも感じてしまう。

セレナは自身の席、窓側の後ろから2番目の席に座る。

今日も天気は晴れ。暖かい太陽が街中を照らしている。

窓の外を見てから、鞄に手を付け始めた。

「……!なっ、」

思わずびっくりしてしまい、変な声が出てしまった。

クラスの視線が一気に集まる。

それに耐え切れなかったセレナは鞄を持ち教室から逃走した。


人通りが少ない廊下。

セレナは息を切らしていた。

廊下を全速力で早歩きして来たのだ。

走って怒られる事はしたくない。

息を整えて背中を壁に預ける。

さっきのは見間違い。うん。そう。絶対にそう。

自分に暗示をかけてセレナはもう一度鞄を開けた。

教科書、ノート、筆入れ、コッペパン、ユリ。

セレナは鞄を閉めた。

…見間違いじゃなかった。

その事実を目から背けたい衝動に駆られたが、それは不可能となる。

鞄からモゾモゾと何かが動き、出てきた。

コバルトブルーの羽を持つ、使い魔ユリだ。

ユリはセレナの前に出てきた。

「よ、主。来たぞ」

「来たぞ。じゃない!」

ユリは随分呑気そうだ。珍しそうに辺りを見渡している。

「目立ったらどうするの!」

「いいじゃないか。主強いんだし」

「嫌なの!」

セレナはズルズルと座り込む。

半泣きの状態だ。そんな自分の主にユリは近づく。

「主はそんなに目立ちたくないのか?」

「そうだよ。わたしはこの学園生活を無難に終わらせたいの」

即答で返ってきたのは、セレナの生活を見ていたらよく理解できるものだった。

目立ちたくない。

その一心で行動するのがセレナと言う人間だった。

ユリはムムムと考えた。

主が目立たず、自分が自由に散策出来るようにするには…。

「主。この学園壊そうぜ!そうすればユリは探索がてら学園を壊す事が出来るし、主は学園に通わなくてすむ!コレが人間界で言う『うぃんうぃん』な関係だろ」

「win-winの欠けらも無いでしょ…。学園は壊さないで。壊したら目立つ」

セレナからの注意により、ユリの作戦は崩れた。

「せっかく来たのに探索出来ないじゃないか…」

ユリの落ち込み様に何故か申し訳なく思ってくる。

「…そんなに見たいの?」

「見たいぞ!主は引きこもってばっかりだし、中々外の建物に入る機会は無いからな。今のうちに色々な場所を見たいんだ!」

キラキラ輝かせて言うユリがセレナには眩しく見えた。

ユリはどうも建物に興味があるようだ。

ただ、自分のせいで中々外の建物に入れないのは紛れもないのも事実であった。

ユリの主としては、色々見せてあげたいな、とは思う。

家からは必要最低限しか出たくないのだけれど。

そう考えると学園は良いものかも知れない。

セレナが外にいる。その間、ユリがお留守番と言うのも可哀想だなとは思っていたのだ。

うん、ちょうどいい機会だ。

そう考えたセレナは窓の前でしょげているユリに話しかける。

「…見つからないなら、いいよ。学園見てきな」

その言葉にユリは飛び回った。

「いいのか⁉︎まっかせろ!このユリ様はそんなヘマしないからな!」

世間ではそれをフラグと言うのだよ、と言うセレナの声はユリには聞こえていないようだ。

ルンルンとユリは飛んで行った。

(…ユリにとっては夢見たいな場所なんだな。わたしにとっては自由の効かない場所だけど…)

セレナは立ち上がり、スカートについたホコリを払う。

床に落ちた鞄を拾い上げる。

ちょうどチャイムが鳴った。

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